プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

今週も先週に引き続き、『森林ジャーナリスト』の田中淳夫さんのインタビューをお届けします。
森と人との関係をテーマに取材、執筆活動を続けている田中さん。海外の森に入ることも大変多いということなんですが、今日は田中さんがこれまでに出会った、森のなかでの不思議な体験について、色々伺います。


〜田中さんは森と人をテーマにしたいろいろな本を出されていますが、最新刊が「森は怪しいワンダーランド」。タイトルからしてとてもわくわくするのですが、この本では田中さんが体験した世界の森のお話がたくさん書かれています。いくつか教えていただけますでしょうか。
わたしは全然霊感のようなものが無いのですが、何年か前に南太平洋のソロモン諸島に行ったんです。これは学生の探検部と一緒に、そこにある洞窟を調査する目的で行ったんです。ソロモン諸島のなかにシンボ島という小さな島がありまして、そこに火山洞窟があるということで行きました。そこの地元の村の方々に泊めていただいて、5人で生活をしながら洞窟を調べるということをやっていました。
ある夜、5人とも寝ていたのですが、私だけふと目が覚めると、小屋の外から音がするんです。はじめは誰かが騒いでいるのかなと思ったのですが、だんだん笑い声が聞こえてきて、歌声が聞こえてきて、犬の鳴き声が聞こえてきて、お祭りをやってるんだなと思ったんです。見に行きたいと思ったのですが、よそ者が勝手に覗いていいのかななどと考えていたら、どんどん声が大きくなって、小屋の周りが全部騒ぎ出したんです。これはぜひ覗きに行きたいと思って、起き上がって外へ出たら、ぱたっと音が消えた。周りを見ても誰もいない。街灯もないようなとことですから、真っ暗闇で月の光だけなんですね。不思議だなと思って、翌朝村の人に聞いたら、精霊が出たんだろうって言うんです。一緒に行った学生たちに聞いても全然気づいていない。私だけが経験したんですね。これは空耳ではないってわざわざノートにメモを取っているんです。


〜田中さんが精霊の話を地元の方に聞いても当たり前みたいな感じなんですか?
いまはだいぶ時代が変わってきて、もうそんなの昔話だよという人もいるんですが、子どものころ見たという人も結構いらっしゃるんですね。ほんの少し前まで、精霊と一緒に生きていたという人たちなので、そういうのを感じる能力があって、いまは全然感じないけど、昔子どものころ、精霊よく出たな、って皆さんいいますよね。

〜他にもなにか不思議な体験がありますか?
国内では、私は仕事もあって、紀伊半島の中の山村巡りもしたのですが、せっかくだから、キャンプして、夜は森のなかで寝ようと思ったんです。車で行っていたんですが、テントを貼ろうとしたら雨が降ってきたので、しょうがないから車の中で寝ていたのですが、暇ですよね。だからカーラジオのスイッチを入れて聞いていたら、始まったのが怪談なんです。それも山で遭難する話なんです。わたしは霊感がないので怖くはないのですが、ふーんと聞いていて、そのうちに電波が乱れてきたのでチューナーをいじったら、電波が入る局があったんです。そうしたらまた同じ怪談話がはじまるんです。でもこれはキー局の番組を系列局が流しているんだと思って切ったんです。でもやっぱり暇なのでまたスイッチを入れたら、また同じ怪談が始まったんです(笑)さすがに同じ怪談を3回聞いたらやっぱり気分悪かったですよ。その晩は眠れませんでしたね。

〜そういう森のなかで見たり感じたりするものってなにかあると思いますか?
精霊がいるかどうかというのはその人たちの感じ方で、絶対にないとは言えません。私自身も感じたわけですから。でも森に何の興味もない人は森に行ってもなにも感じないと思うんですね。やっぱり森に興味があって、未知の部分を感じていたりとか、憧れているとか、そういうものを持っている方が、感じたりするんでしょうね。実際にいるのか、頭の中だけで感じているのかわかりませんが、そういう思いがいちばん必要なんじゃないかと思うんですね。

〜番組では奄美のケンムンという精霊の話を取り上げたこともあるのですが、田中さんはケンムンはいると思いますか?
私自身がケンムンを感じたということは無いのですが、そういう話は聞きますよね。沖縄ではキジムナーという名前になって存在するという話もあります。沖縄でも同じような経験があって、私は全然霊的なものは感じないのに、ある森に行ったらビンビン何か響くんですよ。空気が圧迫されているような感じで、そいうい森があるんですね。その森は地元では聖なる木があるとされている森だったんですね。

〜やっぱり科学では説明できないものっていうのはきっとありますよね。
樹齢1000年、2000年の木を見てなにかを感じたり、あるいは岩なんかでも感じるという方がいますよね。そういう大きな自然物はなにか感じるという人もいるわけですよね。だからそいう自然に対する崇拝とか憧れとか、そいういう気持ちが心のなかにあるんだろうと思うんです。特に日本人は自然を敬う気持ちを持っていて、それが無意識に出てくるものなんじゃないかと思うんですけどね。

〜田中さんが日本や世界の森を取材していく中で、木とか岩とか、印象深かったものってありますか?
私はボルネオによく通っていたことがあるのですが、熱帯雨林を行くと、森の中にはものすごい数の生物がいて、動物もいれば昆虫もいれば、菌類のような目に見えないものもいっぱいいて、それに自分は囲まれているんだと思うと、なにか感じるものはありますよね。

田中さんのお話いかがだったでしょうか。今回のインタビューにも出てきました田中さんのご本、新泉社から発売中の『森は怪しいワンダーランド』を3名の方にプレゼントしたいと思います。
ご希望の方は、番組のウェブサイト”MESSAGE”のところから「プレゼント希望」と書いて、2/24(金)までにご応募ください。ご住所、お名前も忘れずに!

「森は怪しいワンダーランド」新泉社 田中淳夫著

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Paris / The Chainsmokers
・りんごの木 / 大橋トリオ
今週は、『森林ジャーナリスト』の田中淳夫さんをお招きしました。田中さんに日本の森をめぐるお話から、世界中を旅されて見聞きした世界の森の「不思議な話」まで色々伺おうと思います。


〜田中さんは学生時代、探検部だったそうで、その後新聞社や出版社を経て、フリーの森林ジャーナリストになられた方です。森をテーマにした本も多数出版されていますが、森林ジャーナリストってどんなお仕事なんですか?
基本的には森林にまつわる、森と人に関係あるものをなんでも扱っていこうという気持ちで付けた肩書なんですが、この肩書を使っているのは日本で私だけです。ですから、日本一の森林ジャーナリストと名乗っているわけです(笑)。

〜森林ジャーナリストを名乗ろうと持ったきっかけは何だったんですか?
じつは私が「森林ジャーナリスト」という肩書を考えたわけではないんです。最初に森に関する本を出版したときに、書評などに森林ジャーナリストの本ということで紹介されて、このフレーズはいいな、ということでそのまま使わせていただいているんです。

〜最近、「街路樹サミット」の取材をしたと伺いましたが、街路樹サミットってなんですか?
これは街路樹の現状を憂いている人たちの集まりです。造園家の人が多いのですが、林業家ですとか、一般市民の方もいらっしゃいます。いま、街路樹はいろんな問題を抱えていて、皆さんよく見かけると思うのですが、電信柱みたいに枝を全部切ってしまうような剪定をしている木があったり、大木になりすぎて歩道から根がはみ出ているような木があったり、車道に枝がはみ出ていて見にくいという問題があったりします。また、病んでいる木も多く、内部で腐って、急に倒れたりすることもあって、それも問題になっているんですね。それはやはり管理、世話の仕方がおかしいんじゃないかということで集まって、それを訴えていこうというサミットが開かれたんです。1月に開かれたのですが、全国サミットとしてはそれが2度めだということでした。

〜街を歩いていると街路樹はたくさん見ますし、有名なイチョウ並木なんかもあったりしますが、じつはそこには問題があるんですね。
そうなんですね。健全に育っているとは限らない木が多く、また剪定の仕方があまりにも酷くて、見栄えも悪いし木のためにもよくないということがあります。ではなぜそういうことが起きるのかというと、担当者にあまり植物の知識を持つ人がいないんですね。道路の付属物としてつくられるので、土木関係者が思いつきで植えてしまったりするケースもありますし、剪定も、邪魔だったらどんどん枝を落としてしまうというような、あまり植物の生態を考えて管理していないので、それでそういうことが起きてしまいます。ですので、もっと造園とか林業とか、そういう植物に詳しい人が手をかけるべきじゃないかという趣旨でサミットが開かれて、そのことをみんなに呼びかけていこうという動きでしたね。

〜その街路樹の問題を解決するにはどうすればいいんでしょうか?
たとえば剪定の仕方も工夫をして、木を元気にすることも考えないといけませんし、あまりに大きくなった木は植え替えないといけません。でも切ろうとするとたいてい地元で反対運動が起きるんです。放っておくと枯れて倒れてしまうおそれもあって危険なのですが、大木を切ることに抵抗のある人が多いです。でもそれでいいのかどうかということです。木のためにも、地元の景観を考えるときにも、やっぱり知識を持って管理しないといけません。
多くの街路樹は戦後、ニュータウンなどが広がっていく過程で植えられる事が多かったので、植えてから50年くらい経っています。ですので、そこそこの大きさになっているのですが、街路樹の下の土の部分は極めて狭いので、それ以上根が広がりません。そうすると樹木にとってはおかしな成長になって、病気になるものも出てきます。たとえばきのこが生えて、中から腐ってしまっているような木も増えているんですね。


〜植えたときは見た目を気にして、その後のことはあまり考えられていなかったんですね。
そのときに細い低木を植えて、ちょっとした緑という気だったんでしょうが、50年後の姿を考えていなかったんだろうと思いますね。

〜そういった街路樹にも生態系があるんですか?
普通に考えれば、街路樹というのは、数m間隔で一本一本植えるので、そこにはあまり森林のような生態系は無いわけですが、そういう木でも上に枝葉が広がっていると、そこには虫がつくし、虫がいればそれを食べに鳥が寄ってきます。鳥はあちこちの街路樹や公園を順番に回っていくので、街路樹だけを見ると大した生態系ではないのですが、もっと大きい視点で、公園と公園が街路樹で結ばれていると見ると、そういう意味では大きな生態系があります。コリドーという言い方もするのですが、ある公園に住んでいる鳥や昆虫は、街路樹をつたって別の公園の方にも移動できるという効果もあるので、街路樹があることによって、その地域の生物多様性が増すということが最近の研究でわかってきています。
ですから、そこも考えて管理しないといけません。いきなり全部丸坊主に剪定してしまっては、いままでその木にとまっていた鳥はとまるところが無くなってしまうわけですね。


〜ネットにも興味深い田中さんのコラムがありますが、そのなかのひとつ、「360度カメラで森林情報」というのはなんですか?
これは国有林の話なのですが、国有林でもそこの木を売ったりしているわけです。でもその情報が全然世間に伝わっていないんですね。どんな森で、どういう生態系なのかということがわからないのに、利用してくれと言ってもできないので、そこに360度カメラを設置して、それをインターネットで常時見られるようにしようということなんです。まだこれからなので、成果はわからないのですが、色々工夫をして広めていこうということです。林野庁としては、その木を買いたいという人が現れるのを待っているらしいんですけどね。

〜なるほど、そういう使われ方なのですね。「大木の尊厳死を考える」というのはどういことですか?
大木が天然記念物に指定されていたりすることがあって、それはいいことなのですが、大木というのはつまり老木ですよね。樹齢何百年経っていたりして、かなり弱っている木もあるのですが、それを地元の方が熱心に、なんとか枯れないようにしているということがあります。それは結構なことなのですが、あまりにも無理をして、痛々しいような世話をしているのを見ると、そこまでして大木を守らないといけないのかなと思うんです。もっと自然のままにしておいて、寿命が来たらそれはそれでいいんじゃないかということをコラムとして書いたんです。でもかなり反発もありました。なにもいきなり切ってしまえという事を言っているのではなくて、自然に枯れるのを待ってもいいのではないかという提案なんですけどね。

田中淳夫さんのお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続き田中さんのインタビューをお届けします。


「森は怪しいワンダーランド」新泉社 田中淳夫著

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Everlasting Love / Jamie Cullum
・All You Had To Do Was Stay / Taylor Swift
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