2015年2月12日

2月12日 震災から4年 子どもたちの今 釜小学校 土井校長 2

きのうに引き続き、震災から4年が経とうとする中、東北の子どもたちに、根深く残る「心の問題」です。

ちょうど1年前、この番組では宮城県石巻市・釜小学校の子どもたちの実態を、お伝えしました。震災と津波で25名の児童を失った釜小では、
そのショックから、精神的に不安定になる児童が数多く見られたと言います。

学校は継続的に、心のケアに務めていますが、あの大災害は、時間が経過しても子どもたちの心に暗い影を落としています。土井校長のお話です。

◆根深い心の傷
いま石巻では、震災後に千葉県の国府台病院の精神科と連携して、定期的に石巻の全児童生徒のトラウマ状態をアンケートしている。今までは落ち着きがない・情緒不安などが見て取れる様子の子どもがトラウマ診断の数値が高い子の傾向だったが、今年は逆に(そうした様子が)目立たない子の方が数値が高かった。今まで見過ごされてきた可能性のある子、表立って不安定な行動・表情を見せない子もトラウマを抱えているという事実が分かった。これは気をつけたいと思っている。カウンセラーには定期的に来てもらい、話す場を設け、強化する方向でいる。カウンセリングにも時間がかかる。一度やって治るというものでもない。


土井校長は、これは釜小学校だけの傾向ではないと思う、と話しています。そして、この調査結果を受けて、保護者へのアドバイスなども検討しているそうです。

一方、地震がくると学校を休んでしまうなど、震災を連想する状況に、敏感に反応する子どもたちについて、土井校長は状況の変化があると話します。

◆全員が参加した避難訓練
端的に出てくるのは、避難訓練の時。訓練と分かっていても、「地震が発生しました」「大津波警報が発令されました」と聞くだけでふるえが来る子どもがまだいる。でも今年度の4月に今年こそ避難訓練には全員参加を果たしましょう、という目標を立てた。それまでは避難訓練になると欠席する子ども、学校に来ても保健室で待機する子どもが必ずいた。全員参加の目標を掲げて子どもたちにも意識させた。そして今年は実現できたことは一つの成果。とはいえ「明日避難訓練がある」と予告しておかないといけない状況。突然やったらパニックになってしまう。邪道ではあるが、前もって担任が丁寧に手を取って、ここを歩く、ここが避難通路だとリハーサル・個別指導をしたうえで実施した。そういうきめ細かいステップがないと、まだ完全にはできない状態にある。そうした子たちは津波の怖い思いをしている。自分が流されたり人が流されたのを見ている。あるいは家族・身内が亡くなっている。まだまだそこから立ち直るには時間がかかると思う。


明日も、釜小学校・土井校長のお話をお伝えします。

2015年2月11日

2月11日 震災から4年 子どもたちの今 釜小学校 土井校長

今朝は震災からまもなく、4年が経過する中、東北の子どもたちに根深く残る問題について、お伝えします。

お話を聞いたのは、宮城県・石巻市 釜小学校の土井正弘校長です。
釜小学校は、現在 児童数 およそ450名。その4分の1は震災の影響で学区外から通学しており、仮設住宅から学校へ通う子どもも、数多くいます。

そして土井校長によれば、長引く仮設暮らしによるストレスで、心に変調をきたす子どもも増えていると言います。震災からまる4年。被災地の小学校の実態です。

◆子どもたちの心の変調
いわゆる発達障害をもつ子供が増えてきているのは確実。ADHDとかLDと呼ばれる障害。なかでもADHD(注意欠陥多動性障害)という、集中力が持続できず落ち着きがない子どもが増えてきている。
小学校入学までは兆候がなかったが、学校に入ってからなぜかちょっと落ち着きがないなと感じた。保護者の方に病院の受診をすすめたところ、ADHDと診断された子がうちの学校だけで4〜5人いる。乳幼児期から診断される子もいるが、むしろ後天的なものが多いのではないかと思う。集中力が続かない。

そして明らかに震災後、生活の激変の影響で、虐待を受けていると疑われる家庭の子どももいる。心理的な不安を絶えず抱えているため突然泣き出したり、情緒が不安定になる。先日の例では、女の子がたんこぶを2つ作って来た。用務教員がそれに気づいて尋ねると、「お母さんに叩かれた」という。色々聴くと、その日の朝だけでなく日常的に体罰がある。ご飯を出してくれないという事例がある。一つのきっかけにカウンセリング的に聞ける時もある。そういう虐待が起こるのは仮設住宅で暮らす子どもに多い。生活環境が変わり4年が経過するわけで、まるきり無縁かというと、なんらかの形で影響があるのではないかと思う。地域コミュニティがあるようでない状態。仮設が点在する中で、仲間がいるわけではない。そこでは孤独感がよけい募る。

地域コミュニティがしっかりしているところだと、少々隣近所で、登校しぶりがあっても、近くの子どもが声をかけられるがそういう状況がない。色んな教育問題が、凝縮された状態に石巻はあるのではないかと思う。

 
土井校長には去年の同じ時期にも、取材をしています。その時は、子どもたちの体力・学力の低下も大きな問題だと話していました。そしてその「学力」。また長引く仮設暮らしは、やはり悪影響となっています。仮設住宅では、落ち着いて勉強するスペースが取れず、また、隣の音が聞こえる環境のため、国語の「音読」を学校側が宿題として出すにも躊躇する状況が続いているということです。
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パーソナリティ 鈴村健一

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