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25.03.18

富士通が新卒一括採用を廃止へ。この流れは他社にも広がるのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーター引き続き、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「富士通が新卒一括採用を廃止へ。この流れは他社にも広がるのか?」

吉田:富士通が2026年度から新卒一括採用を廃止すると発表しました。新卒と中途を区別せず、年間を通じて採用する形に改める方針です。そこで、今朝は新卒一括採用のメリットやデメリット、廃止の影響を考えます。神庭さん、日本の企業は長らく、新卒一括採用を行っていますが、まずメリットはどこにあるのでしょうか?


神庭さん:企業側から見ると、安定的に人材を確保できて、若手からベテランまでバランスのいい年齢構成を維持できるということです。中高年ばかりの会社になっては困るので、若い人に入ってもらって、組織を新陳代謝しないといけないということです。


吉田:そもそも新卒一括採用はいつから行われているんですか?


神庭さん:大卒社員の定期採用は、一説には明治時代に財閥系企業が始めたと言われています。戦後の高度経済成長にかけて広く定着し今の形になりました。実は世界でも珍しい形です。日本型雇用の三種の神器は「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」と言われています。まっさらな新人を企業が「俺色に染まっちゃえよ」と育て上げていくわけです。いろんな部署や役職を経験させながら、オールラウンダーに育てていくには、新卒一括採用の仕組みは非常に便利です。学生側からしても、新卒ボーナスがあることで、ある意味、下駄を履かせてもらえます。実際の能力で比べたら当然、経験者には及ばないけれども「この子はきっとポテンシャルがある。社内で育てよう」と採用してもらえます。卒業後の就職先が保証されるというのは安心感があります。


ユージ:そう言う意味では「俺色に染まっちゃえよ」も良いなと思う部分もありつつ、一方で新卒一括採用のデメリットもありますよね?


神庭さん:ミスマッチが起きがちなことになります。就職して3年以内に辞める人の割合は、大学の新卒で34.9%。過去10年間でもじわじわ上昇しています。自分の適性、向き不向きを深く考えることなく、ベルトコンベアに乗るように就活して就職した結果、「思ってたのと違う」と早期離職に繋がります。企業側も一括採用と育成にかなりのコストをかけているので、一生懸命育ててようやく戦力に…というところで辞められてしまうのは大きな痛手です。あとは、先ほど「新卒ボーナス」と言いましたが、その裏返しで、人生のある一時期にチャンスタイムが集中し過ぎているせいで、そこを逃すと途端に厳しくなるという弊害もあります。最近は就職して2~3年の「第二新卒」でもだいぶ転職しやすくはなっていますが、それでも新卒に比べるとやはり中途の方が不利です。他にも、個人の努力では何ともしようがない不景気の影響で、就職氷河期世代やリーマン・ショック世代のような悲劇が生まれることもあります。


ユージ:この新卒一括採用を見直す動きが出ている背景には何があるんでしょうか?


神庭さん:日本社会全体として、人に値札がつく「メンバーシップ型雇用」から、仕事に値札がつく「ジョブ型雇用」にシフトしつつあることが大きいです。あまりいい考え方ではないですが、どうせ3年で辞めるなら、0から育てるよりも、既に何処かで育った人を引き抜いたほうがいいです。即戦力なのでそういう割り切りもあるかもしれません。新卒一括採用を廃止しないままでも、徐々に脱却する動きは広がっていて、日経新聞によれば、2024年度の採用計画に占める中途採用比率は過去最高の43%に達しました。メガバンクの採用計画でも中途比率が5割に迫っていますし、総合商社も中途採用を増やしています。


吉田:こういった新卒一括採用の廃止の動きについて、神庭さんはどう見ていますか?


神庭さん:先程言った「終身雇用」「年功序列」が崩壊しつつあります。出口が揺らいでいるということは当然、就職することが結婚するとかマイホームを買うということよりは、何となく車を買うとかスマホを買い替える状況になってきています。ジョブ型が広がって年功序列がなくなるということは、年齢・世代で差別されず、能力や仕事内容で平等に評価されるということですから、大きな方向性としてはいいです。富士通の場合も大半の新卒は年収550万円~700万円程度の見込みですが、専門性があれば1,000万円も狙えるそうです。あとは高校・大学を出てすぐ会社に入るのではなく、ギャップイヤーをとって社会活動やボランティア、留学をするなどを考えると若者の生き方の選択肢も広がるのかな?と思います。


ユージ:確かにそうですね。ただ、一括採用を辞めることによる課題もありますよね?


神庭さん:もちろんそうです。副作用もきちんと考えないといけません。新卒一括採用が廃止されれば、学生はピカピカの新卒カードを失って、中途社員と同じ土俵で戦わされます。当然、就職できなくなる人も出てきます。日本は、世界でも若年失業率が低い国ですが、失業率が上がると、経済だけでなく治安などにも影響を及ぼします。なので、一気に廃止に舵を切るよりは、できる会社から無理なく段々に変化していくのが良いと思います。企業側は、もっと中途採用を強化すべきです。新卒一括採用にこだわり過ぎず、例えば「バックオフィスは新卒を中心に採って、営業職は即戦力を中途採用しよう」とか、部署やグループ会社によって採用方針を変えてもいいです。「新卒で就活に失敗したら一発アウト」みたいな世界線から、セカンドチャンス、サードチャンスもある柔軟な労働市場を目指すべきじゃないかな?と思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。



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