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25.04.17

トランプ関税で改めて考える日本とASEANのパートナーシップ

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「トランプ関税で改めて考える日本とASEANのパートナーシップ」

吉田:国際関係の不透明感が増す中、アメリカや中国の間で中立を保ちつつ、順調に経済発展を続けているASEAN(東南アジア諸国連合)は、日本にとってもビジネスや政治、文化など、多くの分野で密接な関係を構築してきた重要なパートナーです。そこで、トランプ関税で世界が揺れる中、改めて日本とASEANの関係に注目していきます。


ユージ:塚越さん、まず、改めてASEANについて教えてください。


塚越さん:よく聞く言葉ですよね。ASEANは「東南アジア諸国連合」という東南アジア10カ国による地域共同体です。加盟する国を挙げていきますと、「インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス」の10カ国です。設立は1967年、もう少しで60年を迎えます。EUのように共通通貨はないのですが地域協力を行っている強い共同体です。ASEANの人口をすべて合わせるとおよそ6億7,000万人で、世界人口全体のだいたい8.6%。さらに平均年齢は、30歳強と若く、伸び率は今までほどではないですが、今後も数十年は人口が増えると考えられます。2030年頃になると、GDPの規模が日本に迫るといった試算もありますし、近年は高い経済成長をみせていて、世界経済の中でも注目されているのがこのASEANです。


吉田:では、日本とASEANの関係は、いかがですか?


塚越さん:東南アジアは近いですし、日本とASEANは1973年に合成ゴムの交渉からはじまり、2023年には友好協力50周年を迎えるなど、結びつきは強いですね。実際、日本からの貿易の輸出先としては、時期や調査にもよりますが、中国やアメリカ、EUに次いでASEANは第4位、場合によっては3位になることもあります。逆に、ASEANからの輸出先としても、日本は同じく3位や4位などになります。また、海外進出する日本企業の3割はASEANに進出して、2012年から2021年の製造業への累積投資額になると日本が首位となっています。かなり結びつきが強いということです。これは重要なので、来月に岸田前総理がインドネシアとマレーシアを訪問して、脱炭素と経済成長を両立するための構想について首脳と会談を行います。この構想は岸田さんが総理時代に提唱していて、その後も活動を続けているものです。他も超党派の議員連盟も、きのう自民党の萩生田光一新会長のもと会合を行なっています。


ユージ:ASEANは、今回のトランプ関税でどんな動きを見せていますか?


塚越さん:トランプ関税は日本も大変ですが、東南アジアはもっと大変ですよね。日本の関税は24%ですが、カンボジアだと49%、ベトナム46%。これを筆頭にタイやインドネシアも30%台となっています。これASEAN全体の輸出のうち、アメリカは2023年の時点で15%と多くて、これはASEAN諸国同士と、中国に次ぐ規模になっています。アメリカへの輸出がうまくいかないとなかなか厳しいということになります。現時点ではASEANとしてはアメリカへの報復関税はしないということで一致しています。日本と同じく、これからいろいろな交渉があります。一方で、苦境に立たされたASEANに向けて、さっそく中国が動いています。14日から習近平国家主席がベトナムとマレーシア、カンボジアの3カ国を、順番に訪問しています。興味深いのは、中国が自由貿易をとても大事にしていると主張している点ですね。自由の国アメリカが保護貿易になっていて、社会主義の中国が自由貿易を推進するという何とも言えない状況になっています。ASEANとしても、中国との関係はとっても大事ですし、もっと協力したい。一方で、中国にいい顔をしすぎるとアメリカのトランプ氏の機嫌が悪くなるということで、バランスが求められていますね。


吉田:そんなASEANで、今、注目されている産業は何でしょうか?


塚越さん:多岐にわたりますが、エレクトロニクス(電子工学)製造の拠点になっている国として、ベトナムやマレーシア、タイがあり、日本企業も進出しています。また、タイとインドネシアは自動車産業の集積地で、トヨタやホンダが現地生産輸出拠点となっています。東南アジアはこれまで、トヨタなどの日本車が強かったのですが、近年は一気に中国(BYD)が入り込んできているので、日本も力を入れるべきところですね。他にもたくさんありますが、私が注目するのはAI関連です。去年5月の調査では、職場で生成AIを使う社員の割合がタイとインドネシア、インドが92%で世界1位です。若い人はみんな使っています。日本は32%で、日本と比べると生成AIを沢山使っているので、その辺りの分野で協力できるかなと思います。


ユージ:重要なパートナーであるASEANと日本、これからはどうなっていくと考えますか?


塚越さん:ASEAN諸国の人たちにとって、日本のイメージが良く、色々な調査でも出ています。やっぱりこれから緊密な連携が必要になっていきますし、日本は人口減少になっていくので今まで通り安い賃金で働かせるということではなくて有効的に来ていただいて働いてもらうことも必要になります。そうすると、我々もASEANのことをもっと知っていくことを意識した方がいいのではないかと強く思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。


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