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21.10.11

岸田新総理の所信表明演説と経済政策

nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。

今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


岸田新総理の所信表明演説と経済政策

吉田:所信表明演説が行われ、いよいよ本格的にスタートをきった岸田新政権ですが、今回はその所信表明演説で語られた中でも、みなさんの関心が一番高いであろう「経済政策」について、神庭さんにわかりやすく解説していただきます。
まずは岸田総理の所信表明演説について、神庭さんはどんな感想を持たれましたか?


神庭さん:はい。およそ30分の所信表明演説の中で「新しい」という言葉を17回使っていて、「新しい資本主義」「新しい社会」「新しい時代」など、路線転換を訴える言葉が多かったですね。実際に「新しい」かどうかは別にして、少なくとも岸田さんが「新しい」ことを重視していて、自分たちを「新しい」と思ってほしいのだな、ということは伝わってきましたよね。
菅さんの所信表明では「新しい」は5回だったので、3倍以上に増えたことになるんですけれど、一方で菅さんに比べて減った言葉もあります。菅さんの所信表明演説を振り返ると「デジタル化」という言葉を7回、「改革」という言葉を16回も使用していたんですけれど、岸田さんは「デジタル化」が2回、「改革」にいたってはゼロだったので、ここは2人のスタンスの差がうかがえるところだな、と思いました。


ユージ:所信表明演説の中でも語られていましたが、多くのみなさんが気になっているのが新政権の経済政策だと思います。「新しい資本主義」の中身はよくわかりませんが、「格差是正」とか「分配重視」についての関心は高いですよね。神庭さんは、経済政策についてはどう見られていますか?


神庭さん:やはり経済政策が気になりますよね。岸田さんは「新しい資本主義」を掲げていて、「成長と分配の好循環」を訴えています。文章を単語レベルに分解する「テキストマイニング」という手法で解析すると、演説の中でも「分配」という言葉を12回使っていたんですね。日経新聞によると、第2次安倍政権の演説で「分配」と口にしたのは1回だけで、しかもそれは、どちらかと言えば否定的な文脈の中で用いられていたものなんです。そして、菅さんに関しては「分配」という言葉は一度も使っていなくて、ゼロなんですね。アベノミクスは、富めるものをさらに豊かにし、そこから滴り落ちる富のしずくで低所得・中所得の人たちも巡りめぐって潤っていく…という「トリクルダウン」という発想だったんですが、一方の岸田さんは、《新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています》《中間層の拡大に向け、成長の恩恵を受けられていない方々に対して、国による分配機能を強化します》と語っているんですね。野党からは「新しい資本主義」に対して「アベノミクスの三番煎じ」なのでは?という批判も出ているんですけれど、分配に対するスタンスはかなり違うのではないかと思いました。


吉田:この「分配」具体的には、どんなことをするんですか?


神庭さん:所信表明では

・新型コロナの影響で苦しむ非正規、子育て世帯などへの給付金
・賃上げをする企業への税制支援の強化
・子育て世代への教育費・住居費の支援
・大学卒業後の所得に応じた「出世払い」的な奨学金
・看護・介護・保育の現場で働く人の収入増

こういったことに言及しています。


ユージ:経済対策が色々出ていますが、本当に実現可能だと思われますか?


神庭さん:そこが一番のポイントですよね。関連して、財務省の現職の事務次官である矢野康治さんが10月8日発売の文藝春秋に寄稿した文章がネット上で大きな話題になっています。そこでは
《最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない》とか
《あえて今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです》
と、非常に強い言葉で財政拡大路線を批判したんです。
財務省は基本的に、支出を減らして税金を上げたい「締まり屋」の官庁なので、内容自体に驚きはないんですけれど、事務方のトップ官僚が、総理の方針にも反するような私見を雑誌で公表するのは異例のことです。しかも鈴木財務大臣は「中身は問題だと思わない」と擁護しており、前財務大臣の麻生さんの了解も得ていたということなんですよ。
…となると、岸田さんはこれをどう受け止めたのか?というのが気になるところでして、岸田さんは以前、自身を「財務省の犬」や「財務省のポチ」と呼ぶ意見に対して「正直言って、何でだろう?と首をかしげている」と過去に否定したこともありましたが、本当に財務省の言いなりにならずに「新しい資本主義」を貫けるかどうか?この事務次官に対しても、注意や処分をするのか、またはそのまま見過ごすのか分かりませんが、そこで岸田さんの“覚悟”というか、本気度が問われるのかなと思いますね。




そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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