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23.11.28

労働基準監督署が調査へ、宝塚歌劇団の問題について

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「労働基準監督署が調査へ、宝塚歌劇団の問題について」

吉田:宝塚歌劇団の俳優の女性が9月に急死した問題で、西宮労働基準監督署が、歌劇団に立ち入り調査しました。神庭さん、改めてですが、この問題の経緯を教えて下さい。


神庭さん:宝塚の劇団員だった25歳の女性が今年9月に亡くなりました。自ら命を絶ったとみられています。週刊文春は、背景にいじめやパワハラがあり、女性がヘアアイロンを額に押し付けられて火傷した、「マインドが足りない」「噓つき野郎」などと罵声を浴びていたと報じられました。劇団側は「ご遺族の皆様には、大切なご家族を守ることができなかったことを心よりお詫び申し上げます」と言っているのですが、遺族側の主張とは隔たりがまだあります。


吉田:どういった点が食い違っているのでしょうか?


神庭さん:外部の弁護士がまとめた調査報告書には、ヘアアイロンでの火傷は劇団内では日常的にあること。先輩団員がいじめをしていたとは認定できない。指導や叱責は大声や人格否定などを伴うものではなく、業務上の必要性が認められる。「嘘つき野郎」との発言があったとは認定できない。など、いじめやパワハラ、文春の報道内容を否定する言葉が並んでいます。一方、長時間労働に関しては遺族側の「睡眠時間が午前3時〜6時までの3時間程度だった」という訴えを否定しつつ、一部認めました。報告書には直近1ヶ月に118時間以上の時間外労働があった。20日連続の勤務があった。長時間の活動で精神障害を引き起こしても不思議でない程度の心理的負荷があった可能性がある、と記載されています。


ユージ:外部の弁護士がまとめた調査報告書だと、否定の言葉がある一方で遺族側の話を聞くとかなり激務だったことが分かりますね。


神庭さん:そうですね。報告書によれば、公演や公式稽古以外にも自主稽古公演のためのアクセサリーやかつらの準備関係者との連絡調整などの活動があったそうです。ただ、宝塚では公演や公式稽古以外は「自主的な取り組み」とされ、業務時間を記録、管理していなかった。こうした体制もブラック労働を生む温床になっていた可能性があります。


ユージ:調査に入った労働基準監督署は、どういったことを調べるのでしょうか?


神庭さん:宝塚では入団から5年は労働者としての雇用契約、6年目以降はタレント、個人事業主扱いの業務委託契約となります。亡くなった女性は7年目で業務委託だったのですが、遺族側は実際には労働契約だったのではないかと訴えています。NNNの報道によれば、契約書はレッスンや自己鍛錬によって技能を向上させる出演作品や配役、出演期間など劇団の方針に従う許可なく劇団以外で演技や歌唱をしないなどがんじがらめに縛るような内容だったそうです。これで果たしてフリーランス、業務委託と言えるのか?また、過重労働の時間についても、報告書の月118時間に対して遺族側は2倍以上の「277時間」と主張しています。こういった点について、労基署としても実態を調査していくのではないでしょうか。


吉田:神庭さんは一連のニュースについて、どう思いましたか?


神庭さん:舞台やエンタメの世界では、「ショウ・マスト・ゴー・オン」とよく言われます。「何があっても最後までショーを続けなければならない」という意味です。舞台人としての覚悟、美学だとは思いますが、人の命がかかっているような場合は話が別かなと思います。舞台人である前に、ひとりの人間であり誰かの娘さんですから劇団員の急死について、宝塚歌劇団、そして宝塚を運営する阪急阪神ホールディングスは重く受け止めるべきじゃないかなと思います。


ユージ:やはりそれは当然ですよね、他に課題として考えられることは何ですか?


神庭さん:閉鎖的な同質集団のなかでは、外部の常識とはかけ離れたことが、しきたりやルールとしてまかり通ってしまいます。それに対する異議申し立ても難しい。また、これはエンタメの世界に限らず、日本中どこにでもありますが、先輩後輩の厳しい上下関係のなかでこれまで受けてきた理不尽な仕打ちを、自分が先輩になった時に同じように後輩にしてしまう「抑圧の移譲」というものを、「これは代々続く伝統だから」と正当化の根拠として使われてしまいます。


ユージ:これは声に出して「やめよう」というのがなかなか難しいですよね。どう変えていけばいいと思いますか?


神庭さん:旧ジャニーズがそうしたように、外部の人を呼んで組織を刷新するというのも1つのやり方かなと思います。読売新聞は、阪急阪神ホールディングス・幹部の「『自治』を尊重し、劇団の内部には立ち入ってこなかった」という証言を紹介しています。強い上下関係で結びついた組織を放置して「自主性」に委ねると、ブラックボックス化してますます抑圧が強化される懸念があります。今後はガバナンスを強化して、トラブルが大きくなる前に適切な距離感で介入し、その芽を詰む必要があると思います。


吉田:今回のことをきっかけに膿を出し切る必要があるということでしょうか。


神庭さん:そう思います。宝塚には「外部漏らし」と言って、外部に情報を漏らすことを禁じる掟があったと言われています。劇団には倫理相談窓口があるのですが、大半の劇団員がその存在を知らないという問題点も調査で明らかになりました。これを機に本当に残すべき伝統と、非合理な「掟」をきちんと分けないといけないかなと思います。良き伝統をしっかり守り伝えつつ、悪しきルールはキッパリやめる。そうやって、組織の風通しを良くしていくことが大切かなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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