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23.12.05

全面的にネット販売が可能になる市販薬について

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「全面的にネット販売が可能になる市販薬について」

吉田:厚生労働省の検討会で、市販薬は原則、全面的にネット販売が可能になる見通しであることが分かりました。神庭さん、具体的にはどんなルールになりそうでしょうか?


神庭さん:規制緩和と規制強化の2本立て。まず緩和の方について説明します。前提として、医薬品は大きく3つに分かれます。1つ目は、医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」。2つ目は、医師の処方箋なしでも買える「一般用医薬品」(=市販薬)。3つ目は、医療用医薬品から一般用医薬品に移行したばかりで薬剤師による対面での指導が必須となる「要指導医薬品」です。


ユージ:それぞれによってルールが違うということになるわけですか?


神庭さん:おっしゃる通りです。日経新聞の「市販薬ネット販売、全面解禁へ」という記事によれば、このうち「市販薬」に関しては、既に2014年にネット販売が解禁されており、オンラインの服薬指導も必要ありません。「医療用医薬品」についても、コロナ禍でオンラインでの服薬指導が認められ、去年から医師の処方箋があれば薬局に行かなくても薬を受け取れるようになりました。一方で、リスクの度合いとしてはちょうど中間にあたる「要指導医薬品」だけがエアポケットのようになってしまい、薬剤師による対面販売が義務づけられる「規制のねじれ」が生じていたということです。そこで、要指導医薬品も、薬剤師がビデオ通話で服薬指導をすることを条件にネット販売を認めましょうよ、という案が検討されています。要指導医薬品には、かぜ薬や花粉症の薬もあるため、そうした薬を手早く買いたい人には朗報かなと思います。2025年以降の法改正を目指しているということです。これが2本柱の「規制緩和」の方の施策になります。


吉田:もう1つの「規制強化」は、どういった内容でしょうか?


神庭さん:すでに処方箋なしでネット販売されている市販薬の中には、かぜ薬やせき止め薬がありますが、一部に依存性のある成分が含まれており、若者を中心に過剰摂取、オーバードーズが社会問題化しています。そこで乱用対策として、20歳未満への販売は必要最低限の数・量に限り、大量販売を禁止するという案が検討されています。20歳以上の大人であっても、数や量が多い場合には氏名を記録し、頻繁に購入していないか確認。販売記録を保管するといった対策が検討されています。これはネットでも対面でも変わりません。


ユージ:そうですよね。大量に買うということは良くありませんし、本当に欲しい人に届かなくなるのも困りますよね。このオーバードーズ、具体的にどんな問題が起きているのでしょうか?


神庭さん:国立精神・神経医療研究センターの嶋根卓也さんが厚労省の検討会に提出した資料によると、全国の高校生の60人に1人が「過去1年以内に市販薬の乱用経験がある」と推計されています。市販薬の乱用を経験した高校生の比率は、大麻の約10倍です。薬物依存で治療を受けた10代が主に使っていた薬物を比較すると、2016年の時点では危険ドラッグが48%、覚醒剤が12%で市販薬はゼロでした。それが、2020年になると市販薬の比率が56.7%にまで急上昇しています。


ユージ:何で、そんなに高くなってしまっているのでしょうか?


神庭さん:違法薬物に比べて、心理的なハードルも入手のハードルも低いことが乱用を招いている可能性があります。以前、お話しした新宿・歌舞伎町のトー横キッズ達が処方薬をいちごミルクに溶かして飲んだり、市販薬を大量摂取したりして、泡を吹いてバタバタ倒れているのですが、「高校生の60人に1人」という数字が示す通り、実際にはトー横キッズのような目立つ子たちだけでなく、いわゆる「普通の子」たちの間にも広がり始めている可能性があります。若い女性がすごく多いですよね。


吉田:今回の見直しや、規制強化でオーバードーズ対策は出来るものでしょうか?


神庭さん:一定の効果はあると思いますが、やはり、限界もあります。元々、ネット販売よりも薬局の対応が緩くなりがちと言われていました。乱用の恐れがある医薬品を複数個購入しようとした際の対応を調べた厚労省の調査があるのですが、それによるとネットの方は82%が「1つしか購入できなかった」「購入せずに医者を受診するように勧められた」といった適切な対応を受けていました。これに対し、リアルの薬局の方は適切に対応できた店舗が47.1%にとどまりました。ネット販売の場合、年齢や身元、過去の購入履歴などを把握しやすいですが、薬局ではなかなか難しい面があります。


ユージ:薬局の方が緩いというのは意外でした。どう対策したらいいのでしょうか?


神庭さん:現状だと、薬局を何店も回って1箱ずつ購入されるとお手上げになってしまいます。例えば、薬の購入履歴とマイナンバーを紐づけて、過剰摂取が疑われる人には薬を売らずに、医療機関の受診を勧めるというのも一案だと思います。それだと、薬局巡りをして薬を集める人にも対処できます。個別に薬局の店員さんや薬剤師さんに「しっかり見てくださいよ」と精神論で対応を求めても現場の負担感が増えるだけで難しいです。ムダに規制を強化すると、普通にかぜ薬を買いたい人にとっても迷惑な話になります。技術面でクリアできるなら、それが一番いいかなと思います。そして、ある市販薬、ある成分を狙い撃ちにして規制強化しても、イタチごっこになってしまうので根本となっている生きづらさを抱える若者のケアをしっかりやっていくことが大切だと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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