今週も、カナダとアメリカの国境付近にある「ノースウッズ」という森をフィールドにオオカミをはじめ、森の姿を撮り続ける写真家の大竹英洋さんのお話です。
<br />大学卒業後、写真家を目指していた大竹さんは、撮影テーマを探す中で、『ブラザーウルフ』というオオカミの写真集とその撮影者・ジム・ブランデンバーグというフォトグラファーの存在と出会います。
そして、ナショナル ジオグラフィックを中心に、世界的に活躍するこのフォトグラファーに弟子入りしたいと決意。彼が暮らし、撮影を続けているという ノースウッズへ単身わたりました。

弟子入りして2年、3年彼の元でいろいろ覚えたかったのですが、実は弟子入りはできなかったんですね。僕の思いを伝えたのですが、彼は弟子を取っていなくて。でも「自然の写真を撮るには、自分ひとりで自然と向き合う必要がある。君もすぐ撮り始めたほうがいい。いい作品を撮れるようになるには時間がかかるから、今すぐに撮り始めなさい。」って行ってくれたんです。
僕は、一番安いチケットで来たので、帰りの日が動かせないチケットで、3ヶ月間アメリカにいなきゃいけなかったんですね。6月の頭にジムに会ったのですが、8月の終わりまでアメリカにいることは決まっていたんです。ジム・ブランデンバーグは自分の家の周りに敷地を持っていて、そこで撮影をしているのですが、そのなかに空小屋もあって、「そこに泊まっていればいい。すぐに撮影し始めなさい。それでたまに会って写真の話をしよう」と言ってくれて、そこから2ヶ月半、彼のそばで暮らしながら撮影をして、何回か写真を見てもらったりしました。
ジム・ブランデンバーグといえば、80年代、90年代に活躍した、世界トップの自然写真家の方です。彼に根掘り葉掘りテクニックを教えてもらったことはないんですが、暮らしぶりを間近に見ることができて、肌で感じることができたというのは、とても大きなものがありました。


〜真夏に差し掛かる頃のノースウッズの森はどんなふうなんですか?
かなり緯度が高いので、高原気候です。日本ほど蒸し暑くはないのですが、結構30度くらいまで気温が上がることもあります。太陽も、白夜になるまで北ではないのですが、10時くらいまで明るいんですね。ですから、真夏の太陽を浴びて、ブルーベリーが森中にたくさん実る、そんな季節ですね。それを狙ってクマたちがベリーを摘みに来る。そんな季節だと思います。木の葉が茂ってくるので、動物に会うのはなかなか難しくなってはきますが、非常に豊かな季節だと思います。

〜その撮影の日々のなかで、忘れがたい出会いなんかありましたか?
ここに子鹿の写真があるのですが、子鹿が身を伏せて、じっと目を閉じている、非常に安らかな寝顔の写真です。

これは僕が森の中の獣道をあるいていて、倒木を乗り越えるために足を上げたその向こうに、この子鹿が横たわっていたんです。で、驚いて飛び退いて、パシャ、パシャっと撮影していたら、この子が目を開けて、こちらをじっと見たんです。僕は至近距離でこの子鹿と見つめ合ったんですが、その目が本当に黒くて、大きくて、吸い込まれるような瞳で、こっちをじっと見ていて、ぜんぜん怯える様子もありませんでした。人間を見たことがなかったのかもしれませんが、きょとんとこっちを見ていて、周りをキョロキョロっと見渡して、また寝ちゃったんですね。
最初、なんで逃げないんだろう、ケガでもしているのかな、生きているのかなと心配だったのですが、周りをキョロキョロっと見てまた寝ちゃったので、元気だし、生きているなと思って。ただ、この周りにお母さんがきっといるはずで、僕がここにいたら怖くて戻ってくれないだろうと思って、その場を後にしたのですが、あとで調べると、生まれたばかりの子鹿は死んだふりをするそうなんですね。身に危険を感じると、すっと伏せて、呼吸数も少なくなって、心拍数も少なくなって、本当に穏やかになります。ある種の仮死状態といいますか、本当に静かに石のようになって危険をやり過ごす。この森にはオオカミもいるので、その場ですっと伏せて、静かにして、狸寝入りならぬ子鹿寝入りをする。そして、お母さんはたまに戻ってきて授乳するらしいんです。誰に教わったわけでもなく、自分の命を守るために懸命に知恵を働かせて、伏せている。そういう子鹿の写真なんだなと思うと、またちょっと見え方が変わってきますね。


〜逆に、危険な目に遭うこともありましたか?
野生動物というのは何が起こるかわからないので、常に気をつけていなければいけない。距離のとり方や、彼らの一挙一動に神経を張り巡らせて、どこまでできることなのか、どこまで近づけるかというのは常に考えていなければいけない。でもこれは僕のミスなのですが、獣道に荷物をおいて、花を静かに撮影していて、ちょっと長い間静かにしすぎたんですね。で、終わって荷物をとりに行ったら、そこにクマが来ていたらしくて、目の前の茂みがガサガサっと動いたんです。びっくりして逃げていってくれたのでよかったのですが、逃げたといってもすぐそこで立ち止まって、犬のようにワウって吠えてきたんです。そのときは、もうちょっと自分の存在を教えて置かなければいけなかったなと思いましたね。僕は、彼らの場所に伺って、見せてもらっているという立場です。彼らを不用意に刺激しないように、ただ見せてもらいたいなと思ってお願いして行くことなので、なるべく気をつけないといけないなと思います。

今回のお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続き大竹英洋さんのお話です。次回は大竹さんが出会ったオオカミのお話を伺います。
お楽しみに!


「そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ」あすなろ書房

イベント情報: http://hopnews.exblog.jp
Facebook: https://www.facebook.com/HidehiroOtakePhotography/
Instagram: https://www.instagram.com/hidehirootake/

【今週の番組内でのオンエア曲】
・My Mind Is For Sale / Jack Johnson
・大空で抱きしめて / 宇多田ヒカル
今週は、日本を離れ、海外の森のお話です。
スタジオにお招きするのは、写真家の大竹英洋さん。この方がフィールドにしているのは、カナダとアメリカの国境付近にあるノースウッズという森です。特に、森の生態系の頂点・オオカミを追いかける写真家として知られています。


ノースウッズは、国で言うとカナダ。アメリカでもカナダに近いミネソタ州、ウィスコンシン州北部も入ります。山が全くなくて、どこまでも地平線が森でできているような世界です。その中に10,000年前の最後の氷河期によって残った湖がたくさん数え切れないほどある、そういうところです。

僕がフィールドとして選んでいる場所だけでも、日本が4つまるまる入るような場所です。気候は非常に寒い。冬はマイナス30度が当たり前です。北海道より緯度が高く、マイナス40〜50度も経験したことがあります。森自体は針葉樹の森で、日本だと北海道の道東、八ヶ岳など標高の高いところ、ちょっと気候が厳しいようなところに入る森です。マツなどの針葉樹が多いですね。
ノースウッズには昔から人が住んでいて、氷河期が終わった8000年位前の遺跡が出ています。先住民が今もなお狩猟採集の暮らしをしていて、自然の恵みを感謝しながら暮らしています。
動物はアメリカクロクマがいます。グリズリーはいませんが、日本のツキノワグマのようなクマがいたり、最大の鹿であるヘラジカが森の中で暮らしていたり、野生のオオカミがいます。
オオカミは日本では100年前に最後の目撃情報があって、現在では絶滅したということになっています。それがノースウッズには暮らしている。ですので、オオカミのいる森というのがどんなところなのか見たいと思って、それで行っているんです。


〜「そして、ぼくは旅に出た。: はじまりの森 ノースウッズ」について教えてください。
大学時代に都会を離れて深い森の中、山の中を歩くようになって目が開かれるような感じがしました。そして、こんな素晴らしい世界をどうやって伝えようかと思った時にカメラという道具に気がついて写真家になろうと思ったんです。
それで大学卒業後に写真家として身を立てるためにどこをフィールドにしようと悩んでいたのですが、ふと夜中に寝ていたら夢の中で、オオカミが現れたんです。テーマに悩んでいた時になぜこんな夢を見るんだろうと思って図書館に行ったら、オオカミの写真集と出会いました。その写真集は、ジム・ブランデンバーグと言うナショナルジオグラフィックなどでも活躍している写真家のものでだったのですが、この写真に釘付けになりました。ぜひこの人に会いたいと思って、彼に弟子入りしたいと思って旅に出たのがミネソタ州の北部のノースウッズの森だった。それが旅の始まりでした。
ジム・ブランデンバーグに弟子入りしたいと思って手紙を出しました。ナショナルジオグラフィック社に送って転送してもらおうと思ったのですが、実際には手紙が届いていなかった。それを知らずに、待っていて返事が来なくて、こうなったら彼の家をノックして直接返事を聞こうと思って行ったんです。本人に会える確証は全くないし、相手は世界的の写真家でどこにいるかわからないけれども、とにかく手紙を出しただけではあきらめきれずに、結局旅に出てしまいました。
州北部にいることはわかっていたのですが、実際に行ってみると、より詳しい情報が手に入って、彼の家が森の奥にあることがわかって、そこまでは道路が続いていることもわかりました。車を借りればそこに行くことはできるのですが、手っ取り早い方法とることに心が反応しなかったんです。彼に会いたくて出かけたのですが、会うだけではなく自然も見てみたい、そう思って、カヤックを買って8日間位キャンプをしながら旅をしました。自然を見てビーバーに出会ったり、水鳥に出会ったり、白頭鷲の巣を見つけたりしながら旅をしていたら、現地の人たちに「日本からカヤックに乗ってやってきた奴がいる」ということで紹介してもらえて、実際に出会えたんです。


大竹英洋さんのインタビュー、いかがだったでしょうか。来週もお話の続きをお届けします。お楽しみに!


「そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ」あすなろ書房

イベント情報: http://hopnews.exblog.jp
Facebook: https://www.facebook.com/HidehiroOtakePhotography/
Instagram: https://www.instagram.com/hidehirootake/

番組の冒頭で話していた知床取材の写真です。

この模様は後日お届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・You Learn / Alanis Morissette
・Helpless / Neil Young
«Prev || 1 | 2 | 3 || Next»

PAGE TOP