2021年2月7日

トルーマン・カポーティ
『冷血』第一週
(新潮文庫)

カンザス州のホルカムで暮らす農場主のクラッター氏とその家族たち。ひとりひとりの人物像と暮らしぶりを丁寧に描きながら、そこに忍び寄る不穏な空気も感じさせる書き出し。そしてクラッター家の様子と交互に登場するのがディックとペリーというふたりの若者です。「生きた彼らを最後に見たもの」という第一章のタイトルが表すように、何者かに殺されるクラッター家の人々。第二章ではその殺人事件の捜査の様子とともに、ディックとベリーの人物像もさらに深く掘り下げていきます。登場人物ひとりひとりを丁寧に描くことで、それぞれの葛藤もみえてくる。そしてその葛藤が交叉することが、作品の深さにもつながっています。

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