23.11.22
『公的年金』2年連続“目減り”の見通し その理由は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【『公的年金』2年連続“目減り”の見通し その理由は?】
吉田:来年度の「公的年金」の受給水準が目減りする見通しであることが、ニッセイ基礎研究所の試算で分かりました。目減りは2年連続です。「公的年金」は、自営業者らが入る国民年金と、会社員ら向けの厚生年金のことですが、塚越さん、こちらが目減りする理由を教えてください。
塚越さん:まず来年度の年金支給額、額面は増えますが物価や賃金の上昇率よりは上がらないので、実質的に目減りするというものです。「公的年金」の金額は、経済状況の変化に対応して価値=価格を維持するため、毎年度、金額が見直されています。今回の年金額の目減りの理由は、2004年の年金改革で導入された「マクロ経済スライド」という、年金の給付水準を調整する仕組みが発動されるためです。この「マクロ経済スライド」は、年金財政の長期安定を目的に、年金の給付額を物価や現役世代の賃金の伸び率よりも抑制する仕組みです。日本は少子高齢化の影響で、年金受給者は増える一方で現役世代が減ってしまいます。その中で、現役世代の負担が大きくなりすぎないように厚生年金は保険料の上限を18.3%に固定して、給付水準を財源の範囲内に抑えるものです。そうしないと、将来世代の年金給付が大きく減少する可能性があるためです。来年度の年金の支給額は引き上げとなる見通しで、ニッセイ基礎研究所の試算では支給額が2.6%増えます。これは年金が前年の物価上昇率を反映するので、来年度、上昇すれば2年連続で増額改定になります。とはいえ、「マクロ経済スライド」で金額を調整するので、賃金上昇率の3.0%から0.4%引き下げ調整し、年金の給付額は2.6%増にとどまることになります。簡単に言えば手取りは増えるのですが、実質的な支給率は0.4%マイナスになるということで、この実質的な支給率の目減りも2年連続となる見通しです。
吉田:本来であれば、年金額が3.0%増加するはずが、「マクロ経済スライド」の発動によって、2.6%の増加になる。つまり、この0.4%分が目減りするということですか?
塚越さん:そうですね。現実の物価や賃金の上昇と比較して、年金支給額が事実上少なくなるとイメージしてもらえばいいです。
ユージ:わずかな目減りとはいえ、年金を受給する方は困ってしまいますよね?
塚越さん:年金受給層からは、当然、反発があると思うのですが、将来の年金財政を考えたり、また現役世代の負担を考えると、財政健全化と世代間の不公平の改善という側面があります。ただし、年金受給世帯が「相対的貧困」、つまり社会の大多数よりも貧しい状態になる可能性が高まるという側面もあります。1年だけの目減りなら(もちろん苦しい人は多く出るが)相対的に大きな影響ではないかもしれません。これが何年も続くことになると、ますます厳しくなります。
ユージ:年金額が2年連続で目減りすること、塚越さんは、どう受け止めましたか?
塚越さん:「マクロ経済スライド」の発動は2004年の制度導入から2015年、2019年、2020年、そして2023年度にしか発動されていません。来年度(2024年度)も発動されるので2年連続目減りとなるわけですが、さらに続くとかなり厳しくなります。年金受給世代は、それこそ節約と資産の活用の検討が必要ですが、こういう時こそ詐欺のリスクも高まります。そういう意味で、投資であれ、厳しい時こそ、お金の扱いは慎重になる必要があると思います。もう1つ重要なことは、現役世代も年金受給世代も、ともに不満はあります。ここで対立するのは得策ではないということです。特定の年齢層が悪い、という思考になってしまえば、さらに問題が拡大します。現役世代は給付額の下がる年金世代のことを思い、年金受給世代は、金額が変わらなければ、少子化・長寿化の影響で将来世帯がさらなる負担を負うことを思う必要があるのかなと思います。非常に難しいところですが、ユージさん、いかがですか?
ユージ:これが本当に難しいですよ。現役世代がこれから払っていく金額が、例えばこの先その人たちが支給対象年齢になるのは20~30年先になります。その時に今日現在このルールがさらに変わっている可能性があるわけですね。良い方向に変わっているといいですが、見通しが分からないですよね。なので、不安が沢山あるなというのが今の印象です。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 22, 2023
「『公的年金』2年連続“目減り”の見通し その理由は?」について
僕は現役世代でもあり、受給開始できるのが、まだまだ先で、再びルールが改正される可能性もあって何歳になれば年金を受け取れるのか分かりません。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 22, 2023
高齢化社会で受給対象者が増える一方、少子化で支払える方が減っているため、将来を考え出すと、不安になることは沢山あります。年金を払う側にも、受け取る側にも、政府はもっとヒアリングしていく必要があり、将来の安心として本当に受け取れるのかが重要です。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 22, 2023
自分への投資として、頑張って支払っている現状に対し、不安要素が多すぎるため、気持ちの面で、まずは少しでも安心できるような制度があればいいなと思いました。#ワンモ