今週は、私たち日本人が、古くから生活に取り入れて来た森の恵み・・・「炭」のお話です。
今回は90年以上続く炭を扱うお店、京都市中京区「釜座通」にある「今井燃料」というお店に伺いました。
そもそも釜座通は、鋳物職人の工房がたくさんあった通りだと言われています。
そんな釜座通で、古くから燃料を扱っているのが「今井燃料」。
燃料、といっても灯油やガソリンではなく、「炭」を専門に扱っているお店です。
ご主人の今井健二さんにお話を伺いました。

◆今井燃料
大正七年に創業しているので、96〜97年になります。私の祖父が若いときに丹波にいたんですが、そこから商売しにこちらに出てきて、私は三代目です。いま扱っているのは主に薪ですね。炭ももちろんあります。
以前は、いまみたいにいろんなところの炭を仕入れていたわけではありません。昔は京都でもたくさん炭をつくっていたんですが、いまはほとんどつくっていません。需要もいまよりはるかに多かったですね。普段の暖房とか、もちろん煮炊きも全部薪でしたから、需要はたくさんありました。それから染屋さん。染料を沸かして色を付けるんですが、その燃料としての需要もありました。染屋さんはこのへんはかなり多かったので、たくさん売っていたと思いますね。
それがだんだんと石油やプロパンガスに替わっていって、薪や炭は一時は極端に減ってしまいました。それで炭の産地が大変だという認識があったので、役に立ちたいなという思いがあったのと、化石燃料をやめようと思ったんです。炭の専門店になったのは6〜7年前です。


炭は、元々森の中にあった木。木には、空気中のCO2が固められています。だから炭を燃やしても、化石燃料のように空気中のCO2を増やすことにならない「カーボンニュートラル」と言われる概念です。
環境問題に関心の強かった今井健二さんは、灯油などの販売をやめ、炭だけを扱うお店に ある意味「原点回帰」。化石燃料にはない、炭の魅力を知ってもらおうとご商売を続けています。

◆手間を楽しむ
炭は、たとえば暖房でしたら、手をかざすと手の平から血管を通って体が温まってくるわけです。急には温まったり、ものが簡単に焼けたりということはないんですが、そのプロセスを含めた時間のゆとりを提供したいというのがあります。火鉢で炭をじっと見ていても飽きないんですよね。そういう時って、頭のなかを空っぽにできて、リフレッシュできると思ってます。それに炭火は遠赤外線や近赤外線など、いろんなものが出るんですが、料理がおいしくなるというのはみなさんご承知のとおりなんです。
やはり邪魔臭いのは邪魔臭いんですよ、正直言って。たとえば炭に火が移るまでには20分くらいかかるんですよね。すぐには自分の思い通りにならないというのがあるんですが、それまでの間のプロセスを楽しむ。
この炭は黒炭といって、火力的には備長炭よりかなり弱いんですが、その分お餅はすごくおいしく焼けます。お正月ごろのお餅とか、たとえばじっと見ているわけですから、だんだん膨らんでくるのが見えますよね。で、ぶわっと膨らんでくる瞬間をじっと見ているわけですから、見ていても面白いですし、焦げ目の香ばしさが全然ちがうと思います。だからちょっと乾燥した香ばしさじゃなくて、パリっとした、よくおかきなんか焼きますが、それに近い感覚なんでしょうです。そういう香ばしいところが美味しいと思いますね。砂糖醤油をちょっとお湯でうすめたもので食べるんですが、それが僕はすごく好きで。正月に必ず食べ過ぎてしまうんでちょっと困ってるんですけど(笑)


炭を使った日本の古くからの暖房器具といえば、「火鉢」ですが、この火鉢には、体を温めるだけではない、別の効果もあると今井さんは話します。

◆火をみんなで囲む
やはり火があるとみんなが近くによってくるんですよ。それでみんなで手をかざして、周りを囲んでお餅を見てるとか、そういうコミュニケーションの場にもなれると思いますね。そういうときは普段しゃべらないこともしゃべったりするじゃないですか。僕らは小さい頃はそういう環境だったので、冬の間は火鉢に集まって、そういう団欒はありましたね。そこで僕の場合は、三世代同居でしたから、おじいさんから色んな面白い昔の話を聞いたりする場でもあったし、そういうコミュニケーションのツールとしてはすごくいいものだと思います。
いまは簡単にボタンを押したらすぐに料理ができてきて、すぐ食べられてありがたみがなかなかわかりませんが、長いことかかるんだなというのを実際にみて、待っている間にいろんな話をしたり、そういうコミュニケーションのいいツールにはなると思いますね。


今井さんも子どもの頃は火鉢で暖まっていたそう。火鉢をまたいでオマタを温める「また火鉢」という悪ふざけをして、親に怒られたと笑って話してました。
当時は、ご飯を炊くのは薪、焼きものは七輪。こたつは炭の熱を使ったもの。生活に必要なエネルギーはほとんど、薪や炭だったと言います。
そして現在。かつての炭のある暮らしに魅力を感じる若い世代が、増えているんです。

◆スローライフとしての炭
火鉢を使う若い人がすごく増えましたね。お年寄りの方は昔を懐かしんで使われる方もいらっしゃいますが、やっぱり邪魔臭いというイメージを持ってる方が多いんです。若い方は、メインが30〜40代くらいですが、知らなかったけれどもやってみたいという方がたくさんいらっしゃいますね。火鉢に関してはここ3〜4年位で急に増えたように思います。
まあスローライフですよね。その入門編として、火鉢が注目されているのかなと思ってます。それと単純に炭で焼いたらおいしいので、備長炭なんかはそれこそ若い方のほうが多いですね。ほとんどそうです。
また、京都には京町家がたくさんあるので、それに合わせて炭を使いたいという方もたくさんいらっしゃると思います。



今井燃料のご主人、今井健二さんのお話、いかがだったでしょうか。
若い世代で炭のある生活を楽しむ人が増えている、というお話もありましたが、炭を扱うお店は減っています。かつて京都には400軒ちかい燃料店があったのですが、今では70店程度。
炭専門のお店は今井さんのお店も含め数軒にとどまるということです。

今井燃料では、炭の情報発信、ウェブでの販売も行っています。ぜひチェックしてみてください。
http://www.i-sumi.com/

来週も、今井燃料 今井さんのお話をお届けします。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Yellow / Coldplay
・Happy Pills / Norah Jones
今週は、先週に引き続き、アスファルトの割れ目、電柱の根本、ブロック塀の穴、石垣など、色んな「スキマ」から生えている植物たちをめぐるお話です。
町を歩く時、ちょっと下を向いて歩くだけで目に留まる、スキマの植物たち。実際、どんなところに、どのくらい存在するものなのか。というわけで、東京大学大学院教授で、植物学者の塚谷裕一さんに職場である、文京区本郷の東京大学の周りを案内していただきました。

◆東京の街の中にもたくさんのスキマの植物が
これはセイヨウタンポポです。冬越しのために縮まっていますね。ヒメジョオンとハルジオンと両方あるみたいですし、4種類はこの一角にありますね。ほかにもオニタビラコがいて、オランダミミナグサがいて、これは和名がちゃんとついていないのですが、イヌノフグリっていうのかな、帰化植物です。で、カタバミがあって、ここにもうひとつシダ植物のイノモトソウが生えていますね。これはホトケノザ、ツルソバはスキマをこじ開けて無理やりもぐりこんでいますね。

これはイヌビワ、さっきあったのはこれがこれが寒くていじけてたやつですかね。
やっぱりちょっとした距離で顔ぶれが変わりますね。向こうとだいぶ違うでしょ?一見、外から見るとわかりませんが、たとえばこの石垣、この部分が湿っていますよね。そういうのにもよるんじゃないですかね。


塚谷先生と一緒に、たった50mくらい歩くだけで、様々なスキマの植物が見つかりました。
石垣のスキマをよーくみると、日が当たりやすい場所、雨水がたまりやすく湿った場所、風が当たりやすそうな場所などがあります。スキマの植物が生えている所には、それ相応の理由があることがあるんですね。

ところで、スキマの植物を私たちは「雑草」と考えがちですが、これを「雑草」と呼ぶのは、どうもスキマの植物たちに失礼にあたるようです。

◆スキマの植物は雑草ではない
僕は理学系なので、気楽に雑草と言ってしまうんですが、農学系の方々に聞いてみると、「雑草」というのは、本来はそういう使い方をするのは間違いだそうです。雑草は農作物の植物と競争して害をもたらすものが雑草といいます。そういう意味では、スキマの植物はそういうことをしていないので、雑草にはあたらないですね。あと街でよくみるスキマの植物には、家庭で育てている園芸植物が逃げ出したケースも結構あるので、その両方の意味で、雑草というのは本当は間違い。本当に古来から日本でその辺に生えていたのもいるので、まあひとことで言うのは難しい。そういう意味でスキマの植物とひっくるめるしかないんです。


それは、大変失礼いたしましたという感じ?
これからは、道端の植物たちを雑草と呼ばず、「スキマの植物」と呼んであげましょう。とはいえ、アスファルトを突き破ったりする、スキマの植物の力強さを「雑草魂」なんていって、ちょっと尊敬しているんですけどね。。。
で、その、スキマの植物たちの、アスファルトを突き破る力。これは人間と違う、植物ならではの特徴が関係しているんだそうです。

◆アスファルトを押しのけるスキマの植物
コンクリートとアスファルトだと植物はアスファルトのほうが得意です。コンクリートのほうは、すでにヒビが入っているところを押しのけることはできますが、なにもないところに亀裂をつくるのはさすがに無理です。コンクリートに比べてアスファルトは非常に硬い飴みたいなものです。道路を舗装したてで、まだ熱いときはドロドロの状態で、冷えると硬くなるわけです。ああいったネバりっこいものを壊すときには、ドリルなどの強い力をいきなりかけてもなかなか壊れない。そのかわり、弱い力でもじっくりかけていくと、ゆっくり押されただけ動く。人間はそんなに辛抱強く待っていられないので、人間にとっては機械で壊すしかないですが、植物は元々ゆっくりしか動かないので、動いた分ちゃんとアスファルトが動いてくれる。ですからよく駐車場にアスファルトをひいてしばらくすると草だらけになるというのはそれですね。



今回、塚谷さんと一緒に散策した、東京大学周辺の石垣には、いわゆる「スミレ」もありました。取材したのはまだ1月下旬ということで、もちろん花はつけていませんでしたが、このスミレって、すごく気まぐれなスキマ植物だということを教えてもらいました。

◆気まぐれなスミレ
スミレは割りとスキマが好きみたいで、駐車場のアスファルトの割れ目などでよくみかけます。あんな過酷な条件で生えているんだから、大事に鉢に植えたら喜ぶだろうと思ったらそうでもなかったりします。日本にスミレってすごくたくさんいるんです。世界的にもスミレの種類が多い国で、園芸価値のあるものもたくさんあるんですが、その割に園芸化されていません。なぜかというと、生えているのをとってきて植えると、植えた年は咲くんですが、次からだんだんいやがって、どこかへ行ってしまうことが多いんですよ。野草を育てるのが好きな人達のあいだでよく言われるのが、スミレを育てたかったら、一鉢、庭の真ん中あたりに置いておく。そうして種が飛んだり、アリが種を運んでいったいりして、自分が好きなところで生えたのを、そこで育てるのがいいといいます。なにか選り好みがあるんですけど、なにが好きなのかよくわからない。だから勝手に生えてくるのを待つほうがいいんです。


なるほど。なんだか人間にはわからない好みがあるんですね。
植物学者の塚谷さん、なにか植物をみていて感じることを聞いてみました。

◆スキマの植物は結構幸せに暮らしている
僕は元々植物が専門なんで、植物の側を基準に考えると、人間のほうがむしろ変わった生き方をしているなと思っています(笑)。植物は光を感じることはできますが、人間のように焦点を合わせるということができるわけじゃないので、自分にあたっている光しかわからない。ですからとても不便な生き物です。そう考えると人間は自由なのになにをしているんだろうなと思ったりします。
スキマの植物は人間からみると閉じ込められてるみたいに見えますが、植物の側からみると回りには邪魔者もいませんし、気楽に生きています。周りに仲間がいっぱいいるところをみると繁殖にも不自由してないみたいですしね。



塚谷裕一さんのお話しいかがだったでしょうか。
ちなみに、こうしたスキマの賞物たち、今の時期はまだ花がなく葉っぱしかありません。花が咲かないとその正体は分かりにくいので、普段の通勤・通学路で気になる植物を見つけたら、そこを気にして毎日チェックしてみると良いそうです。
スキマの植物たちは、桜が咲くころは一斉に色んな花が咲くとのこと。春になると、あーここにこんな植物が!と気づくことになるそうです。

そんなスキマの植物たちの楽しさがわかる本、塚谷教授「スキマの植物図鑑」は中公新書から出ています。


今回のお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・The A Team / Ed Sheeran
・明日天気になれ / ハナレグミ
«Prev || 1 | 2 || Next»

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFNヒューマンコンシャス募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。
  • 鎮守の森のプロジェクト
  • EARTH & HUMAN CONSCIOUS
  • LOVE&HOPE〜ヒューマン・ケア・プロジェクト〜
  • AIU保険会社

PAGE TOP