2014年11月20日

11月19日 映画『フタバから遠く離れて 第二部』(3)

今週は、映画「フタバから遠く離れて【第二部】」、舩橋敦監督のインタビューです。舩橋監督は震災直後から、双葉町の町民の避難生活を取材。今回映画の「第二部」が完成し、先日公開が始まりました。

双葉町役場によると、現在町民の避難先は、全国47都道府県におよびます。福島県内だけでも、28の市や町に居住。この数字から見えてくるのは、町民が慣れ親しんだコミュニティを失い、ちりぢりになっている現状です。舩橋監督が度々口にしたのは、「コミュニティの分断」という言葉でした。

◆時間と共に重くのしかかる、コミュニティの分断
いままで持っていた町を全部はぎ取られた痛みが、彼らの日常。家に帰れないこと、自分の田畑を耕せないこと、いつも会っていた友達に会えない、一緒にやっていた運動会ができないなどコミュニティの喪失、歴史や風土がある双葉町の日常を感じることができないこと。風景無形のいろんなことがはぎ取られてしまった。仮設住宅というプレハブに住んで、人間性を全てはぎとられた感じ。そこの痛みが、一番彼らが感じていること。それが時間と共にどんどん重くのしかかっている。
日本人は時間軸上の被害の見積もりが下手。決めない。宙吊りのまま放っておく。いつ帰れるか言わない。言うと責任が生じるからみんなだんまりを決め込む。たとえば80歳のおばあちゃんは「最低6年帰れない」と聞いたら、「6年後には帰れるかもしれない」と思う。なのにばあちゃんが86歳になったときに官僚が「やっぱりあと10年帰れません」と言ったら、そのばあちゃんの6年はどうなるのか。若い世代にしてみたら、最低6年帰れないけれどもその後はわからないと聞いたら、まるごとやめよう、福島には寄り付かないでおこう、ということになる。トップの決めない態度、あやふやな態度が、コミュニティを分断している。はっきりどこまでが大丈夫でどこまでがだめだとか、最低限50年だめだとかだけどと言われれば、一緒に移動できるからコミュニティは一緒にいられる。でもトップがふわふわしていると、コミュニティが分断される。それが僕はおかしいと思う。


そんな中で、「双葉の絆を保とう」という取り組みも行われています。

◆双葉だるま
双葉町のコミュニティのきずなを保っていこうということで、双葉町で行われていたことは仮設でもやろうとしている。例えば正月のだるま市。双葉町の皆さんはだるまをたくさん買う。「双葉だるま」というのがあって、赤いだるまに青い顔を描く。それが開運につながるというのがあるみたい。正月にだるまをたくさんかって、それをみんなに配る、というのが、正月の儀式。仮設住宅でもだるま市をやっている。(避難などで住民が)遠くに離れても、やっぱりだるま市があるということで、正月は仮設住宅がすごい人口密度になる。そういうときはうれしそうにしているな、という感じがある。それは年に一回のことで、なかなか心のよりどころと言えるかどうかは難しいが。一年間に一度だけ同窓会をやるとか。そういったことは行われている。



映画「フタバから遠く離れて【第二部】」は現在、東京・東中野の「ポレポレ東中野」で公開中です。
舩橋監督のトークイベントも予定されています。詳しくは「ポレポレ東中野」のオフィシャルサイトで確認してください。

『フタバから遠く離れて 第二部』 公式サイト

2014年11月18日

11月18日 映画『フタバから遠く離れて 第二部』(2)

今週は、映画「フタバから遠く離れて【第二部】」、
舩橋敦監督のインタビューです。

舩橋監督は震災直後から、双葉町の町民の避難生活を取材。今回は映画の「第二部」を完成し、先日公開が始まりました。町は現在「帰還困難区域」と「避難指示解除準備区域」の2つに分かれていますが、96%は帰還の見通しが立たない「帰還困難区域」です。
さらに今、問題となっているのが、「中間貯蔵施設」の建設。
町や町民の思いを無視して、福島県が、大熊町、双葉町での「施設受け入れ」を表明し、波紋が広がっています。


◆中間貯蔵施設をめぐる報道
福島県は8月30日に中間貯蔵施設の受け入れを表明した。その後に、双葉町の伊澤町長と大熊町の渡辺町長を連れて、安倍晋三首相の前に行って「福島は受け入れます」と表明、がっちり握手をしている。その写真を見ていただくとわかるが、首相と県知事はがっちり視線を合わせて握手をしているが、伊沢町長と大熊町長は視線をはずして、宙を見ている。なぜかというと、彼らははめられたから。彼らは中間貯蔵施設の件で「話し合うために」安倍さんのところのに行っただけ。これは町長から直接聞いた話だから間違いないと思うが、二人の町長は「地権者と国が直接交渉するのは構わない」ということを言いにいった。結局そこの土地を明け渡すかどうかは、地権者に権利がある。これは日本国憲法の財産権の問題で、町や県が土地を召し上げるのを許可するとはいえない。国が直接地権者と交渉するのは構わない、町や県が間に入ることはできないと、ごく当たり前のことを言っただけ。だけど、県知事はなんと「受け入れます」と言った。つまり二つのレイヤーがある。
受け入れるかどうかの判断は自分たちですべきじゃないという人達がいて、一方は「受け入れます」と言っている。その引きで写真をとって、メディアでどう流れるかというと、首相と県知事ががっちり握手をしているし、「福島は中間貯蔵施設を受け入れ」と出ている。
これが、メディアがおおざっぱすぎるところ。そういった文脈をつくってしまって、国と県の思惑の片棒を担いでしまっている。でも町も町民もまだ受け入れはOKとは言っていない。
これは沖縄の基地問題なんかと共通するところ。トップダウンで権力が下の人を踏みつぶす。こういったことが少しずつ進んでいて、その間に挟まれて町民が苦しんでいる、という状態。


また、この「中間貯蔵施設」の受け入れに関しては、東京に住むわたしたちも、決して他人事ではないと、舩橋監督は言います。

◆原発は遠く離れた方に犠牲を追わせるシステム
福島はこんなに汚れているんだから、福島や双葉に放射能のゴミためをつくるのは、それは仕方ないでしょ、という意見もあるが、ちょっと待ってほしい。これは東京が使った電気のためにでたゴミ。東京に持ってきてもおかしくない。百歩譲って東京と大熊と双葉で分け合うかもしれない。段ボールで宅配便で除染の土が各家庭に送られてきたらどうするか。なぜならあなた方も福島で作った電力をつかったでしょと。自分の庭に送られてくると、みんな怒る。逆にいうと、自分の庭に送られてこないと、そこまでは忘れている。だけど、原発というのは、遠く離れた方に犠牲を追わせて、それが見えない状況になるシステムでもある。東京の人間はそれに依存して寄りかかってきた。なのにさらに、犠牲を強いるような中間貯蔵施設を双葉、大熊の方に押しつけていいのかという倫理の問題がある。



映画「フタバから遠く離れて【第二部】」は現在、東京・東中野の「ポレポレ東中野」で公開中です。
舩橋監督のトークイベントも予定されています。詳しくは「ポレポレ東中野」のオフィシャルサイトで確認してください。

『フタバから遠く離れて 第二部』 公式サイト
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パーソナリティ 鈴村健一

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