MURAKAMI RADIO
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村上春樹さんからのメッセージ

村上RADIO~(あくまで個人的な)特選オールディーズ~

村上RADIO~(あくまで個人的な)特選オールディーズ~

村上RADIO、今日は全編オールディーズで行きます。
時代背景みたいなものを少し簡単に説明します。
よく「激動の1960年代」みたいなことが言われますが、それはあくまで60年代後半の話であって、前半は文化的にはかなりのんびりした時代でした。冷戦時代だったので、政治的にはハードな面もありましたけど、文化的にはまずまずリラックスしてました。ポップ音楽シーンで言えば、1950年代後半に登場した反社会的というか、荒々しいロックンロールがだんだん飽きられて、廃れていって、エルヴィスもなんだか牙を抜かれてしまい、それからビートルズやらサイケデリック、アートロックみたいなのが登場してくるまでの五年間は、まさにお気楽ポップスの全盛期でした。僕としてはそりゃもう、楽しかったですよ。もちろん60年代後半もスリリングで面白かったですけど。
Every Breath I Take
Gene Pitney
The Many Sides Of Gene Pitney
Musicor Records
ジーン・ピットニーの“Every Breath I Take”。僕が初めて自分で買ったLPレコードは、このジーン・ピットニーの"The Many Sides of Gene Pitney"というアルバムでした。僕が今うちで持っているのはアメリカの「MUSICOR RECORDS(ムジコール・レコーズ)」原盤ですが、当時買ったのはユナイテッド・アーティスツの国内盤でした。日本盤には「ルイジアナ・ママ(Louisiana Mama)」がボーナストラックで入っていました。中学二年生くらいだったかな。 このアルバムには「ルイジアナ・ママ」とか「非情の町(Town Without Pity)」といったヒットソングが入っていたんですけど、何度も聴いているうちに、僕はこの"Every Breath I Take"という曲がすっかり好きになりました。
I'll Go On Loving You
Jamie Coe
Golden Age Of Original Hits Vol.4
東芝EMI
これ、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンの作詞作曲、フィル・スペクターのプロデュースというすごいラインナップなんです。でもそのときはそんな人たちの名前なんてぜんぜん知らないから、ただ「いい曲だなあ」と感心して聴いてました。あらためて聴くと、アレンジメントが実に素晴らしいですね。いかにもスペクターらしいっていうか。 この頃は、本国ではほとんど無視されたんだけど、日本ではなぜかヒットしまくったという外国のポップソングがけっこうありました。一曲目のジーン・ピットニーの「ルイジアナ・ママ」もそうですね。あと、このジャミー・クーの「燃ゆる想い(Keep on Loving You)」なんかはその代表的な例です。

名前の正しい発音はジャミー・クーじゃなくて、ジェイミー・コーですが、その頃のレコード会社って、そういうことにかなりいい加減だったんです。ジェイミー・コーは当時デトロイトで人気のあった歌手で、ボビー・ダーリンが惚れ込んで、自分の経営するレコード会社「アディスン」と契約させました。ダーリン自身のプロデュースで何枚かレコードを出したんですが、ブレイクには至りませんでした。1959年に出たこの「燃ゆる想い」も本国ではヒットチャートにかすりもしなかったんですけど、日本では流行りました。 このジェイミー・コーさん、歌手をやめたあとは実業家になって、今ではデトロイトで二軒のクラブを経営しているということです。よかったです。
Lonely Soldier Boy
Johnny Deerfield
CAPITOL GOLDEN OLDIES BEST20
CAPITOL
次はジョニー・ディアフィールドの「悲しき少年兵(Lonely Soldier Boy)。ジョニー・ディアフィールドに関しては、手元にまったく資料がありません。どうやらアメリカ本国での知名度はゼロみたいですね。でも1960年にリリースされたこの「悲しき少年兵」は、日本のラジオでは毎日のようにかかっていました。彼は1961年に来日して、あちこちで歌いまくっていたということですが、その後の消息は杳(よう)として知れません。

歌の内容は、軍隊にとられた少年が苦労の末、何年か後に故郷に帰ってきたら、待ってくれてるはずの少女がどこにも見当たらない、という気の毒な話です。当時のアメリカは徴兵制だったので、そういう悲劇はよく起こったんでしょうね。

ある曲がアメリカでは流行らなかったけど、日本ではすごくヒットした――どうしてそういう現象が起こるかというと、当時のアメリカでは、ラジオのDJにかけてもらわないことには、どんなよい曲だってなかなか人々の耳には入らなかったんです。逆につまらない曲でもDJがプッシュすればある程度流行った。そういう権力を笠に着て、DJがレコード会社から袖の下をとっていたりもしました。日本ではそういう操作がなかったということもある程度あったと思います。もちろん音楽の好みが微妙に違ったということもありますけど。
What Am I Gonna Do
Jimmy Clanton
Greatest Hits, Venus In Blue Jeans
Fuel 2000
Do You Know What It Means To Miss New Orleans
Ricky Nelson
Rick Is 21
Imperial
僕はその頃、主にシングル盤を買っていたのですが、シングル盤のB面って、なぜか今でもありありと覚えているものが多いです。A面を聴き飽きて、B面をじっくり聴いてみたら「これ、なかなか悪くないじゃない」みたいなことがよくあって、そういう曲って不思議に個人的愛着が生まれるんです。妙に脇役が印象に残った映画みたいですね。
そういうのを二曲聴いて下さい。まずニール・セダカの「君を求めて(What Am I Gonna Do)」。
吹き込みは1959年。これはシングル版「恋の一番列車(Going Home To Mary Lou)」のB面に入っていました。セダカとハワード・グリーンフィールドの作詞作曲チームの作品で、世間的にはほとんど知られてませんし、正直言ってまあ大した曲でもないんですけど、僕的にはなぜか、わりに好きでした。ニール・セダカの歌うこの曲、うちにあったはずなんだけど、どうしても見つからなかったので、今日はジミー・クラントンが歌ったバージョンで聴いて下さい。出来としてはこっちの方がむしろ良いような気が僕はしてます。このクラントンのバージョンは全米ヒットチャートの50位まで上がりました。

それからリック・ネルソンの「Do You Know What It Means to Miss New Orleans」。吹き込みは1960年。これは「ラッキー・スター(Lucky Star)」のB面でした。タイトルは「ニューオリンズを離れるのがどれほど淋しいことか、わかってもらえるかな?」という意味ですけど、当時僕の買ったレコードでは「ミス・ニューオリンズを知ってるかい」というタイトルになっていました。当時のレコード会社はかなりいい加減だったんです。リック・ネルソンはよくこういう古いスタンダード・ソングを取り上げて歌っています。そう言えば、「ヤング・ワールド(Young World)」のB面は、ガーシュインの「サマータイム(Summertime)」でした。お母さんが古い曲が好きで、僕が歌うと喜ぶから…とリッキーは言っています。母親思いだったんですね。
One Sided Love Affair (1956)
Elvis Presley
Elvis Presley
RCA
僕がいちばん熱心にポップソングを聴いていた時期って、だいたい1960年から65年くらい、つまりビートルズが登場する前の時代です。ビートルズが出てきて間もなく、音楽シーンががらっとスリリングに変わっちゃうんだけど、それより前のポップ・ミュージックには「お気楽」っていうか、蛇が出てくる前の「エデンの園」みたいなのどかな雰囲気が漂っていました。でもその中ではElvis Presleyは別格でした。彼は楽園の中に潜む、鋭い牙を隠し持った甘い毒蛇のような、まったく他とは違う存在でした。
僕は彼のデビュー・アルバム「Elvis Presley」を手に入れて、もう夢中になって聴いていました。このアルバム、ほんとに何度聴いても聴き飽きなかったです。どの曲も素晴らしいんだけど、今日は僕の大好きな“One Sided Love Affair”を聴いて下さい。1956年の録音です。
この曲におけるエルヴィスの天然のキック力は、実にすさまじいものです。今聴いてもひしひしとしびれます。
A Boy Like Me, A Girl Like You
Elvis Presley
Girls! Girls! Girls!
Victor
それからずっとあとの録音ですけれど、1962年に公開された映画「ガール!ガール!ガール!」の中に入っている“A Boy Like Me, A Girl Like You”を聴いて下さい――「僕みたいな男の子が、君みたいな女の子に出会うとき」。これ、シングルカットはされませんでしたけど、なかなかスウィートで素敵なバラードです。僕はこの映画を中学校のときに、好意を寄せていた女の子と一緒に観に行ったんです。とはいっても二人だけじゃなくて、グループで観に行きました。神戸の映画館でしたね。そういうわけで、この曲もしっとりとよく覚えています。今日は、当時買ったアナログLPで聴いて下さい。少し雑音が入るかもしれないけど、まあ記念品みたいなものなので我慢して下さい。
The Phoenix Love Theme (Senza Fine)
The T-Bones
Sippin' 'N Chippin'
Liberty
1960年代半ば、ビートルズが登場する少し前に、アメリカのポップス界にいくつかの動きがありました。ひとつはビーチボーイズに代表されるサーフィン・ミュージックの登場、そしてベンチャーズに代表されるインストルメンタル・グループの隆盛——簡単に言えばエレキ・ブームです。またそれと平行して、ボブ・ディランに代表されるフォークソングのムーブメントもありました。

今日はサーフィン・ミュージックと、インストルメンタル・グループの中から、当時僕が個人的に気に入っていた曲を聴いて下さい。まずはT・ボーンズの「『飛べ!フェニックス』のテーマ」、1966年の吹き込みです。原曲はイタリアのヒットソング「Senza Fine(終わりなき恋)」ですが、ジェームズ・スチュアートの主演した映画「飛べ!フェニックス」のテーマ曲に使われていました。とても面白い映画だったですね。そのいくつかのシーンと結びついて、この曲をよく覚えています。T・ボーンズ、それほどテクニックのあるバンドじゃないけど、編曲のセンスがけっこう垢抜けしていて、ポップで良かったです。
Tell 'Em I'm Surfin'
Jan & Dean
Ride The Wild Surf
Liberty
ジャン&ディーンの歌う“Tell 'Em I'm Surfin'”、「僕はサーフィンやってるって、みんなに言っといて」、1964年の吹き込みです。野球チームの仲間からお呼びがかかっても、女の子からうちのプールに泳ぎに来ないって誘いの電話があっても、僕はサーフィンに行っちまってるからさ、みたいな内容です。本来は「ファンタスティック・バギーズ」というバンドの曲なんですが、日本ではシングルカットされなかったので、僕は長い間ジャン&ディーンの持ち歌だと思っていました。なんというか、恥ずかしげもなく軽快なサーフィン・ソングです。ジャン&ディーンというグループには、ビーチボーイズの音楽が持つちょっとした屈託みたいなものはなくて、その分、良くも悪くも南カリフォルニア的にからっとしてます。無反省というかね……そういうところ、僕はけっこう好きでしたけど。
Wonderful World
Sam Cooke
8 Classic Albums Plus Bonus Singles
Real Gone
次はサム・クックの“Wonderful World”、1960年の吹き込みです。誰もが知っている名曲ですね。歴史も生物も苦手な僕だけど、君が好きだってことだけはばっちりわかってる……。これもよく聴いて、英語の歌詞を丸暗記しちゃいました。
僕が初めてアメリカで長く暮らし始めたときのことですが、僕はそのときある大学に属していまして、ある朝ジムに行ったんです。その大学にはとても立派な50メートル・プールがあったから、泳ごうと思って。プールの更衣室で水着に着替えながら、気分もよかったし、周りに誰もいなかったので、ほとんど無意識にこの歌の出だしを口ずさんじゃったんです。〽“Don't know much about history”(歴史は苦手だ)って。
すると二列くらい向こうで、姿は見えないんだけど、誰かがそのあとを引き継いで、“Don't know much about biology”(生物も苦手だ)って歌ってくれました。そのときに、「ああ、おれ、ほんとにアメリカに来たんだなあ」としみじみ実感しました。聴いてみて下さい。
サム・クックの“Wonderful World”。いろんな人がこの曲をカバーしてますけど、やはりサム・クックの歌がいちばん胸にぐっときます。
Ten Lonely Guys
Pat Boone
The Very Best Of Pat Boone
One Day Music
次はパット・ブーンの「Ten Lonely Guys(テン・ロンリー・ガイズ)」です。
パット・ブーンの歌は、すっかり古臭くなってしまった印象があるんだけど、この歌はなぜか僕の記憶にしつこくへばりついていて、今でもたまに取り出して聴きます。
一人の女性にふられた十人の淋しい男たちが、毎夜のように集まり、彼女の思い出話をして慰めあっているというだけの、かなりしょうもない歌です。でも面白いことに、この作曲者のクレジットが十人の連名なんです。NYのブリル・ビルディングで仕事をしていた十人のソング・ライターたちが集まって、まあ冗談半分に洒落ででっち上げた歌みたいですね。おかげで十人の名前をクレジットするだけで、レコードのレーベルが一杯になっちゃいます。うちの一人はニール・ダイアモンドだということだけど、そういえばニール・ダイアモンドもこの曲をカバーしてます。パットも適当に肩の力を抜いて歌っていて、そののんびり感がね、なかなか心地よいです。1962年の吹き込みです。
Live Young (恋のパームスプリングス)
Troy Donahue
HISTORY OF AMERICAN POPS Vol.1
WARNER PIONEER
お気楽ついでにもう一曲、当時人気絶頂だったトロイ・ドナヒューの「恋のパームスプリングス」をかけます。これも日本でしか流行らなかった曲だけど、なんか「お気楽さのひとつの達成」みたいなすがすがしさを感じなくもないです。ドナヒュー主演の青春映画「パームスプリングの週末」の主題歌ですが、僕が覚えている限り、映画はとことんひどかったです。
Look For A Star
Billy Vaughn
Eight Classic Albums Vol.2
Real Gone
今日のお別れの曲は、ビリー・ヴォーン楽団の「星を求めて(Look for a Star)」です。
この曲は僕が中学校から高校にかけてずっと愛聴していたラジオ関西の電話リクエストのクロージング・テーマでした。だから懐かしいんです。ラジオ関西って、昔はラジオ神戸って言いまして、神戸に局があります。今はどうか知らないけど、僕が十代の頃はだいたい洋楽ばっかりかけていました。関東でいうと、ラジオ関東みたいな感じのAM局だったんです。まだFMが一般的に出てくる前の話です。夜の七時から九時まで、机の上にトランジスタ・ラジオを置いて、ずっとこの番組を聴きながら、勉強みたいなことをしていました。当時の神戸の少年少女たちは、ほとんどみんなこの番組を聴いていたんじゃないかな。そんなわけで、この「星を求めて」を聴くと今でも胸が微かに熱くなります。
今日の言葉はマドンナさんです。

「実際の私はナイス・ガールなの。でもね、とことんビッチになることもできる。私は完全主義者で、いつもプレッシャーを感じ続けている。そしてそれを乗り切るには、時としてビッチにならざるを得ないのよ」

そうか。完全主義者であろうとすれば、ビッチにならざるを得ないんだ。
僕はこの間、キャロル・キングとカーリー・サイモンとジョニ・ミッチェルのバイオグラフィー(伝記)をひとつにまとめた『Girls Like Us』っていう本を読んだんです。女の人がプロのアーティストとして生きていくのは本当に大変みたいですね。だから世の中の、完全を目指す女子の皆さんはマドンナさんを見習って、必要な時にはどんどん遠慮なくビッチになって良いかと思います。えーと、僕はその間、ちょっと席を外してるかもしれませんけど……がんばって下さい。
それではまたこの次に。
今日はみなさんにプレゼントがあります。僕は最近マガジンハウスから『村上T 僕の愛したTシャツたち』というカラフルな本を出しました。僕は実はTシャツのコレクターでうちにあるTシャツの中から150枚くらいを撮影して、それに文章をつけた本を出しました。なんか暇ですね。それを記念してこの本を5冊、サイン入りで差し上げます。それから刊行記念につくったカッコいい「村上T 特製Tシャツ」を5枚差し上げます。どっちが欲しいかを書いてはがきで申し込んでくださいね。お名前はちゃんと書いてくださいね。Tシャツご希望の場合はサイズも忘れなく書いてください。よろしく。

スタッフ後記

スタッフ後記

  • 1960年代前半はアジア初のオリンピックが開催されたこともあり、さぞ騒々しかった時代だったと思いきや、それは東京だけの話で、神戸はまだのんびりとしていて、トランジスタラジオからイノセントな洋楽が流れていたのだなぁと気づきました。僕も、関西の、育ちの良い、ひとりっ子だった男の子になった気分で、(10代は未成年だから)ビールはやめて、コーヒーとドーナツを用意して村上RADIOを楽しみました。(延江ゼネラルプロデューサー)
  • 十代の村上少年が、“Look for a Star”(星を求めて)の曲に胸を躍らせながら「ラジオ神戸」の電話リクエストに耳を傾けている、そんな初夏の光景を想う……歳月が経ち、アメリカ東部の大学プールの更衣室で、小説家はかつてラジオで聴いた“Wonderful World”を思わず口ずさむ。〽“Don't know much about history”。まるで短編小説のようなシーンだ。村上RADIOは、音楽と言葉が僕たちの「(あくまで個人的な)物語の扉」をいつもそっと開けてくれる。その扉は今回、村上さんの部屋にも通じているらしい。(エディターS)
  • 1960年代前半の、青春時代の入り口にいる10代前半だった春樹さんの姿が、アナログレコードの音にのって浮かんできます。明るい気分になる曲ばかり!みんな初恋を思い出しちゃうかも…。熱いコーヒーとドーナツと共に、お楽しみください。(レオP)
  • 今回はオールディーズということで、テンポよく一気に聞けた感じでしたね。先月のステイホームスペシャルに続いて村上春樹さんのご自宅での収録でしたが、特にアナログレコードの音が良い!!と思いました。きっとこだわって選びぬかれたオーディオなのでしょうね!(CADイトー)
  • 村上RADIOを最近聴き始めたという方は、たまに聴こえる「にゃー」「めー」といった鳴き声を少々不思議に思っていらっしゃるかもしれません。あれは猫山さんと羊谷さんです。猫山さんはエッセイ「村上ラヂオ」にも登場する古株です。羊谷さんは村上RADIOから生まれたキャラクターです。ちなみに猫山さんはオスだそうです。羊谷さんもたぶんオスだと思うのですが、確証はありません。今度村上さんに聞いておきます。(構成ヒロコ)
  • 今回の「村上RADIO」は、村上春樹さんが10代の頃に聞いていたパーソナルなオールディーズ特集です。10代に聞いた音楽が大切なことを教えてくれたように、この特集から村上さんが大切にしている何かを感じられたらと思いながら番組を制作しました。イノセントで屈託ない音楽の数々、そして最後に着地する「お気楽さのひとつの達成」の曲に、なぜか救われた気分になります。(キム兄)

村上春樹(むらかみ・はるき)プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。