2021年5月23日

大庭みな子
『三匹の蟹』
(P+D BOOKS)

ヴェトナム戦争の影が残るアメリカ。ブリッジ・パーティで集まる人たちは、夫婦を超えて様々な男女関係を持っていることがわかります。会話も存在も空虚で、また主人公の由梨の心もどこか虚ろです。「何も書いていないのに小説が成立している。そこが凄い」と小川洋子さん。書かなければいけないことを書かず、書かなくてもいいことが書いてある小説だということです。ちなみに当時大庭みな子さんは、ご主人の赴任先アラスカでこの作品を書かれたそうですが、その時ご主人に娘さんを預けてシアトルの大学の夏季セミナーに参加されたとか。そのことがモチーフになっているということは、実話にも近い作品?なのかもしれません。

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