23.08.30
福島第一原発の廃炉 難関は「デブリの取り出し」
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の城西大学 助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら！
【福島第一原発の廃炉 難関は「デブリの取り出し」】
吉田：東京電力は先週木曜、福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出を開始しました。西村経済産業大臣は「廃炉に向けた大きな一歩を踏み出した」と話しています。ただし、廃炉には「デブリの取り出し」という難関な作業が待ち受けているということです。塚越さん、「デブリ」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越さん：デブリとは、原発事故で原子炉から溶けた核燃料が金属やコンクリートと一体化した物のことです。福島第一原発の事故当時、1号機〜3号機は運転中で、原子炉は自動停止したものの、燃料を冷やすための電源が津波でなくなってしまったので、原子炉内の構造物と燃料が溶けて、それが固まったものがデブリです。このデブリは、強い放射線を発生させるので危険なので、原子炉内に人が簡単に入ることはできないです。また、そのままだと温度が上がって爆発等の危険があるため、温度を下げるために冷却水を流しますが、他にも雨水や地下水が流れてきて、デブリ等に触れることで、いわゆる「汚染水」が発生。昨年度は汚染水が毎日90トン増えている状況です。地下水が入らないように、建屋の地下に氷の壁＝凍土壁を作ろうとしたり、建物周辺の地下水をくみ上げようとしたりで、汚染水の量自体は減少傾向にありますが、完全ではないです。結局、デブリを取り出さなければ、汚染水は増え続けることになります。
吉田：福島第一原発の「デブリ」、今、どのような状況なのでしょうか？
塚越さん：1号機〜3号機でそれぞれ量に違いがありますが、推計だと全体で880トンあるとされていますが、全貌は見通せていない状態です。
ユージ：「デブリの取り出し」、難関な作業と言われていますが、どのようなところが難しいのでしょうか？
塚越さん：まず、放射線量が非常に高いので、人は近づけない状況です。なので、取り出し作業は機械を使った遠隔操作になります。取り出し作業は、イギリスの企業や三菱重工業などが開発するロボットアームを使って、今年度の後半、つまり9月以降に2号機から着手する予定です。ただ、東京電力などによれば、1回目で取り出すのはわずか数グラムです。安全な運搬、保管の方法も決まっていないです。ただし、国の専門機関の委員会は原子炉に充填材を流し込んで、燃料デブリごと固めて砕くなどして取り出すなど、いくつかの方法を提示しています。なので、具体的な作業方法が固まってくれば、今後は燃料デブリを大規模に取り出せるかもしれないです。とはいえ、現状は取り出せても数グラムのデブリを最終的に推計880トン取り出して、さらに保管場所や方法も考える必要があります。当然、作業途中で新たな課題も出てくると考えられます。東電は、廃炉まで30〜40年かかるとしています。つまり、2011年の事故から数えると、2041年〜51年。これでも長い時間ですが、本当にそれまでできるかと言われるとやはり疑問も残ります。このように考えると、今回の処理水の問題も大きなものですが、廃炉全体で考えれば途方もない作業が待ち受けていることになります。
ユージ：「デブリの取り出し」について、塚越さんはどのようにご覧になっていますか？
塚越さん：先程は技術的な課題や時間の問題を話しましたが、他にも費用の面も大きな課題です。政府はデブリの回収に6兆円、廃炉全体で8兆円という費用試算を2016年に公表しました。たくさんの課題や単純に物価高で価格も上がると思います。もちろん、今後の技術発展でより簡単で安くなる方法も出てくるかもしれませんが、それをどう取り入れるか等、今後も議論が必要です。こうした議論は専門家だけでなく、私たち一般の市民も知る必要がありますが、原発関連の話題は専門的で難しいですし、10年以上が経ち、人によってはもう考えたくない人もいます。でも、これは私たちの問題でもあるので、専門家に丸投げするだけではなく、民主国家としてみんなで考える必要があります。そうでないと国民的「合意」ができないため、後になって問題が大きくなったり、課題が出た時により大きな混乱があるので、メディアとしても報道する必要があります。今回の処理水の問題も、やはり議論を事前にもう少しすべきでしたし、不十分な部分がありました。中国をはじめ、国際問題もありますが、国内でも合意や話し合いや他にも方法があると思います。処理水の問題もまだ別の方法があったのでは、と指摘もありました。「忘れたい」という気持ちもあるかもしれませんが、関心を持ち続けるべき問題だと強く思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
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— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 30, 2023
『福島第一原発の廃炉 難関は「デブリの取り出し」』について
原発事故で溶けた核燃料が、金属やコンクリートと一体化したものをデブリと言います。汚染水の原因にもなっている、デブリを取り出すための運搬方法や保管方法が決まっていないことに驚きました。…
#ユジコメ��
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 30, 2023
また、デブリを取り出せたとしても、その保管場所が原因で、風評被害にあってしまう方が増える可能性は高いです。保管の方法・場所が決まらない限りは、次のアクションを起こすのは、非常に慎重になる必要があると感じました。#ワンモ
