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村上RADIO~The Beatle Night~

村上RADIO~The Beatle Night~

こんばんは、村上春樹です。今夜はビートルズの初期ヒットソングのカバー特集です。The Beatle Night――どうして初期だけかっていうと、あまりにもヒットソングの数が多いからですね。だから今回は範囲をぐっと絞って、アルバム「ラバー・ソウル」以前に発表されたものだけに限りました。でも素敵な曲ばかりですよ。
ビートルズは、「ラバー・ソウル」以降の曲がだいたい高く評価されているし、まあそれはそのとおりなんです。「ラバー・ソウル」以降のビートルズの曲は、歌詞の内容も深くなっているし、コード進行も洗練されています。でも初期のビートルズの音楽には、“大きく息を吸い込んで吐いたら、それがそのまま素敵な音楽になっていた”みたいなナチュラルな感覚があります。今夜はドラッグ・カルチャーに足を踏み入れる以前のビートルズがつくった、若々しくオリジナルな音楽を、ひと味違うカバーで楽しんでください。
Madison Time
Donald Fagen with Jeff Young & the Youngesters
The New York Rock And Soul Revue ‎– Live At The Beacon
Giant Records 1991
Tu Perds Ton Temps (Please Please Me)
Petula Clark
Plaza De Toros
MAGIC 1963
ペトゥラ・クラークがフランス語で歌う「プリーズ・プリーズ・ミー」。フランス語の題は“Tu Perds Ton Temps(チュ・ペル・トントン)”。この「チュ・ペル・トントン」という繰り返しは気持ちよく耳に残って、僕は個人的にわりと好きです。
なんでまたフランス語で、と思われるかもしれませんが、ペトゥラ・クラークはカナダ人だから、フランス語でカバーしても、とくに不思議はないんです。“Tu Perds Ton Temps”は英語でいえば“You are wasting your time”、「それは時間の無駄よ」ということです。初期のビートルズの曲は、みんな勝手な歌詞をつけて、適当に歌っていたんです。あとになると管理が厳しくなりますけど。
僕が同時代的に初めて聴いたビートルズの曲は、実はこの「プリーズ・プリーズ・ミー」なんです。僕はこのとき14歳くらいだったんだけど、たしか米軍放送のFEN(Far East Network)で聴いて、「これはすごい」と一発で思いました。何がどうすごかったか?それはよくわかりません。

そのときもよくわからなかったし、今でもまだよくわからない。ただ「この音楽の響きはこれまでにはなかったものだ」ということだけはきっぱりと確信できました。それが僕のビートルズの音楽に対する第一印象でした。「これから新しい世界が始まるんだ」みたいな、わくわくした気分がありました。それは、ビーチボーイズの「サーフィンUSA」を初めて聴いたときにも感じたことです。実際に時代が大きく動いていたんでしょうね。
I Saw Her Standing There
Little Richard
Come Together (Black America Sings Lennon & McCartney)
Ace 2011
リトル・リチャードが歌う「I Saw Her Standing There」。へえ、リトル・リチャードがこんな曲を歌うんだ、と意外に思うんだけど、しっかりシャウトして、ソウルしています。
ジョン・レノンはリトル・リチャードの音楽が大好きで、初期のビートルズは彼の曲をいくつかカバーしています。「カンザス・シティー」とか「ロング・トール・サリー」とか。だからリトル・リチャードがビートルズの曲を逆にカバーし返してくれたことは、彼らにとってはすごく嬉しかったと思います。「え、あのリトル・リチャードが僕らの曲をカバーしてくれるわけ?」みたいな感じで。
ジョン・レノンが少年時代、学校の帰りに友だちの家に寄って、初めて「ロング・トール・サリー」を聴いたとき、あまりの衝撃に声も出なかったということです。そういうのが彼の音楽の原体験になっています。この「I Saw Her Standing There」をつくったのは、ジョンではなくポールですが、ベースのリフ部分はチャック・ベリーのある曲からそのままパクったんだと、あとになってポールは告白しています。
いいんです。みんなパクるんです、多かれ少なかれ、最初は。
そういえば、ビーチボーイズだって、チャック・ベリーからけっこうパクってますよね。
Do You Want To Know A Secret
Mary Wells
Let It Be (Black America Sings Lennon, McCartney And Harrison)
Ace 2016
黒人シンガー、メアリー・ウェルズの歌ったビートルズ・ナンバー、“Do You Want to Know a Secret?”、「秘密を知りたいかい」です。この曲を書いたのはジョン・レノンだけど、歌っているのはジョージ・ハリスン。ジョージがレコーディングでソロ・ボーカルをとった最初の曲として有名です。 ジョージはスタジオで急に「おまえ、これ歌えよ」とジョンに言われて、どうやって歌えばいいのかわからなくて、すごく戸惑ったそうです。それまでほとんどソロをとらせてもらえなかったから、「そんなこと、急に言われてもなあ」みたいな感じだったんでしょうね。ジョンとポールは、歌うのは自分たち二人だけで十分だと思っていたんだけど、ジョージにもリンゴにもそれぞれファンがついてきたので、「あいつら歌は下手だけど、まあ少しくらい歌わせてやろうか。簡単な曲だし」と。この曲は、LP「プリーズ・プリーズ・ミー」に収められただけで、シングルカットはされませんでした。でも「ビリー・J・クレイマー & ザ・ダコタス」がカバーして、そのシングルは英国ヒットチャートの二位まで上がりました。ジョージ、わりに立場ないですよね。
She Loves You
Rita Lee
Bossa'n Beatles
Lideres 2001
ブラジル人の女性歌手、リタ・リーが歌う「シー・ラブズ・ユー」です。バックミュージシャンも全員ブラジル人。ブラジル風ビートルズです。ビートルズがこの曲を吹き込んだのは1963年7月、この曲はアメリカとイギリス両国でヒットチャートの一位に輝いています。この「シー・ラブズ・ユー」がアメリカで「ビルボード」の一位になった週には、二位が「抱きしめたい」、三位が「プリーズ・プリーズ・ミー」と、ワン・ツー・スリーでビートルズがチャートの上位を独占しています。すごい人気だったんですね。
僕は若い頃、ビートルズのレコードって自分では買ったことがなかったんです。ビートルズの音楽はもちろん好きだったけど、こういう音楽はラジオで聴くものだと思って、お金を出してまで買わなかった。わざわざ買わなくても、ラジオで毎日がんがんかかってましたから。そのせいで、ビートルズのヒット・ソングはよく知っているけど、ラジオではかからないマイナーな曲はあまり知らない、という状況が生まれました。簡単に言えば、ビートルズは好きだったけど、決して熱心なファンではなかったということですよね。 僕は、ジャズ喫茶に通ってマイルズとかコルトレーンとかを聴きまくり、当時からオペラなんかも聴きに行ってました。救いがたく小生意気な少年だったんです。「やなガキ」っていう方が近いかな。でも大人になってから、ふとしたきっかけで彼らの音楽をじっくり、腰を据えて聴くようになります。その話はまたあとで。
All My Loving
Suzy Bogguss & Chet Atkins
Come Together - America Salutes The Beatles
Liberty 1995
「オール・マイ・ラヴィング」、ポールが書いた曲です。ギターの名手チェット・アトキンスをバックに、カントリー歌手のスージー・ボガスが歌っています。ビートルズの歌ったこの曲、なぜかシングルカットはされませんでした。ビートルズの場合、素晴らしい曲が次々に出てくるものだから、シングルカットが間に合わなかったというのが実状みたいですね。
僕は専業作家になるまでずっとジャズ関係の仕事をしていて、十年近く朝から晩までジャズばかり聴いていました。もちろん楽しかったんだけど、十年続くとさすがに疲れて、仕事をやめてから三、四年くらい、「ジャズはちょっといいか」と思って、クラシックとロックばかり聴いていました。
80年代の半ばには日本を離れて、ヨーロッパで何年か暮らしました。日本にいてもあまりいいことないから、外国でも行くか……みたいな感じで。
最初、ギリシャのスペッツェスっていう島に住んで、そこでなんもせず、ただぼーっとしていました。音楽を聴く手段というと、カセットテープのウォークマンしかなかった。その日本から持ってきた何本かのテープの中に、たまたまビートルズの「ホワイト・アルバム」があって、海岸でのんびり釣りなんかしながら、毎日そのカセットテープを聴いてました。
ギリシャの島って、海はきれいだけど、思いのほか魚は釣れないんです。釣れても、調理もできないような小さな雑魚ばかりです。おまけに突堤の先で釣りをしていると、近所の猫たちがまわりにいっぱい集まってきて、僕がたまに釣り上げると、みんなでわっととびかかってくるんです。で、まあ、しょうがないから魚がかかるたびに猫たちにあげてました。結構怖いですから。(ニャー、グルグル、猫の怒りの鳴き声)
そんな毎日を送りながら「ホワイト・アルバム」を浜辺で聴いていると、音楽が不思議なくらい心に沁みてくるんです。これ、いいなあ、と実感しました。
そしてビートルズの音楽にインスパイアされてというか、この年の冬に長編小説を書き始めました。
それが長編小説『ノルウェイの森』です。
And I Love Her
Sarah Vaughan
Songs Of The Beatles
Atlantic 1981
“And I Love Her”――この素晴らしいバラードはポールの手によるものです。でもここでは女性歌手サラ・ヴォーンが歌っているので、“And I Love Him”になります。サラのバックをつとめているのはマーティとデヴィッドのペイチ親子、ジョーとジェフとスティーヴのポーカロ・ファミリー、という「TOTO」の中心メンバーです。だからいつものサラ・ヴォーンとはひと味違います。
この曲でサラは“And I Love Him”って歌っていますが、コーラスは“And I Love Her”って歌ってます。どうでもいいことかもしれないけど、けっこう気になりますね。
このアルバム「Songs of the Beatles」が発表されたのは1981年ですが、フュージョン方向に振れすぎているということで、ジャズ・ファンの間で当時あまり評判が良くなかったという記憶があります。 僕はけっこう好きでしたけど。
Can't Buy Me Love
Johnny Rivers
A Tower Records Tribute To The Beatles
EMI 1996
ジョニー・リヴァースがカバーした「Can’t Buy Me Love」。このLPのジャケットには、LAのクラブ「ウィスキー・ア・ゴーゴー」における超ライブ録音(Very, very live!)と書いてあるんだけど、拍手とか歓声とか、どことなく後付けっぽいですね。しかしそれでもなんか、わいわい楽しそうです。切れの良いバック・バンドは、おそらく「レッキング・クルー」の面々でしょう。ベースライン、かっこいいですよね。
アメリカで中古レコード屋にいくと、よく店員とか常連とかが集まって、音楽がらみのトリビア・クイズを出し合っているんです。オタクっぽいというか、そばで聴いていると楽しいです。たまに答えがわかるのがあると、思わず僕も「はぁい」と手を上げたくなるんだけど、もちろんそんなことはしません。たとえば「アメリカで最初にビートルズの曲をカバーした歌手は?」みたいな質問があります。これは簡単ですね。僕でもわかる。デル・シャノンの歌った『フロム・ミー・トゥ・ユー』です。まだビートルズがアメリカで無名の頃にとりあげてシングルで出して、ビルボード・チャートの77位まで上がりました。ビートルズのシングルの方は100位にも入らなかったんだけど。
そんなどうでもいい知識をみんなで競い合うわけです。昔『ハイ・フィデリティー』(2000年製作、監督スティーブン・フリアーズ、原作ニック・ホーンビィ)という中古レコード店のオーナーが主人公になった映画がありましたけど、あのまんまの世界です。でも、そういう中古レコード屋文化みたいな独特の雰囲気も、だんだん消えていくのかもしれませんね。このあいだも久しぶりにニューヨークのヴィレッジあたりを回ったら、なじみのレコード・ショップ、半分くらい店じまいしていました。家賃がすごく上がって、店を維持しきれなくなったんだそうです。淋しいですね。
デル・シャノンの歌う『フロム・ミー・トゥ・ユー』、それから続けて『You’ve Got To Hide Your Love Away』、ジャズ・ギタリスト、ジョン・ピッツァレリの歌で聴いてください。
From Me To You
Del Shannon
The Complete UK Singles (And More) 1961-1966
Ace 2013
You've Got To Hide Your Love Away
John Pizzarelli
Meets The Beatles
RCA 1998
“You've Got To Hide Your Love Away”、「君は愛を押し隠さなくては」、ボブ・ディランっぽい雰囲気を持つなかなか素敵な曲ですが、当時の日本語のタイトルは「悲しみはぶっとばせ」、1960年代風というか、すごい言語感覚ですよね。そういえば『ベートーヴェンをぶっ飛ばせ』もビートルズの演奏でヒットしました。
そう、この頃のビートルズはいろんなものを片端からぶっ飛ばしていたんですね。
僕は40代になるまで、ビートルズのレコードを自分で買ったこともなかったし、正面からまともに彼らの音楽を聴いたこともありませんでした。ただ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のアルバムだけは、例外的に高校時代から手元に持っていて、隅々までけっこうしっかり聴いていました。高校のときわりに仲良かった女の子から「これを聴きなさい」と言われて貸してもらって、そのまま借りっぱなしになっていたんです。東芝の赤盤LP。悪いなあ、返さなくちゃなあ……と思いつつ、連絡がとれず、半世紀以上そのままになっています。半世紀、長いですよねえ。
でも考えてみれば、その頃熱心なビートルズ・ファンだった16歳の女の子たちも、今ではもう孫の二、三人はいようかという年齢になっているんですね。時の経つのは速いです。まあ、皆さんも気をつけてください。というか、うーん、気をつけてどうなるってものでもないですが。
Yesterday
Marianne Faithfull
Lennon & McCartney Songbook
Connoisseur Collection 1990
この曲は当時、ほんとうにとことん流行ったんです。どれくらい流行ったかというと、僕が「この曲はもう一生聴かなくてもかまわない」と思ってしまうくらい流行りました。なにしろラジオのスイッチを点ければ、「イエスタデイ」が流れているんです。良い曲なんだけど、最後には「もういい、イエスタデイ、頼むからやめてくれ!」と叫びたくなりました。
そんな僕でも、このマリアンヌ・フェイスフルが可憐な声で歌う「イエスタデイ」はときどき聴きたくなります。
マリアンヌ・フェイスフル……最近はすっかりドスのきいた声になってしまいましたが、この頃は妖精のようなイノセントな歌声でした。
「サージェント・ペパーズ」の話を続けます。先日、知り合いのオランダの人から「ジ・アナログズ(THE ANALOGUES)」というバンドのDVDが送られてきたんですが、これがビートルズそっくりに演奏するオランダのバンドでして、アルバム「サージェント・ペパーズ」に収録されている音楽をライブで、順番通り厳密に再現しているんです。それもわざわざリバプールまで行って、地元の観客の前でやってるんです。ヴィジュアル的には今ひとつ冴えないおっさんバンドなんだけど、楽器やらPAやらもすべて当時のオリジナルのものを揃えているという徹底ぶりで、そのすさまじい熱意に打たれます。コンセプトとしては、クラシック音楽の古楽器演奏と同じです。
ビートルズは「サージェント・ペパーズ」を発表した頃にはもうライブ演奏をやめていましたから、彼らがどんな楽器を使ってどんな風に演奏したか、映像として残っていないので僕らにはなかなかわからない。ところがこのアナログズのライブ演奏を見ていると、「へえ、このサウンドはこんなふうに構成されていたんだ」みたいなことがだいたい一目で見て取れます。もちろんスタジオ録音をそのままライブで再現することはできないから、あくまで近似値なんだけど、それにしても目からウロコというか、一見一聴の価値はあります。
「ジ・アナログズ」というバンドです。名前もなかなかいいですね。
Norwegian Wood
Gary Burton
Something's Coming! - The Groovy Sound Of Music - The Time Machine
BGO Records 2016
最後はこの曲、「ノルウェイの森」。「ラバー・ソウル」まではいかないつもりだったんですが、やはりこれが出てこないと番組が終わらない、というか(笑)。オリジナルの録音は1965年10月、もちろんジョンが書いた曲です。たぶんジョン以外の人には書けない曲ですよね。
演奏しているのは、ジャズ・ヴァイブラフォン奏者ゲイリー・バートン。一人でヴァイブとピアノとベース、マリンバを演奏しています。多重録音です。若い頃のゲイリー・バートンって、独特の鋭い透明感があって、僕は好きでした。
今日の最後の言葉。ちょっと長いけど、あるインタビューでのポール・マッカートニーの発言です。

「みんなは、ジョンにはハードなエッジがあり、僕のエッジはソフトだと決めつけている。長年そう言われ続けてきたもので、そういうものかと僕も思っていた。でも妻のリンダは言うんだ、『あなたにはハードなエッジがある。ただそれが表面に出てこないだけよ』って。そのとおりだ。僕はそうしようと思えば噛みつくこともできるし、しっかりハードな一面を持っている。また彼女は言う。『そしてジョンにはとてもソフトな一面があったわ』って。そうなんだ、ジョンのそういうソフトな面が、僕はすごく好きだった」

そんな持ち味の異なる、優れた才能を持つ二人がたまたま出会い、理解しあい助け合い、また時には反発しあったからこそ、あれだけ見事な音楽が次々に生まれきたのでしょうね。
その巡り会いの惑星直列的な素晴らしさに、ただ感心するしかありません。

それでは今日はお別れです。
6月26日にいよいよ村上JAM、公開録音があります。お楽しみに。
またお会いしましょう。

スタッフ後記

スタッフ後記

  • 村上春樹がビートルズを語る。
    それはきっと夢のような、世界中のファンも喜ぶ番組になりました。
    高校時代の同級生が安田君といって、オノヨーコさんの甥でした。年の瀬にはヨーコさんとジョンからのクリスマスカードが届いて、毎年それを僕に見せてくれた。今回の番組、ヨーコさんにも伝えてと安田君に言わないと!(延江エグゼクティブプランナー)
  • 神戸の町でガールフレンドから「サージェント・ペパーズ……」のレコードを借りている村上少年、スペッツェス島の突堤の先でのんびり釣りをする春樹さんと猫、そして「ホワイト・アルバム」のカセットテープ。初期ビートルズはいつも記憶の扉を“トントン”とノックしてくれます。ちょうど村上さんの小説の夏の風景のように。ところで、僕はジョージ・ハリスンが好きです。(エディターS)
  • ビートルズの初期ヒットソングカバー特集。小説「ノルウェイの森」の誕生秘話が村上さん本人の口から語られる、大変貴重な回となりました。鳥肌立ちました!村上さんのヨーロッパ滞在記はエッセイ「遠い太鼓」でも読むことができます。(構成ヒロコ)
  • 6月の「村上RADIO」は、ビートルズ初期のカバー特集です。村上さんからこの企画を最初に聞いた時、なぜ初期なんだろうと思いました。一般的に評価の高い後期ではない、複雑な音楽になる前のビートルズ。番組を作ってるうちに、その謎は解けたような、本家越えという野望なんて微塵も感じさせない、無垢な音楽が並んでいます。自分も後期だけじゃない初期のビートルズをカバーできる人間でありたいと思った、6月の「村上RADIO」です。(キム兄)
  • 6月の村上RADIOのテーマは初期のビートルズ。仕事にかこつけてビートルズを聞きまくりたい…と思っていた6月初旬。しかし、6月26日に行われる、村上春樹さん作家デビュー40周年JAMの準備も並行して行っているゆえ、そこまで浸れなかった6月でした。村上JAMの模様は後日ちゃんと番組に致しますので、村上JAMに当選しなかった方は、放送でお楽しみくださいね。愛を込めて、皆さまにこの素晴らしいライブの模様をお届けしますゆえ…。(レオP)
  • 聴き慣れたはずのビートルズの曲も、ちょっと変わったカヴァーバージョンに村上春樹さんのおしゃべりが加わって、とても新鮮に聴けましたね。放送では、ビートルズの原曲がおしゃべりのBGMとして散りばめられていましたが、カヴァーバージョンと並べて聴いて、ビートルズの素晴らしさも再発見できた気がします。ところで、村上春樹さんのお話の中に出てきた、赤盤LPってなんのことかと思ってちょっと調べてみたら、なんとかっこいいアナログレコード!こんな赤い透明なレコード盤があったんですね!(CADイトー)

村上春樹(むらかみ・はるき)プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。