プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

今日は、この番組で継続して取材している鎮守の杜のプロジェクトの活動レポートです。
場所は、福島県南相馬市。こちらでは東日本大震災以降、「鎮魂復興市民植樹祭」という、植樹イベントを続けています。これは、東日本大震災で被害を受けた沿岸部を中心に、地域とくらしを守る防災の森を作る『鎮守の杜プロジェクト』と南相馬市が続けているもので、南相馬市では震災以降これで4回目の植樹となります。
今回の植樹会場は南相馬市の海沿い萱浜です。会場には、地元の方はもちろん、全国からのボランティア合わせておよそ2000人が集まり、まずは、森づくりに必要な植樹の指導を受けました。

◆東京農大鈴木先生の植樹指導
今日はこれからみなさんに植樹をしていただくわけですが、だいたい一人で10本くらいずつ植えてもらうことになると思います。たくさんの木を植えることによって、木が競争しながらすくすく育つという、密植方式といいますが、今日植える木はここに並んでいるタブノキやスダジイなど、だいたい21種類植えてもらいます。
ここは寒い地域なのになぜ常緑の木を植えるのかということがいわれることがあります。ですが、私たちはこの地域を調査して、東北地方でも海岸沿いは常緑の木が育つ、この木がふるさとの森をつくる構成種であるということがわかっています。ただ、寒いところですから、植えた年は少し茶色がかったり、枝が枯れたりすることがあります。でも、冬をこすことができれば、翌年にはまた新しい芽が出て非常に素晴らしい森になっていくと思います。


鎮守の杜プロジェクトで植樹指導を担当されている、東京農業大学短期大学部 環境緑地学科 鈴木伸一教授のお話を受けて、いよいよ、2000人による植樹がスタート。今回はおよそ3万本の苗木が、海沿いに作られたほっこらした盛り土の丘に、優しく植えられました。
南相馬市は、東日本大震災と津波で636人の命が奪われ、植樹会場となった原町区では、187人の方々が津波の犠牲となっています。お知り合いが津波で亡くなった…という方もいましたが、本当にみなさん、苗木に、色んな想いを込めているんですよね。

そして、すでに市民運動として、毎年の恒例行事になりつつあるこの植樹祭。個人のボランティアだけでなく、地元の企業が一体となって参加するケースも本当に増えています。

◆植樹に参加した地元企業の方のお話
藤倉ゴム工業株式会社といいます。ここ南相馬市原町区にあります。植樹には最初から参加しているので4回めです。やっぱり復興を願っての参加です。従業員には家族や親族が犠牲になった人もいますし、自宅を流されたりしていますが、みなさんいろいろ辛い思いもしているんですが、下ばっかり向いているわけではなくて、一日でも早い復興を願う強い意志を持っています。やっぱり地元に対する愛、松林があって、きれいな海があって、色んな人が出入りできるような海って必要だなって思います。


最後に、会場で参加者と一緒に植樹をしていた南相馬市・桜井勝延市長のお話です。

◆南相馬市・桜井勝延市長
南相馬市は、合併前の原町市のときから宮脇昭先生と協力して植樹祭をしてきましたので、今年で14〜15回めくらいになると思います。そうすると、最初の頃に植えた木はもう見上げるほどの高さになっています。これからもずっと継続していくつもりです。
本当に多くのみなさんが、企業ぐるみでも参加してもらっていまして、今回は東北電力、東京電力のみなさんにも参加してもらっています。復旧、復興について、責任の所在を追求するだけじゃなくて、みんなが一緒に新しい社会をつくっていくっていう意味でも、こういう作業を一緒に続けることは大事だと思います。
20km圏内には当時14,000人がいて、避難指示を受けましたが、今年の7月12日に解除されて、同時に常磐線も原ノ町駅から小高駅まで乗り入れてもらいましたし、日に日に進んできています。まだ避難指示区域が解除されたといっても、日中夜いるひとは一割ちょっとなんですが、それでも市内全体で暮らしている人たちは45パーセントくらいまできましたので、ある意味ではみんなが前を向いてきているのかなと思っています。
今年は県と国の方からの支援も受けて、この萱浜地区をロボットテストフィールドということで、ドローンや災害ロボットの実証テスト基地になるんです。すでにいろんな企業が設備を使いたい、共同研究施設を利用したいという話になっているので、そうすると今度は新たな産業の進出も含めて、いままでとはちょっと違った風景になります。北側は東北で最大クラスのメガソーラー基地になっていきますし、別次元の復興ができているということを示せるようになるんじゃないかと思っています。
当初はここは瓦礫だらけで、救助や捜索しかないような状況から5年過ぎて、ようやく復興ができるようになってきたなと思っています。私も海辺に近いところの出身で、まだ遺体が上がっていない知人もいっぱいいますから、そういう意味では彼らの想いをしっかり引き継いでいかなければいけないと思っています。


今回は、10月に福島県南相馬市で開かれた、第4回 南相馬市鎮魂復興市民植樹祭の模様をお届けしました。
これから南相馬市は、ドローン実証実験ができる特区として注目されています。ドローンを長距離、高速で飛ばすことは国内では認められていない中、この南相馬が、その本格実験の場となって、世界から技術者が集まると期待されています。
また、南相馬市の避難区域解除に伴い、今年7月常磐線の原ノ町駅・小高駅 間が再開、12月10日には相馬、浜吉田間も開通し、南相馬から仙台まで電車で行けるようになるんですね。ようやく、生活を送る上での不便も解消されつつあるんですね。

今回の植樹の模様はポッドキャストでも詳しくお届けしています。
こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Change the world / 平井大
・In My Life / SALU
東京・上野、国立科学博物館で開催中の「ラスコー展」を監修した研究者・海部陽介さんのインタビューをお届けしてきましたが、今回でラストとなります。
この番組では「鎮守の森」や、人が手をいれることで豊かな森を作る「里山」など、日本人に古くから根付く、森や自然との向き合い方に、色々触れてきました。
おそらくこれって、数千年かけて培われた考え方だと思うのですが、では、クロマニヨン人がラスコーに壁画を描いたという2万年前の人々は、森や自然をどう捉えて、どう向き合っていたのでしょう。
海部さんのお考えを伺いました。


 実際人類学をやっていてわかってくるのは、常に人間が森を大切にし、動物を大切にしていたわけじゃないっていうことです。というのは、やっぱり僕らハンターだったわけですから動物を狩っていたわけですよね。実はホモサピエンス、つまりクロマニヨン人や我々が現れて世界中に広がっていく過程で、ちょっとショッキングな事が起こってるんです。例えばマンモスやケサイ、ホラアナライオン、日本にもナウマンゾウっていう象がいましたが、オオツノジカなどことごとく絶滅してしまうんですね。これはちょうど気候変動が起きて、氷期が終わって温かくなってくる時期と大体重なってはいるんですが、ただ一方でホモサピエンスが世界中に広がっていた時代とも重なっているんですね。ですからこの動物たちの大絶滅に人間が関わってないとはちょっと考えられないですね。
 アフリカで進化したホモサピエンスが世界中に広がっていく過程で、ユーラシアあるいはアメリカ大陸、オーストラリアにいた動物たちは人間の怖さを知らないんですよ。例えばナウマンゾウやマンモスの目の前にちっぽけな人間が現れた時、これは危険な動物だとはとても思わないですよね。なめてかかりますよね、きっとね。ところがそうじゃないんですよこの動物は。槍という道具を持ち、この巨大な象をハンティングしてしまう、そういう能力を持った存在だったわけですね。気候変動の影響もあるのでしょうが、多くの動物たちが絶滅してしまったという事実はあります。
 ですから人間が自然を常に大事と思う本能を持ってるって言うんだったら僕はちょっと違うんだと思うんですね。だけどそういったいろんな経験をしながら人間は学んできて、やり過ぎるとしっぺ返しをくらうということを学び、それで自然を大事にするようになるっていうことが出てきたんじゃないかなってそんな風に思いますね。


〜クロマニョン人の自然とか命、自然観、生命観っていうのはどういうものだったんでしょうか?
そういうこと僕も知りたいですね。彼らは貝殻に穴をあけてビーズを作るんですけど、その貝殻っていうのは海から大体持ってくるんです。カタツムリのような陸の貝って殻が薄いから、アクセサリーに向かないんですよね。海で取れる貝の方がいいわけですよ。そういう海の貝をわざわざ何百キロも内陸に運ぶんですよね。そこまでしてアクセサリーつけたかった人達なんですね。一方で自然の厳しさもありながら、やっぱり着飾ったりおしゃれしたりして、絵も描いたりして楽しんでるっていう面もあったんじゃないかなと思いますね。それともう一つおもしろいのは楽器も出てくるんです、この時から。竹笛なんですけど、鳥の骨に穴をあけて作った笛が出てきますね。ですから音楽も存在したという事がわかってます。
ラスコー展は、そんなふうに色々考えたり、想像したりするのが楽しい展覧会だと思います。この絵の素晴らしさもそうです。絵を鑑賞するっていうことも十分いただけますし、その背景にある「何でこんなことするんだろう?」「どうして洞窟の中入るんだろう?」それから「どうしてこんなことできたんだろう?」ってたくさん驚きとか謎もあるので展覧会場で是非そういうのを楽しんでいただきたいですね。


〜海部さんがこれまで一番印象に残った森ってありますか?
 そうですね。世界中に調査で行ってるんですけど、あえて言うんだったらシベリアの森、それから熱帯のインドネシアの森。ボルネオ島とかですね、そういうのをちょっと思い浮かべます。
 日本もそうなんですけど、自然の状態の森って少ないんだなってことをすごくそのことを気付かされましたね。世界のあちこちへ行って。だいたい人の手が入っている。モンゴルやシベリアでは川が好きなように暴れて流れてる、そういうものを見た時に僕が日本で見てきた川って違うんだって感じました。日本の川は人の手でコントロールされちゃってますよね。こっちに流れろっていうね。そうじゃない、自然ってこうなんだってそういうのを行って見て初めて感じたんです。北海道なんかでそういう場所はありますけど、日本で暮らしていると、本当に人の手の入っていない自然って中々体験することができないなっていうのをよく思いますね。


海部陽介さんのお話、いかがだったでしょうか。
特別展「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」は東京上野 国立科学博物館で、来年2月19日まで開催しています。

特別展「世界遺産 ラスコー展 〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」

【今週の番組内でのオンエア曲】
・gone feat.曽我部恵一 / あらかじめ決められた恋人たちへ
・Hello / YUKI
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