MURAKAMI RADIO
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村上RADIO~ジャズ奥渋ストリート~

村上RADIO~ジャズ奥渋ストリート~

こんばんは。村上春樹です。「村上RADIO」、今日が今年、最初の放送になります。おめでたいから……というのでもないんだけど、今日はとにかく、たっぷりジャズをかけます。タイトルは「ジャズ奥渋ストリート」。奥深くて、渋いジャズを集めました。他の番組ではまず聴くことのできないものが並んでいます。冬の夜、部屋を暖かくして、村上特選の「奥渋ジャズ」を楽しんでください。

今日おかけするのはすべてアナログLPです。うちのレコード棚から選んで持ってきました。どちらかというと、マイナーなミュージシャンの演奏を中心にそろえてみました。
メイン・ストリートにいる大物ジャズマンだけが、優れたジャズを演奏するわけではありません。少し脇道に入ると、そこには脇道ならではの素敵なジャズが鳴っています。どれも僕が長年にわたって聴き込んできた古いレコードですので、ときどきプチプチが入ったりしますけど、例によって気にしないでください。
WALKIN’
ERIC KLOSS
FIRST CLASS KLOSS!
PRESTIGE
最初は盲目のサキソフォーン奏者、エリック・クロスです。1949年生まれというから、僕と同い年ですね。1960年代にプレスティッジ・レコードから10代でデビューしました。
今日おかけする「ウォーキン」、ベーシスト、リロイ・ヴィネガーの実にかっこいいベースソロから始まります。これを聴くといつも、「ああ、ジャズだなあ」と胸が躍ります。
トランペットはジミー・オーエンス、ピアノは名手シダー・ウォルトン、ギターはパット・マルティーノ、ドラムズはアラン・ドーソン。けっこうとんがったリズムセクションです。1967年9月の録音です。エリック・クロス、Walkin’。
最初と最後がベースソロで終わるところがなんといっても素敵ですね。もちろんタイトルの「ウォーキン」とウォーキング・ベースをかけてあるわけですけど。

<収録中のつぶやき>
いまジャズバーとかジャズのレコードをかけるお店が結構あると思うんだけど、新しく買いそろえたレコードというのが多いんです。昔から持っている、歴史の沁み込んだレコードみたいなのはあんまりない。そういう音はやっぱりいいですね、ちょっと違うんだよね。

PANNONICA
STEVE LACY
DISPOSABILITY
Vik
スティーヴ・レイシーのソプラノ・サックスを聴いてください。ソプラノ・サックスって、だいたいが他の楽器との持ち替えが多いんですけど、このレイシーさんは珍しくソプラノ一筋の人です。管楽器奏者にもかかわらず、ピアノのセロニアス・モンクからの影響が大きいという、ちょっと異色のミュージシャンです。まだモンクが世間に注目される前から、その音楽に深く傾倒していました。モンクのバンドに入っていたこともあります。ここでもモンクの曲を演奏しています。曲は「パノニカ(“PANNONICA”)」。これは彼が1965年にイタリアに行ったときに、イタリアのレコード会社のために録音したものです。ベースがケント・カーター、ドラムズがアルベルト・ロマーノという、ピアノレス・トリオでの演奏です。
OGE
TERRY GIBBS QUARTET
TAKE IT FROM ME
impulse
ヴァイブラフォン奏者テリー・ギブズがギターのケニー・バレルと組んだ素敵なアルバム“Take It from Me”から“OGE”を聴いてください。テリー・ギブズのオリジナル曲ですが、“OGE”って、何のことなんでしょうね? 僕にもわかりません。
MJQ(Modern Jazz Quartet)を思わせるクラシカルなサウンドですが、裏に回ったケニー・バレルの洒落たリズムの刻みがなにしろ絶妙です。ベースはサム・ジョーンズ、ドラムズはルイス・ヘイズ。二人は、当時人気絶頂だったキャノンボール・アダレイ・クインテットのリズムセクションです。なかなか面白い人選ですね。ルイス・ヘイズのブラッシングもなかなか洒落てます。1964年の録音。インパルス・レコード、プロデュースはボブ・シール、録音技師はルディ・ヴァン・ゲルダーです。
DAYS OF WINE AND ROSES
Charles Lloyd
Discovery!
Columbia
テナー・サックス奏者、チャールズ・ロイドの演奏するお馴染みの美しいバラード「酒とバラの日々」。最初に出てくるロイドのサックスソロも素敵ですが、途中に入るドン・フリードマンの知性的なピアノソロは聴きごたえがあります。僕はこのソロが聴きたくて、よくこのレコードをかけます。ベースはエディー・カーン、ドラムズはロイ・ヘインズです。
僕は一度横浜の小さなジャズ・クラブで、ドン・フリードマンさんの演奏を聴いたことがありますけど、それは本当にインティメイト(親密)で、センシティブな音楽でした。こういう人は大きなホールだと、きっと真価が伝わりにくいんでしょうね。少し前に亡くなってしまいましたけど。
THIS LOVE OF MINE
ROLAND KIRK & AL HIBBLER
A MEETING OF THE TIMES
ATLANTIC
次は、ヴォーカルを聴いてください。盲目の歌手アル・ヒブラーが、やはり盲目のサキソフォーン奏者ローランド・カークのバンドをバックに朗々と歌いあげます。フランク・シナトラの歌でヒットした名曲“This Love of Mine”。
ローランド・カークは何本もの管楽器を同時に吹き分けて、鼻でフルートを吹いてしまうという奇矯(ききょう)な振る舞いで名を馳せた人ですけど、ここでは真面目に、というか、ただ一本のテナー・サックスでしっかり勝負をしています。クルーナー歌手(註:Croonerとはビング・クロスビーに代表される優しく囁くように歌う歌唱法)のアル・ヒブラーと、当時ジャズの先鋭的な位置にいたローランド・カーク、ちょっと驚かされる組み合わせですが、アルバムの出来はとても良いです。不思議に波長が合うんですね。ピアノはハンク・ジョーンズ、ベースはロン・カーター、ドラムズはオリヴァー・ジャクソン、1972年の録音です。
SUMMERSET
ZOOT SIMS
NIRVANA
GROOVE MERCHANT
今日はジャズ奥渋ストリート、渋くて奥深いジャズを特集しています。
テナー・サックス奏者、ズート・シムズが1972年にグルーヴ・マーチャント・レーベルに吹き込んだ知られざる傑作“Nirvana”から「サマーセット」を聴いてください。ギターはバッキー・ピザレリ(ジョン・ピザレリのお父さんですね)、ベースはミルト・ヒントン、ドラムズはバディ・リッチ。このバディ・リッチのドラミングが素敵なんです。でしゃばらないけど、存在感ばっちりという、いかにもヴェテランの味です。ズート・シムズもリラックスした音を出しています。仲の良いヴェテラン・ミュージシャンたちが一堂に会して和気あいあいで吹き込んだという、いかにも親密な雰囲気が全体に漂っています。
「サマーセット」、いい曲ですよね。これを作曲したのはトリー・ジトというあまり知られていない作曲家ですが、このアルバムには彼の曲が二つ入っています。ジトさんは世間的には、ジョン・レノンのアルバム「イマジン」のストリングス・アレンジメントを手がけた人として、また歌手ヘレン・メリルのご主人として、よく知られているみたいですね。
Only One
CHRIS ANDERSON Trio
Inverted Image
JAZZLAND
次は一般的にほとんど名を知られていないピアニスト、クリス・アンダーソンのトリオ演奏を聴いてください。曲は「オンリー・ワン」、彼のオリジナル曲です。これ、とても美しい曲です。ベースはビル・リー、ドラムズはウォルター・パーキンス。三人はみんなシカゴを中心に活躍していたミュージシャンたちです。シカゴは有名なジャズ・ミュージシャンを数多く輩出しています。
このアンダーソンは演奏だけ聴くと、ビル・エヴァンズを思い出させるんですが、彼は実は黒人です。そして盲目で、骨にも重い障害を負っています。そんなせいもあって、残念ながら活発な演奏活動ができず、ミュージシャンの間での評判がよかったんですけど、全米での知名度は低いものになっています。このレコードで聴く限り、素晴らしいピアニストに思えるんですけど。今日はなぜか盲目のミュージシャンが多かったですね。あくまで偶然ですが。
DANCE OF THE NIGHT CHILD
CARMELL JONES
JAY HAWK TAKL
PRESTIGE
ホレス・シルヴァーのバンドで名を売ったトランペッター、カーメル・ジョーンズの演奏を聴いてください。1965年に発表されたプレスティッジ・レコード「ジェイ・ホーク・トーク」から、彼のファンキーなオリジナル曲“Dance of the Night Child”(夜の子どもたちの踊り)です。テーマに続いて、まずバリー・ハリスの辛口のピアノソロがあり、カーメルのノリの良いソロに続いて、ジミー・ヒースのパワフルなテナーソロがあります。
1965年、この時期のジャズ・シーンって、マイルズ・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、エリック・ドルフィー、オーネット・コールマン、とジャズの革新がすごい勢いで進行しまくっているんですが、そういう新しい流れとは別に、ハードバップ直系のジャズをこのように地道に続けている人たちもいました。このへんの演奏はなかなか日が当たらないんですが、でもなんかいいんですよね。ジャズ好きの胸にはじわっときます。どうですか、猫山さん。(にゃー)
CREPESCULE WITH NELLIE
RONNIE MATHEWS
So Sorry Please...
NILVA RECORDS
最後にもう一曲、セロニアス・モンクの曲を聴いてください。ロニー・マシューズのソロ・ピアノで“Crepuscule with Nellie”。クレプスキュールというのはフランス語で「薄暮」のことです。夕暮れの薄闇。ネリーはモンクの奥さんの名前です。奥さんと二人で夕暮れを眺めているんですね。マシューズはその静けさに満ちた風景を、モンクへの敬意を込めてしっとりと歌い上げます。1985年の吹き込みです。ロニー・マシューズはその長いキャリアの割にあまり目立つことなく、広く名を知られることもなく、なんとなく日陰状態のまま終わってしまったようなピアニストです。腕もよかったし、一流バンドにも入っていたんですけど、録音に恵まれなかったという不運もあります。性格的にもちょっと謙虚過ぎたのかもしれないですね。それでは“Crepuscule with Nellie”。
AMERICAN BALLAD
秋吉敏子
Finesse
Concord Jazz
今日のクロージングの音楽は、ピアニスト秋吉敏子さんのトリオが演奏する“American Ballad”、彼女が作曲した美しいバラードです。1972年に発表された「フィネス」というアルバムの中に入っています。とても良いアルバムで、僕の密かな愛聴盤になっています。
今日の言葉は、作家のフランツ・カフカさんの残した言葉です。
彼は人が読むべき本についてこう語っています。

「私たちは私たちに噛みつき、突き刺すような本を読まなくてはなりません。本というものは、私たちの内側にある、固く凍った海を打ち砕く、鋭い斧であるべきなのです」

(参照:「凍った海と斧」、『村上春樹 雑文集』より)
そうか、僕らの内側には固く凍った海があるんだ。僕の書いた本が、僕が研ぎ上げた斧が、その凍った海をひとかけらでもいいから、砕いているといいなと思います。とてもとてもむずかしそうな作業ですが。

スタッフ後記

スタッフ後記

  • 春樹さんの著書・訳書を通じてジャズを聴くようになった人は多いと思います。もちろん私もその一人。収録の時に春樹さんがお持ちになるレコードは、ものすごい情報源!長年ジャズを聴き続けてきたからこその選曲にうっとりです。そして、世界のジャズの歴史と文芸を結び付けている春樹さん。『一人称単数』に入っている「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」を改めて今回読んでみましたが、このジャズ愛にあふれる小説も是非一緒に読むことをお勧めします。(レオP)
  • 「ポートレイト・イン・ジャズ」が好きです。和田誠さんが描くジャズミュージシャンたちの肖像に村上春樹さんがエッセイを添えた贅沢な一冊です。和田さんは2019年に他界しました。和田さんのことを話すとき、村上さんは少しさみしそうです。いつかラジオを通してコラボレーションができるといいのだけど。(構成ヒロコ)
  • 今回の村上RADIOは、奥深くて渋いジャズ特集でした。オクシブ。何ともそそられる言葉です。特に最後のセロニアス・モンクの曲が、しっとりオクシブに誘ってくれます。(キム兄)
  • 今回は、ジャズ奥渋ストリートでした。冬の寒い夜に聴くと、部屋も体も心も暖めてくれそうな、そんな気がします。心休まるひと時になればと思います。(AD桜田)
  • 「シブい」という言葉は、coolでもbitterでもtastefulでもなく、じわりと感じる都会的で趣味のいい日本語の響きがあります。今回の特集は、シブいだけではなく、村上印の奥深いジャズ。5曲目は盲目の歌手アル・ヒブラーが歌うフランク・シナトラの “This Love of Mine”。シブくて底光りする一曲です。真冬の夜にはこんなジャズ・ヴォーカルが似合いますね。ラストのフランツ・カフカの印象的な一文は、エッセイ集『村上春樹 雑文集』の一篇「凍った海と斧」で読むことができます。15歳の村上DJが感じた文学的原風景が語られています。(エディターS)
  • 山下洋輔さんと横山幸雄さんのデュオリサイタルに一緒に行った帰りのこと、「ちょっと散歩しよう」と春樹さんに誘われ、オーチャードホールから奥渋といわれる裏道を歩きました。「このあたりは若者がいろんな店を自由に開いていてね」。カフェ、書店、イタリアン、古着屋。どれも小ぶりで洒落た店が並んでいて、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのようでした。「それでね、今度は、ジャズ奥渋ストリートにしようと思ってる」と暮れなずむなか、春樹さんが言っていたのを思い出しました。今晩、もしかしたら、あの裏道でも村上RADIOが鳴っていたらそ、とても素敵だなと思いながら聴いていました。(延江GP)

リスナーのメッセージに対するお返事

リスナーのメッセージに対するお返事

やっちん4348(55、男性、東京都)

ほぼ無名のミュージシャンの演奏でしたが、とにかく全曲アナログレコードのサウンドにうっとりしました。気持ちよかったです。そのうち第二弾をお願い致します。ただ、個人的には春から夏にかけての、オープンカー・ドライブミュージックの特集をお願い致します。
----アナログ・サウンドを楽しめていただけたようで、なによりでした。そのうちに「カセットテープ・サウンド」特集をやりたいなあとも思っています。オープンカー・ドライブミュージック・・・当然レッチリなんかが元気にかかるでしょうね。楽しみです。
キューピーちゃん<3(62、男性、福井県)

今日は今まで聞いた放送の中で一番楽しめました。私はまだジャズ初心者ですが、今夜かかった曲は、どれも心に深く残るものばかりでした。また今回のような番組をお願いします。ぜひ、第2回奥渋、第3回奥渋と続けていってください。
----楽しんでいただけて何よりです。初心者とかベテランとか、そういうことには関係なく「心に感じる」ということが、音楽にとっては素直に大事ですよね。こういうの、2回、3回と続けていきたいと僕も思っています。そのうちにまたやりましょう。
らむ猫の母(56、女性、大阪府)

素敵な番組をありがとうございました。先日、主人を癌で看取りました。何回かラジオを聴けなかったので、今日はホッとリラックスでき、今からバーボンでも飲もうと思います。村上さんの小説とラジオの声は、こころの固いものを打ち砕くのではなく、優しくほぐしてくれる感じです。生きていたらいろいろありますね。
----個人的なことですが、僕もこのお正月に母を看取りました。もう97歳でほとんど老衰死でしたが、人が亡くなるというのはやはり大きなことですよね。精神的にも現実的にも。いろいろとお疲れ様でした。音楽が(そして文章が)少しでもあなたのお役に立てるとしたら、嬉しいです。
薫(28、女性、高知県)

こんばんは。前回の"ジャズ奥渋ストリート"は、仕事終わりに聴かせて貰いました。ウィスキーを飲みながら、村上春樹さんが選別された名曲を聴き、身体の内側からじんわりと気持ちよくなりました。有難うございます。村上春樹さんの作品を機に、私もジャズへの関心を強く示すようになりました。これからも、ジャズを楽しんで聴きます。
----僕はべつに「ジャズの伝道師」とかそういうのではありませんが、ジャズという音楽に親しみをもってくださる方が増えたら、それはとても嬉しいです。長い歴史を持ち、深い内容を持った音楽ですから、心と耳をじっくり傾ける価値はあると思います。これからも楽しんで聴いてください。
ちぇりん(51、女性、神奈川県)

この番組を聴くようになってレコードの音とCDの音の違いがこんなに違うのかと初めて知ったのですが今回は特にそれを感じました。素人でもわかる音の深み、奥行きが素晴らしかったです。選曲も素敵でした。
----アナログの音って、温泉のお湯につかっているような、独特の「じんわり感」があります。レコードって、きれいに磨いてあげると「鶴の恩返し」みたいに良い音で鳴ってくれるんです。スポティファイとか、そういうことってありませんよね。
りとりんとん(61、女性、香川県)

奥渋ストリート、もうたまらなく渋くてカッコよかったです。冬の夜に限らずじっくり楽しみたいようなナンバーばかりでした。ことに最初の曲、Walkin’と、クリス・アンダーソンのピアノに痺れました。自分でコツコツ集めて聴いて、こういう曲に出会った時の喜びっていうのは、たまんないでしょうね。うちもCDやレコードがわんさか(と言っても村上さんちの1000分の1もないと思いますが)あって、たまに久しぶりに聴いたCDがびっくりするくらい記憶より良かったりすると嬉しくなってしまいます。そういう喜びを誰か話せる友達がいたら、なお嬉しいですよね。全国のリスナーさんと繋がる嬉しさ、村上ラジオ、これからも楽しみにしています。
---- 1人で音楽を聴くのもいいですが、みんなでラジオの前で一緒に聴く音楽もいいですよね(ラジコで聴いている人も多いと思いますが、それでも)。どんなレコードにも「私はこれが個人的に好きなんだ」というフェヴァリット・トラックがあります。そういう音楽をこれからもどんどんかけていきたいな、と思っています。お楽しみに。
鳥三郎(17、男性、埼玉県)

いつも楽しく拝聴しています。自分は来年に大学受験を控えているのですが、勉強に集中できないときはジャズを聴いて気持ちを切り替えています。そこで質問なんですが、村上さんは作業する前や、気分を切り替えたいときに音楽を聴かれますか?お薦めの曲がありましたらぜひ伺いたいです。
----そうか、17歳なんですね。僕も17歳の頃は一生懸命ジャズを聴いていました。その時代に熱心に聴いた音楽は、半世紀以上を経た今でも、とても鮮やかに覚えています。いちばん感受性が研ぎ澄まされている時代です。いろんな音楽を意欲的に吸収していってください。

気分を切り替えたいときに聴く音楽? そのときによっていろいろ違います。でもたとえば、一息入れてほっとしたいときには、MJQ(モダンジャズ・カルテット)のレコードなんかをよく聴くかも。ヴァイヴのミルト・ジャクソンと、ピアノのジョン・ルイスの独特の絡みが、もつれた気持ちを不思議にほぐしてくれます。

村上春樹(むらかみ・はるき)プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。