2014年11月28日

11月28日 続・「福島の声を聞こう」(4)

作家、渡辺一枝さんが主催するトークイベント「福島の声を聞こう vol.12」

毎回ゲストスピーカーを迎えて「福島のいま」を伝えるトークの会です。
今回のゲストスピーカー、通称「かまけんさん」は、東京で働く40歳の男性。東日本大震災の翌年、2012年1月から福島県南相馬市に通って復興支援活動を続けています。

内容は「ガレキ拾い」「ビニールハウスの修復」から「ライブ演奏」までさまざま。まさに「何でも屋」として、南相馬の人達に親しまれる存在です。活動を始めて3年。かまけんさんは、地元の方たちの怒りや悲しみを、肌で感じてきたと言います。

◆『笑ってなきゃ死んじまう』
「たかはしのばあちゃん」という人がいて、ほんと僕らに見せる顔はニコニコ笑って元気なおばあちゃん。勝気な人。仮設の、元気がなくなった人を鼓舞する、牽引するおばあちゃんで、すごろくをつくったり、お手玉やおはじき、カルタをつくったり。それが絵心があってすごくうまい。例えば手縫いで200個お手玉をつくったと。それをおみくじみたいにしてみたと言って、1円玉とか5円玉とか、あたりには100円玉を入れてみたと。正月のパーティみたいなものの口上も考えたり。プロデューサー気質があって。仮設もこんな暗いんじゃだめだ、花見をやらなきゃだめだと、歌と踊りと衣装も全部自作で、元気が出る歌と踊りを考えたと。4人メンバーも集めたと。「すごいじゃん、ばあちゃん、これどういう歌なの?」と聞いたら、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして歌詞カードを見せてくれて。それが全部下ネタだった。「ずんずくずくずく、今夜は眠れねえ〜」「あんた〜!」とか。「これちょっとヤバい内容?」と聞くと「やだ!」ってバッチバチ叩いてきて。「やだって、これ自分で書いたんでしょ」と。
俺は元気なばあちゃんしか知らなかったけど、ある時ばあちゃんが「いままでつらい苦しい思いしてきたから、仮設の皆が元気でやってきゃなきゃなんねえ」と言った次の瞬間に「笑ってなきゃ死んじまう」って泣き崩れた。(俺は)びっくりして。
みんなよく「被災地の人達は強くて、わたしが逆に元気をいただきました」なんて言うけど、俺は全然そんなふうに思ったことはなくて。東京にいる俺たちだって、強くいから生きてるわけじゃ決してないわけで。自殺者は東京でも多いですけど、南相馬では焼身自殺とかまであったから。そんな中でも、ほんとなんとか踏ん張って「笑ってなきゃ死んじまうから笑って」なんとか一歩踏み出している、というのが俺の印象。翌月行ったら、花見を今度やるんだと聞いて、「よかった」と思った。
(一枝さん)
わたしたちは、現地の人達のそういう気持ちを、よくよく知って行かないといけないなと思います。


「たかはしのばあちゃん」と呼んでいたおばあさんは、娘さんとお孫さんを津波で亡くし、一時は睡眠薬が手放せない状態だったそうです。

年末年始が近づいていますが、故郷に帰れない人がいまもたくさんいる。そのことをわたしたちは忘れちゃいけないと思いました。

***

今回のイベントの様子は、会場となった「セッションハウス」のブログでチェックすることができます。 
また「福島の声を聞こう」、次回は12月12日(金)に開催されます。ゲストスピーカーは、福島県南相馬市の草野良太さん。草野さんは震災直後から「フロンティア南相馬」を立ち上げて、支援物資の配給などボランティア活動を続けています。
日程は12月12日(金)19時〜。場所は東京神楽坂のセッションハウスです。

渡辺一枝さん主催「福島の声を聞こう!」

2014年11月27日

11月27日 続・「福島の声を聞こう」(3)

作家、渡辺一枝さんが主催する「福島の声を聞こう」。毎回ゲストスピーカーを迎えて、「福島のいま」を語り、伝えるトークの会です。
今回のゲストスピーカーの一人、通称「かまけんさん」は、東京で働く40歳の男性。東日本大震災の翌年、2012年1月から福島県南相馬市に通い復興支援活動を続けています。

◆隣のじいちゃん、ばあちゃんを訪ねる感じ
活動はもう「何でも屋」って感じ。屋根を直したり、20キロ圏内に取り残された動物たちのエサやりとか捕獲の手伝いとか。あとは畑を中心とした肉体労働。必要と言われたことはなんでもやろうと思ってやってきた。今でも「支援」とか「ボランティア」とか、最初からあまりピンときてなくて、遊びに行っているというか、隣の家のじいちゃん、ばあちゃんを訪ねていくような感じで毎月通っている。
俺たち最初評判悪かったからね。モヒカンとか金髪とか刺青とかがぞろぞろ行って、仮設で仕事し始めて、「あいつらなんなんだ」みたいな感じになってたから。それで顔を覚えてもらったみたいなところもあったけど。


南相馬に通うようになって3年。かまけんさんは、ほぼ毎月1〜2回のペースで、仕事を終えた金曜日の夜に、車で南相馬に向かいます。活動の名前は「百足団(むかでだん)」。「福島でボランティアをしたい人のプラットフォームみたいなもの」とかまけんさんは言います。

◆心にぽっかり穴が
去年くらいからすごく仮設は混とんとしていると、向こうの自治会長さんから聞いたりしている。ちょっと話がそれるけど、向こうの民家で一昨年の12月にライブをやった。音楽を演奏させてもらった。懐メロのカバーとか。そのきっかけとなったのが、一昨年の夏。カズオさんという旦那がいて、ご家族を津波で亡くされて、「そういえばお前ら派手ななりしているけど、エレキやってるんだろ」と言われて、「ああ、エレキやってます」と言ったら、「今日仲間呼ぶから、晩飯のときに歌を歌ってくれ」と言われて。自分は下手の横好きでずっとバンドを続けているけど、原発事故の後、「音楽なんてクソの役にもたたん」と思って、非常に落ち込んだりもしたり、自分には何ができるんだろうと思ったりして、それでいろいろ(肉体労働とかを)やってきたら、ある日カズオさんに歌ってくれと言われて。
「なんで歌なの?」と聞いたら、「いままで生きるか死ぬかで必死にやってきて、そんな余裕まるでなかったけど、いま心にぽっかり穴が空いてしまったような、そういう時期、そういう段階にみんな入ってきたんだ」という話を聞いて。
あ、なるほどなと。それで「上を向いて歩こう」だとかをいろいろやらせてもらったんだけど。だから、だんだん「心のケア」みないなものが、例えば「話を聴くだけ」とか「愚痴聴くだけ」とかが必要なんじゃないか。
(一枝さん)
いま話に出たカズオさんは、仕事場が海とはちょっと離れたところにあって、地震のあとで一回自宅に戻ってみたら、奥さんが自宅を片付けていたので「大丈夫か?」と聞いたら「大丈夫だ」と言うんで、安心して、また職場に戻ったら、その日に家ごと奥さんが流されて、まだ見つかってないという方。


若い世代が比較的少ない中、かまけんさんたちのサポートは、仮設住宅に住むお年寄りの支えになっているようです。

***

次回の「福島の声を聞こう」。ゲストスピーカーは、福島県南相馬市の草野良太さんです。
草野さんは震災直後から「フロンティア南相馬」を立ち上げて、支援物資の配給などボランティア活動を続けています。日程は12月12日(金)19時〜。場所は東京神楽坂のセッションハウスです。

渡辺一枝さん主催「福島の声を聞こう!」
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パーソナリティ 鈴村健一

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