<ストーンズのリフ話、おもしろかったです。ところで僕の知る限り、春樹さんからレッド・ツェッペリンの話を聞いたことないのですが、ツェッペリンに関しては、どのような見解でしょうか? ちなみに、ジミー・ペイジは、最近のおじいちゃんになってからの日本人ぽい顔が好きです>はあ、見解ですか……。ツェッペリンねえ。若い頃もちろんしっかり聴いていますが、僕の守備範囲からはいくぶん外れているかなあ……という感はあります。僕がレコード店でバイトしている頃、「移民の歌」が店頭でやたらかかっていました。店長がツェッペリン好きだったんです。「あ、ああー」というイントロが今でも耳にしっかり残っています。
「小説を書くのは、夜中に車を運転しているようなものだ。ドライバーが現実に目にできるのは、ヘッドライトに照らされた領域でしかない。しかしそれでもなんとか目的地にたどり着くことはできる」なかなかうまいたとえですね。実際の話、長編小説を書いているときって、まさにこういう感じなんです。今現在書いている部分の意味はいちおう把握できてはいるんだけど、それが先になってどのように発展していくのか、結末に本当にうまく結びついていくのか、ほとんどの場合、書いている本人にも、もうひとつよくわかりません。でも、とにかく見えている現在地を、力を尽くして注意深く、的確にこなしていくしかない。何より大事なのは、自分の本能を信じること。そして物語の生来(せいらい)の力を信じることです。えばるわけじゃないですけど、長編小説を書くのって、けっこう大変な作業なんです。でも、だからこそ楽しいんですけどね。こういうの、AIにできるかなあ。
1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。