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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.03.20

SNSの誹謗中傷対策、情報流通プラットフォーム対処法

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【SNSの誹謗中傷対策、情報流通プラットフォーム対処法】

吉田:SNS上の誹謗中傷に当たる投稿を巡り、事業者に迅速な対応を義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」が来月、4月1日から施行されることが決まりました。そこで今日は、「情報流通プラットフォーム対処法」について塚越さんと考えていきます。


塚越さん:これまでも同様の法律はあったのですが、今回はネット上の誹謗中傷、権利侵害情報への対応などをさらに強化するもので、施行は今年の5月とみられていましたが、先週の閣議で4月1日からの施行が決定しました。また総務省が指針を公表しており、SNSでの不適切投稿に対する、事業者側(つまりXやメタ社)の対応などが示されています。


吉田:どんな投稿が削除の対象になるのでしょうか?


塚越さん:やはり個人の権利侵害としては、名誉やプライバシーの侵害、著作権や肖像権などが削除の対象になっています。ほかにも、権利侵害には当たらないけれども削除すべき「違法情報」という種類を示すガイドラインも公表されています。例えば闇バイトだったり売春といったものがあり、メタやXといった事業者は、具体的な削除の基準を策定することになります。


吉田:では、SNS事業者には、どんな対応が求められるのでしょうか?


塚越さん:一言でいえば「削除のルールを強化してください」というものです。事業者は、これまで以上の削除要請窓口の整備だったり、大きなSNSサービスには、「偽情報調査専門員」として、法律の専門家などを1人ずつ配置すること。また削除要請した人には、7日以内に対応を通知すること、さらに年に1回は、削除した件数など、運用面の公表が義務付けられます。巨大IT企業には、「透明性レポート」といわれる運用面などを公開するところもありますが、大枠でいうとそうしたレポートを出させて毎年評価するということですね。こうしたことが適切に実施されず、勧告しても改善しない場合、最大で1億円の罰金となります。


ユージ:今回の「情報流通プラットフォーム対処法」、塚越さんはどう思いますか?


塚越さん:いろいろな議論がありますが、法律で特に重要だと思う課題は「第三者からの削除要請」にあると私は思います。どういうことかというと、これまで誹謗中傷投稿の削除要請は基本的に、「被害者本人からの要請」によるものでした。しかし、今回の運用ガイドラインには、被害者以外の第三者からの削除要請についても「速やかに対応を行うのが望ましい」としています。
例えば、被害者の家族や弁護士等が被害者に代わって削除要請するなら被害者救済になります。しかし昨今のSNSをみていると、例えば選挙の時に、対立候補の投稿を「誹謗中傷」といって、支援者という名の無数の「第三者」が削除要請したらどうなるでしょう?削除要請をする人は被害者のためを思ってすることだとしても、結局はお互いの陣営が削除要請をし合って対立がエスカレートする可能性があります。もちろん、削除要請を有力政治家が煽ったりすれば権力の濫用にもなりかねません。特に政治分野では、リスクがあると言わざるを得ません。ですので、SNS規制が問題というより、法律の悪用・濫用の可能性が問題なのかなと思います。
政治だけでなく有名人だったり、特定の分野で炎上した人など、気に食わない投稿を過剰に「誹謗中傷」として削除要請が第三者から乱発されると非常に厳しいですし、そうなると今度は、プラットフォーム側が問題を判断しなければなりません。もちろん、今も差別的な投稿などについて常に判断しなければならないわけですが、政治的なイシューだったりすると、非常に慎重な態度が必要になるわけです。第一期政権の頃のトランプ大統領とSNS事業者の間で争いがずっとありましたよね。何を削除する・しないかには非常に難しい判断があるので、第三者からの削除要請をOKにすると事業者の負担が一気に増える可能性もあります。


ユージ:「情報流通プラットフォーム対処法」は、社会にどんな影響を与えるでしょうか?


塚越さん:被害者救済という意味では、私を含め、ほとんどの人が賛成できるものだと思いますが、話してきたような「第三者による要請」というのは課題はあります。理念自体はいいのですが、一気に社会的混乱が広がる可能性があります。私は被害者の家族や弁護士など、限られた人にまずは第三者を限定して、法律の運用をみながら柔軟に変えていく必要があるのかなと思います。法律よりも社会の動きが早いので、法律の穴を使って混乱が生まれる可能性があるので、時間はかかりますがゆっくりみていくことが社会的には求められると思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。







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