2020年10月18日

キャサリン・マンスフィールド
『見知らぬ者』

(新潮文庫『マンスフィールド短編集』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

メロディアス・ライブラリーがスタートした2007年に取り上げたキャサリン・マンスフィールドの「園遊会」。偶然ある男の死体に対面した少女が、人間の美しさを感じ大人になる。その瞬間をとらえた、他にはない短編小説です。今回選んだ「見知らぬ者」は、その同じ「マンスフィールド短編集」に収められた一編。1921年1月、32歳の時の作品です。物語の舞台は、ある桟橋。船を見守る一団の中にハモンド氏がいました。彼が待っていたのは、結婚した長女を訪ねて10ヶ月間ヨーロッパに行っていた妻。しかし船から降りてきた彼女とはどこか噛み合わず、そして衝撃的なことを聞くのです。妻が乗っていた船の中である男性が亡くなり、しかも彼女の腕の中で息を引き取ったというのです。

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