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25.07.14

待機児童ゼロの裏で保育園の倒産が急増、保育士不足の背景は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「待機児童ゼロの裏で保育園の倒産が急増、保育士不足の背景は?」

吉田:今年に入って保育園を運営する事業者の倒産が急増しています。帝国データバンクによれば、上半期の保育園運営事業者の倒産や休廃業・解散による閉鎖は22件に達し、前年同期の13件から大幅に増えています。そこで、保育園倒産の背景について神庭さんに解説してもらいます。


神庭さん:何で、保育園の倒産が相次いでいるのか?ですが、まず1つ目は少子化です。2024年の出生数は68万人余。ものすごい勢いで子どもが減っています。保育園は早ければ0歳から預ける人もいます。大学や高校などと比べても、少子化の影響が一番早く、直接的に出てくる業態と言えます。国を挙げて待機児童の解消に取り組んできて、実際に多くの自治体で待機児童ゼロになりましたが、皮肉なことに子どもの獲得競争が激化して、定員割れに陥る保育所も出てきました。評判のいい園、駅に近い便利な園などに人気が集中する一方で、立地が微妙で特徴に乏しい園は苦戦を強いられています。年度途中で保育園が閉園すると、共働き家庭やシングル家庭は働けなくなってしまうので、死活問題です。


吉田:他にはどんな原因がありますか?


神庭さん:2つ目は、インフレです。給食の食材費はじめ、あらゆるコストが上昇しています。そして3つ目が、保育士の人手不足です。少子化、インフレ、保育士不足のトリプルパンチになっています。1人の求職者に対して、どれくらいの求人があるかを示す有効求人倍率は、保育士の場合、全国平均で3.78倍あります。それだけ人手不足で、保育士の奪い合いになっているということです。実は保育士の資格を持っている人は167万人と沢山いますが、このうち実際に保育の仕事に就いているのは64万人にとどまっています。100万人以上は、資格はあるが現在は保育を離れている潜在保育士の方々ということです。


吉田:どうして多くの保育士さんが、辞めたまま戻ってこないのでしょうか?


神庭さん:待遇や職場環境の問題が大きいです。保育士に退職理由を聞いた東京都の調査では、「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」といった声が多くを占めました。「人手不足」というのは都合のいい言葉で、要は安いお金で馬車馬のように働いてくれる人が不足している、という話です。保育士さんは子どもの成長を間近で見守るエッセンシャルな職業ですが、待遇が仕事内容に見合っていないことが最大の問題かなと思います。


吉田:てぃ先生も現役の保育士ですが、ここまでのお話どうですか?


てぃ先生:こんなことを言いたくありませんが、本当に国が悪いと思います。今まで散々やりがい搾取という形で保育士を馬車馬のように働かせてきて、未だにやりがいだけで人を入れようとしている状態なので、ちょっと難しいと思います。


吉田:では、その保育士不足を改善するための対策として神庭さん、いかがでしょうか?


神庭さん:経済同友会は外国人保育士を受け入れたらいいじゃないかと言っています。これには批判も多いです。てぃ先生はどう思われますか?


てぃ先生:先ほど、外国人の話がありましたが、外国人=ダメと言っているわけではありません。まず、日本人の保育士をちゃんとしようよ、待遇面も労働環境も含めて、そこをしっかりやってくれたうえで、外国人保育士の受け入れ拡大をすることに受け入れられますが、そこをしないまま日本人は賃金をあげなきゃいけないから面倒くさい。じゃあ、外国人の安い方を使おうという発想が僕はいただけないなと思います。


吉田:そこをちゃんとすれば、もっとやりたいという方も増えますよね。


てぃ先生:本当にそうですね。


神庭さん:本当におっしゃる通りだと思います。外国人保育士に加えて、最近注目されているのが「スキマ保育士」です。短時間だけ働くスポットワーク、スキマバイトが流行っていますが、その保育士バージョンです。なかには履歴書の提出や面接・研修もなしで、いきなり保育現場で働くケースもあるそうです。保育士の病気など急な欠員で、スポットワークに頼ることはあり得ますが、それが常態化している施設もあるということです。毎日のようにくるくる先生が変わったら、子どもも戸惑うと思います。保育事故が起きないか?と保護者の方も不安になります。こども家庭庁も《1~2日程度の短期雇用を長期かつ継続的に繰り返すことは、保育所等の運営に当たって、望ましくない》と注意喚起しています。


吉田:保育士不足への対策、本当に必要なことは何でしょうか?


神庭さん:潜在保育士の方のなかには「もっと賃金がもらえるなら復帰したい」「パートのような柔軟な働き方をしたい」と考える人も少なくありません。ですから、やれ外国人保育士だ、スキマ保育士だと安易な人集めに走る前に、待遇アップや職場環境の改善など本質的な対策に目を向けるべきかと思います。「ノンコンタクトタイム」といって、保育士が子どもから離れる時間を設けるのも大切です。その間に事務作業を効率的に処理できますし、ノンコンタクトタイムの導入で保育士のストレスが軽減された、離職率が下がったという報告もあります。デジタル技術をどんどん導入して、お昼寝中の子どもをセンサーで見守るなど保育テックを積極的に活用するのも1つの選択肢かなと思います。


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