2021年5月23日

大庭みな子
『三匹の蟹』
(P+D BOOKS)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1968年、大庭みな子さんが37歳の時に発表したデビュー作「三匹の蟹」。群像新人文学賞と芥川賞を受賞した小説です。この時の芥川賞選考委員は川端康成や三島由紀夫、井上靖といったメンバー。「才能がある」と川端康成を納得させた「三匹の蟹」の魅力はどんな部分にあるのでしょうか?主人公の由梨は、夫と娘とともに海外で暮らしています。ある日、家でブリッジ・パーティが開かれることになりますが、訪問客を残してたったひとり車を走らせ遊園地へ向かう由梨。そこで出会った見ず知らずの男とひととき過ごしてしまいます。その場所が小説の題名になっている「三匹の蟹」という宿だったのです。

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