25.07.16
Googleの機能『AIによる概要』で生じた“副作用”参照元のサイトにアクセスする人が激減
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【Googleの機能『AIによる概要』で生じた“副作用”参照元のサイトにアクセスする人が激減】
吉田:読売新聞によりますと、アメリカのGoogleの検索サービスで検索結果をAI=人工知能が要約して表示する機能「AIによる概要」が波紋を呼んでいます。便利な機能ですが、基になる情報を提供するウェブサイトへのアクセスが激減する“副作用”が起きている、ということです。塚越さん、まずはGoogleの「AIによる概要」について、詳しく教えてください。
塚越さん:はい。Googleは去年8月に「AIによる概要」という機能を日本ではじめました。例えば「パソコン タブレット 違い」というワードを入れると、検索の最初に概要を教えてくれます。また、「東京で子連れにおすすめのレストラン」と入れると、港区や渋谷区のおすすめレストランが出てきます。これは、Googleが検索して出てきたサイトの情報を先回りしてAIが読んで、要約して伝えてくれるもので、つまり「AI要約」機能ですね。ChatGPTのような生成AIに近い使い方ともいえるもので、非常に便利です。もちろん、生成AIの問題と同様、回答は間違えることもあるので、その点は注意が必要かと思います。便利なのは便利です。ただ、今回問題になっているのは、AIの回答だけで満足するユーザーも多く、参照元のサイトをクリックする人が減ってしまうことです。これ「ゼロクリック検索」と問題になっています。
吉田:私も便利だなと思って、それを読んで調べず終わっちゃうこと結構あります。この「AIによる概要」によって、副作用が生じているということですね?
塚越さん:そうなんです。簡単にいうと、せっかくサイトをつくっても、クリックされないで情報だけGoogleが取っていってしまうということです。実際、読売新聞が取材した記事によると、都内のIT関連企業の社長は、アクセスが1万件以上減ったページがあると答えています。また別の専門家は、AIによる概要が導入されてから、辞書などの情報を提供するサイトを中心にアクセスが減る傾向にあるということです。また海外の報道では、世界で最も訪問される500サイトのアクセスが、前年比で27%減少したというデータもあり、AIによる概要機能の影響が指摘されています。
澤原:僕もよくAIの概要だけ読んで知った気になります。なかなか当たらない経験がありますが、ウェブサイトへのアクセスが減ると、サイト運営者の利益も減っていくことになるのでしょうか?
塚越さん:そうなんです。一番大きい問題は、サイト運営者の広告収入が減ることです。サイトに表示される広告は、サイト運営する人にとって重要な収入源ですよね。ただ一番問題なのは、そういった運営の人ですが、実はGoogleにとってもダメージが大きいです。というのも、Googleも広告を仲介するサービスをしていて、検索してサイトに行くと、Googleが仲介した広告がそのサイトで表示されます。なので、Googleも広告手数料を受け取れる仕組みになっています。でも今回のようなAI要約が出てくると、サイトに誰もいかなくなります。まず一番ダメージを受けるのはサイト運営者です。Googleに無料で情報を与えて、広告収入がなくなります。ウェブ広告の分野で大きなシェアをもっているので、長期的には広告手数料が減り、稼ぎ頭の広告収入が減ることになります。ではなぜGoogleが自分に不利になることをするのか?というと、やっぱりChatGPTのような生成AIとの競争の中で、検索を簡単にしないとシェアが奪われちゃう危機感があるということ。もっと前から検索の分野でいうと、XやInstagramで検索する方が多く、牙城がずいぶん崩れてくるということもあります。Googleは、危機感を持ってこういったAI要約をやっているということです。
澤原:なるほど。「ググる」という言葉が死語になるとよく言われていますよね。「AIによる概要」で生じた“副作用”。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越さん:Googleの屋台骨みたいなところですね。結構、潰れちゃうことになるので厄介ですが、苦肉の策でGoogleは色々なことをやっています。実際、Googleは去年1年間の検索が、若干1.4%ほどですが減っているデータもあります。一方でChatGPTのアクセスは67%増えた、というデータもあります。このあたりGoogleも色々考えないといけません。それを見ても、基本的にサイト運営者が自分たちの作った記事やニュースサイトも含めてクリックされなかったら収入になりません。ウェブサイトの情報が減れば、AIにとっても問題になります。データが枯渇することになるので、最終的にはある程度、サイト運営者、ウェブの情報を作っている人にもお金がいくようなこと。ニュースサイトも含めて、SNSの頃にもそういった議論がありましたが、ますます生成AIが増えていく中でちゃんと報酬があげられるような、みんながwinwinになるような制度をこれから作ることが必要です。ウェブの生態系が壊れていくことを考えないといけないなと思います。
そして、今日のコメントはこちら。
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— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 16, 2025
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