23.11.20
日中首脳会談について
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「日中首脳会談について」
吉田:1年ぶりに行われた日中首脳会談。改めて、今回の会談で何が決まったのでしょうか?神庭さん、よろしくお願いいたします。
神庭さん:ほとんど何も決まりませんでした。お互い立場は違うけど、ひとまず話し合いは続けようね、という最低限のラインだけまとまったというのが実際のところです。それだけだと話が終わってしまうので、もう少し詳しく説明すると「戦略的互恵関係」を推し進めようということを再確認しました。これはもともと安倍政権時代の2006年に当時の胡錦濤国家主席と合意して、2008年の日中共同声明に盛り込まれたものです。歴史問題などで日中関係が冷え込んでいた時に、両国の政治的な信頼関係を高めていって、経済面などお互いWin-Winでやっていきましょうということで打ち出した路線です。ここに立ち返ろうという話です。
ユージ:あと、注目されていた水産物の輸入規制などについてはどうでしょうか?
神庭さん:福島第一原発の処理水放出を受けて、中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止しました。10月の輸入総額は前年比99.3%減まで落ち込んでいます。岸田総理は会談で輸入規制の即時撤廃と科学的な根拠に基づく冷静な対応を強く求めたのですが、習近平国家主席は「核汚染水」という実態に合わない言葉を使うなど進展はみられませんでした。中国では2014年に反スパイ法が施行されてから、その翌年からスパイ容疑などでの日本人の拘束が相次ぎ、これまでに17人が拘束されています。この点についても、岸田総理は邦人を早期に解放するよう要求しました。中国は7月に尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)に勝手にブイを設置しました。日本はすでに抗議して即時撤去を求めているのですが、今回の会談でも改めてブイの即時撤去を求めました。岸田さんは総理として言うべきことは言いましたが、結局、中国の具体的な対応は引き出せず、ほぼゼロ回答に終わってしまったということです。
ユージ:国内での受け止め方、反応についてはどうでしょうか?
神庭さん:新聞各社の社説を見てみましょう。まずリベラル系です。朝日新聞の社説のタイトル「日中首脳会談 対話重ね協調の道探れ」という内容で、経済や気候変動など日中両国で一致できる分野も少なくないはずなのに、「互恵」とはほど遠い状態だと分析しています。軍事・安全保障の面では、こんな風に懸念を示しています。「中国は日本周辺での軍事活動を活発化させ、台湾への威圧を強めている。日本も中国を念頭に、防衛力の抜本的強化に乗り出し、日米同盟に加え、豪州やフィリピンなどとの防衛協力を強化している。力の対峙に比べ、緊張緩和や信頼醸成の取り組みは不十分なままだ」と話しています。毎日新聞の見出し「1年ぶり日中首脳会談 戦略的互恵の内実が重要」は、会談に一定の意義を認めつつも、処理水問題や日本人拘束など課題が山積しているとの見方を示しました。ウクライナ戦争や中東での戦闘激化も踏まえ、「東アジアでも緊張が高まる『三正面』の危機は何としても防がなければならない。」と結んでいます。
ユージ:保守系の新聞社はいかがでしょうか?
吉田:読売新聞の社説のタイトルは「日中首脳会談 『互恵』の確認では物足りない」というものです。水産物の輸入停止やEEZへのブイ設置といった懸案に進展が見られなかったと指摘しています。「日中間の『戦略的互恵関係』を再構築する、というのであれば、まずは中国が威圧的な行動や理不尽な主張を改めなければならない」と訴えています。産経新聞も見出しで「日中首脳会談 懸案未解決では喜べない」とハッキリ書いています。「残念ながら、懸案は少しも解けなかった」として、日本人の拘束や東シナ海情勢、処理水問題などで日中の溝が埋まっていないと述べました。日中関係の冷え込みは中国側に原因があると主張して「習主席は軍事、経済力を誇示して我を通そうとする姿勢を改めるべきだ」と締め括っています。
ユージ:各紙の社説を比べてみると、それぞれ対照的なスタンスですね。
神庭さん:ざっくりまとめると「とにかく仲良くしようよ」のリベラル系に対して、「仲良くできないのは中国が悪いでしょ」というのが、保守系の主張かなと思います。
吉田:神庭さんは、どんな感想をもたれましたか?
神庭さん:今年は日中平和友好条約45周年という節目の年で、中身はともかく、とにかく会う、首脳会談という体裁をつくることが優先されたようにも見えます。ただ、何か成果を引き出せるアテもなく、ただただ会うことに何の意味があったのか、という気はします。中国からすると米中首脳会談のついでに、くらいの感じで軽視されている気もします。総理としては、言うべきことは言った。だけど変わらないということは、次は行動で示すしかないと思っています。例えば、中国でブイを撤去する気がないのであれば日本側で撤去するであるとか全面禁輸に対抗してWTOに提訴するなど、もう一歩踏み込んで強い措置を今後検討するべきだと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 20, 2023
テーマは「日中首脳会談」
17日にサンフランシスコで行われた日中首脳会談ですが、
話し合いは続けようという最低ラインの話だけまとまりました。
また経済面などで共存関係となる「戦略的互恵関係」を推進することを再確認しました。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 20, 2023
注目が集まっていた水産物の輸入規制や処理水の放出など、話し合いをするべきポイントは多くあったものの、あまり進展はありませんでした。
ただ、中国側の受け取り方も大事になりますが、日本側が一歩でも踏み込んで、強い姿勢を見せて伝える努力をする必要があると思います。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 20, 2023
また、1年に1回だけではなく積極的に対談のアプローチをかけて、話し合いの場を増やすのも1つの方法だと思います。今後いい方向に話が進むことを望んでいます。#ワンモ