今回は「津波防災シンポジウム2015」の模様をお届けします。
TOKYOFMホールを会場に行われたこのシンポジウムでは、 宮城県・岩沼市長はじめ、防災・減災の各専門家、植物の研究者などが、 津波防災と、森づくりについてそれぞれの視点で講演を行いました。
その中から、東北大学・災害科学国際研究所 所長で、 津波工学が専門の東北大学 今村文彦さんによる講演の一部をお伝えします。
今村さんは、津波の被害を減らす、岩沼市「千年希望の丘」の森づくりを例に、 防災・減災の考え方についてお話しされました。

◆東北大学 今村文彦さん
元々この地域は1611年、ちょうど伊達政宗が仙台の街をつくったころですが、東日本大震災と同じような大津波の被害を受けました。それによって政宗はここに住まないように、防潮林を整備し、できるだけ沿岸部に近づかないようにという規制をしていたそうです。この防潮林は、それからずっと保全してたわけですが、今回の津波は1611年の津波を遥かに上回り、防潮林の7割以上を破壊しました。
確かに松は20〜30mになりますが、実は支持している根が、場合によっては浅いことがある。つまり、低いところは地下水が近いので根が張らないわけです。これは改めてこの現場で知ったことでした。いまも仙台空港には残っていて、何本か木もありますし、神社もあります。
昔の集落というのは、このようなところに「いぐね」を植生し、高潮、風、津波から街を守っていたんだろうと思います。しかし、津波はこのような防御を遥かに超えて、滑走路に到達した時、またその破壊力を増しました。でこぼこがありますと、いろんな形で津波をとめてくれ、勢いも弱まります。しかし、平らですとまた加速度を増してしまいます。この津波は、土砂、泥を巻き上げ、黒い濁流となって街を襲ったわけですが、助かった方のなかにもこの津波を飲み込んで、「津波肺」を起こしてしまった方がいます。泥の中には有害物質もありますので、それで肺が炎症を起こしてしまったということです。津波から命を守るためには、もちろん高いところに避難するのが第一ですが、流されてしまったとしても諦めてはいけません。漂流すれば命は助かるわけですから。そのときにこの「死の水」を飲まない。そういうことも大切です。
この震災を受けて、我々が改めて大切だと思うのは、いのちを守ることです。それは安全な場所を確認することと、いつ避難するか、タイミングになります。言い換えるならば、津波の到達時間を少しでも遅らせてくれれば、我々が命を守るチャンスが増えるということです。そこに千年希望の丘があれば、津波の流体力を軽減し、また時間を遅らせることができます。様々な効果を色んなプランで、いろんな状況で検討していきたいと思います。


今村さんは、まず、森があることで、漂流物を食い止めることができて、森の間を海水が通ると津波の勢いが減る。結果として、その背後にある建物が守られる。木に登って助かるケースもある、ということもおっしゃっていました。実際、2004年インド洋津波でも、 マングローブやココナッツの林があった地域は、 津波の被害が、ほかと比較して少なかったという実例も紹介していました。
そしてシンポジウムでは、「千年 希望の丘」プロジェクトを推し進める 宮城県岩沼市・菊地啓夫市長も登壇しました。

◆菊地啓夫 岩沼市長
千年希望の丘ということで、いざというときにここに逃げ込むという丘を、10km圏に15個造る計画です。丘と丘を結ぶ沿道に木を植え、いまは沿道の高さが3mですが、この木が伸びることによって、10mくらいまでになります。いまは2mくらいまで伸びているのですが、これが将来丘の高さくらいまで木が伸びると、堤防と同じ機能を果たす。つまり、減衰効果を働かせようということで「千年希望の丘プロジェクト」がはじまりました。
岩沼は仙台市の南側約16kmにあり、仙台空港があります。仙台空港が津波に飲まれるところが世界中に配信されたので、そういう意味では岩沼は有名になったんですが、一方では危険な場所というイメージもできてしまいました。それを払拭しようということも千年希望の丘の狙いのひとつです。
ここに住んではだめだというお話がありましたが、実際この辺には100世帯以上の集落がありました。それが今回の津波でほとんど流されてしまって、181人が亡くなりました。この状態からどのように復興していくかということを、地域の皆さんと話し合いをして、一ヶ所にみんなで集団移転しようということになりまして、玉浦西という名称で、ここに新しい街ができております。田んぼの中に四角く、約20haありますが、ここに約1000人が住んでいらっしゃいます。これで住む場所としては、岩沼の場合はほぼ完成です。これほどの大規模な集団移転は、日本には例がないそうですが、そして1ヶ所に集まったということもまた岩沼の特徴です。
ところが守りの部分は全然できていません。太平洋側からまた同じような津波が来たら、またここも同じように浸水域です。50cm〜1mくらいの浸水がありました。そこで、多重防護ということで、海岸防潮堤をいちばん最初につくっていただいて、その後ろに千年希望の丘という、我々がいまつくっている減衰効果を期待してつくっているものがあります。さきほど今村先生がおっしゃったように避難の時間を稼ぐためのものです。これで津波をシャットアウトできるとは決して思っていません。しかし、逃げる時間くらいは稼げるだろうと思うのです。これをいまから2年かけて10kmまで全部完成させようと考えています。まだ50パーセントですが、来年は最大級の植樹祭をします。ぜひ成功させたいということで、森の防潮堤協会のみなさんと森の長城プロジェクトのみなさんを中心に、これから活動していく予定です。


今回のお話いかがだったでしょうか。来年の岩沼の植樹祭については、岩沼市や森の長城プロジェクトのサイトをご覧ください。
岩沼市→http://www.city.iwanuma.miyagi.jp/
森の長城プロジェクト→http://www.greatforestwall.com/iwanuma2016.html
今回は番組で継続して取材している、「森の長城プロジェクト」の恒例のイベント、どんぐり拾いツアーの模様をお届けします。

11月14日(土)〜15日(日)に宮城県岩沼市周辺で行われたこのどんぐり拾いイベント。目的はもちろん、被災地沿岸部に「森の防潮堤」を作るためです。みんなで拾ったどんぐりを、大切に苗木に育て、それを植樹するんです。
今回のどんぐり拾いには、このプロジェクトに協賛している、AIU損害保険の方をはじめ全国からたくさんのボランティアが集まり、2日間でなんと17万粒を採取!
あいにくの雨でしたが、参加者のみなさん、楽しそうにどんぐりを拾っていました。


このツアーを案内してくれたのは東京農業大学 特別研究員で、森の長城プロジェクトのメンバー、西野文貴さんです。

「この場所は宮城県角田市の三島神社付近、残存林と呼ばれる昔からある木が残ったところになります。ここに生えているのはウラジロガシと呼ばれる大きさが20mにもなる木になります。
どんぐりのなる木はたくさんあって、ウラジロガシやアカガシなど15種類以上日本にはあります。栗なんかも同じ仲間ですね。いわゆるブナ科の植物になるんですけれども、ブナ科の植物は日本の森林を構成する大事な主役になっています。
今いる土地や多くの平野部なんか特にそうなんですけども、潜在自然植生はシイ、タブ、カシによって構成される20m程の森になるのがほとんどになっております。
森の長城プロジェクトでこの2日間でシイ、タブ、カシなどの日本の森を構成する重要な主役たちのどんぐりを拾って、どんぐりから苗木を育てて約2年後3年後には立派な苗木になるので、それを使って植樹をすることでもう一度森を創ろうと思ってます。」


このどんぐり拾いイベントでは神社の敷地内にある「鎮守の杜」から、どんぐりをいただいて、これを2〜3年かけて高さ30センチほどの苗木に育てて植樹します。これまでのどんぐり拾いで、すでに苗木になり植樹されてものもあるんです。
お話を伺った西野さん、みんなから「先生」と慕われている方で、西野さんのお父さんはこの「苗木作り」をされています。そして西野さんご自身も、このプロジェクトに共感して参加されたそうです。お父さんの後を継ごうと考えていて、現在、研究者として植物と向き合っています。
そんな西野さん、森のどんぐりたちにまつわる、いろんなことを教えてくださいました。

「冬場は動物にとって、このブナ科のどんぐりの実は栄養がすごく多く、貴重な食料原になりますので、食料の少ない時期に備えて土の中に埋めたりします。それを忘れてしまって春にどんぐりの芽が出てくることがよくあります。どんぐりの実は、重力散布といって重力によって落ちてその場で散布するものもあるんですけども、そういうように、リスなんかが土の中に隠して忘れてしまったどんぐりが春になって出てくるというような、動物散布というものもあります。
地面見てみると、どんぐりが何万と落ちているんですけども、これみんな発芽するわけではありません。種の中に含まれている水の量がある一定以上なくなって、カラカラになってしまうとさすがに強いどんぐりもで発芽することができませんし、太陽に光があたっている必要もあります。ですので、葉っぱの下に隠れたり、動物が隠したりとかしたとき、すごく条件のいい時にどんぐりの芽が次の春に発芽するようになってます。」


ちなみに、森の木が枯れて倒れると、その部分の地面に太陽の光が差し込み、土の中で眠っていた木の実が、その光を受けて芽を出すこともあるなんて話も以前ご紹介してますが、どんぐりって、意外としたたかなんですね。
最後に森の長城プロジェクトの高橋さんに今後の予定を伺いました。

「12月5日に千葉県の君津市で夫苗を育てるための講習会を開きます。一般の方のご参加もできますし、もちろんご自分のところで、色々整備していただいて育てるということも可能です。
また、来年の3月27日に福島県の南相馬市で2万本を植樹する植樹祭があります。それから5月28日には宮城県岩沼市千年希望の丘で植樹祭を予定しています。今年は震災から5年目という節目の年でもありますので、植樹する本数は10万本、参加者も1万人を募集して、大きな植樹祭を計画しています。」



このどんぐり拾いツアーで持ち帰ったどんぐりは、番組パーソナリティ高橋万里恵もポッド苗育成にチャレンジします!

今回ご紹介したどんぐり拾いツアーの模様はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
参加者の方のお話しも聞けますので、こちらもぜひチェックしてください!

【番組内でのオンエア曲】
・It Doesn't Stop / Maia Hirasawa
・にじいろ / 絢香
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