2015年3月9日

3月9日 岩手県大槌町 小林寿美さん1


『あそこにみえるのがひょっこりひょうたん島と呼ばれている、蓬莱島です。大槌の人たちは蓬莱島と言っています。井上ひさしさんがひょうたんの形をみて、「ひょっこりひょうたん島」って言われています。なんか自慢になります。ひょうたん島のモデル〜♪って。
(海があってちょっと先にひょうたん島があって、そして山がある。リアス式の特徴ですよね。山も紅葉していてこんなきれいな景色があるんだなって、感動しちゃいます)』


今朝は、岩手県上閉伊郡 大槌町からのレポート。一昨年11月、大槌町のボランティアガイド「高校生語り部」として案内してくれたのが小林寿美さん。当時は高校2年生でした。

震災後、町の将来を真剣に考えるようになり、町への疑問を、町長に直接ぶつけるほどの行動派。語り部として、大槌町の津波被害を受けた建物や、様々な名所、観光スポットを教えてくれました。ひょっこりひょうたん島のモデル「蓬莱島」も、本当に誇らしげに楽しそうに、その由来や魅力を語っていました。雰囲気はあどけないのですが、いざ語り部になると、大人顔負けのトークで、被災地の抱える問題を鋭く指摘していたのが印象的でした。

あれから1年。再び寿美さんに会ってきました。場所は大槌町の旧町役場。津波で大きな被害を受け中にいた職員が多数亡くなった、震災の爪痕を残す建物です。


◆あれから一年。町役場は・・・
〜ちょうど一年前に寿美ちゃんが案内をしてくれた、元の大槌町の町役場に来ています。印象が変わりましたね。

そうですね。一部解体・一部保存ということで意見がまとまっているが、街の声としては「いらない」の方が私の耳には多く入ってきているので、この先復興が進んで行く中で、この建物の立場がどうなるのかははっきりとは決まっていない状態だと思います。

〜いらない、という声が多いのは、震災当時のことを思い出してしまう人が多いから?

そういう方も多いが、私たちにすると、いまは支援や補助で町が運営できているが、元々経済がうまくいっていない大槌町で、維持管理は私たちの世代が負担する。そう考えると、子どもたちのことを考えた親世代の反対もある。

〜琴美ちゃん自身は?

いまの段階だと、残っていてほしいし、たまに「風化」ではないが、なぜ今の状態になっているんだろう
なぜ町がないんだろうと考える時がみんなあると思って、そういう時に役場を見て、こういうことがあったのだと自分の中で思い直して、津波や地震に気をつけなきゃと思うことがあると思うので、そういう面で考えるとまだ残してほしいなと思います。


1年ぶりに大槌を案内してくれた小林寿美さんは、実は3月1日に大槌高校を卒業。現在は語り部の活動から離れています。そして、この春には就職を控えているのですが・・・寿美さんの「いま」と「これから」は、明日以降お伝えしていきます。

2015年3月5日

3月5日 震災からまる4年・福興浜団のいま(4)

いまも、行方不明者の捜索を続ける「福興浜団」上野敬幸さんのインタビューをお伝えしています。

上野さんは震災の翌年、元のご自宅のすぐ隣に一軒家を建て、そこで生活を続けています。元のご自宅

この大きなお屋敷は、津波を受けながら奇跡的に形をとどめたものです。ただ、行政から全壊判定を受け、暮らすことはできません。見渡す限り更地となった南相馬市萱浜に、このお屋敷は当時の姿のまま残されているんです。

「このお屋敷が残ったからこそ、福興浜団が活動するために集まることができた」と上野さん。

この地区の他の住民の多くは、別の場所で住宅再建・災害公営住宅への入居を進めていますが、でも上野さんは津波で失った家族と、一つ屋根の下に戻りたいという気持ちから、この土地を離れることを良しとしませんでした。行政と話し合い、家を建てることを認めてもらったと言います。
ただ、全壊と判定された 元のご自宅については、決断を迫られています。

◆壊さなければいけない
みんながいた、みんなが生活していた家なのでなかなか壊す選択、踏ん切りがつかない。でももう尻に火がついている状況。行政としても3月いっぱいに更地にしてください、というのが条件。そこまでなら市も予算があるので壊す費用は行政が出すが、自分で壊すとなると産業廃棄物扱いとなり500万円以上かかる。そんな余裕もないし、今はすごく悩んでいる時。僕もどこかでは手を付けなければいけないとは思っている。こういう状態になって、風もすごい。沿岸部はどこでもそうだと思うが、建物や防風林がなくなったことで風当たりがすごい。特に今の時期から春先にかけては全く前が見えないほどの砂埃になる時もある。風が強いので、この家を残しておけばどこかで朽ちて倒れてぶつかってくることもあるだろうし、取り壊さなければいけない時期は必ず来るだろうとは思っていた。まだ、2階には永吏可の荷物もあったりするので、それをなんとかしたいなと思っているけどね・・・ちょっと難しいですよね。
親父が建てたんです。だから僕が20歳すぎの時にできたのかな。親父はこの家を専業農家で建てたというのはすごいなと思う。けして専業農家が儲かる仕事でもないし、どちらかといえば一次産業なんていうのは一番下に見られて生活も大変じゃないですか。そんな中でこの家を親父が建てたのは、すごく頑張ったんだろうなということを今は思う。そういう部分ではすごく親父のことは尊敬していますね。だから僕にとっては宝。家族みんなでいたところなので、そこを壊すという選択を自分でしなければいけないわけじゃないですか。これを壊すのを自分では見ていられないし、でもどこかでやらなきゃいけない。それが行政に頼むしかないと今の状態で3月までと決められてしまっているので難しいです。


上野さんは元のご自宅をリフォームすることも検討したそうですが、数千万円かかるそう。また奥さんも、元の自宅で暮らすのは寂しすぎると反対したので断念しています。元のご自宅をどうするかは、今月中にご自身の中で決断しなければいけない状況となっています。


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パーソナリティ 鈴村健一

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