2014年10月7日

10月7日 福島の温故知新を伝える季刊紙『板木』2

今朝も、福島の年中行事を伝える季刊紙『板木(ばんぎ)』についてお伝えします。



『板木』は、A5サイズの小さな雑誌で、春・夏・秋・冬、年4回発行されています。例えば、今年の春・3月に発行された 第4号の特集は、「田植え」です。厳しい冬を越え、いよいよ田植えの準備に取りかかる、春。この時期にも、福島の人々が、昔からずうっと繰り返し、積み重ねてきた知恵が、たくさんあるんです。

◆雪うさぎが教えてくれる知恵
田植えは日本人の生活の根本になっているんですね。五穀豊穣を願ってお祭りをしたりお祈りをするんです。田の神様がいる神事がお田植え。田の神様は「さ」という。五月は「五月(さつき)」でお米の苗は「早苗(さなえ)」全部「さ」という言葉が田んぼに関係している。普段自分たちが使っている何気ない言葉が、実は行事と関係していたりということが繋がって行く。田植えのことが分かって稲刈りを調べると、またそこに繋がって行く。田植えの前にも実は準備が必要で、田起こしという固まった土を柔らかくほぐす作業がある。それも福島市に吾妻山という山があって、そこには白ウサギという雪が溶けるとウサギの形になる景色があるんですね。それは福島市内ならどこからでも見えるんです。そのウサギが見えると種まきの合図にしていたらしい。そういう風に自然とともに人々の暮らしがあって、例えば今だと「気温が何度だから田植えをしよう」だけど、そうではなく、「ああ雪ウサギが見えたね、じゃあ種まきをしましょう」という画が浮かんでくる。それが本当に美しくて神々しい。そういうものを知ると、自然の力を借りて自分の暮らしがあるというのが分かるようになってくるんです。





※上下ともに撮影:佐久間智之(市民カメラマン

板木の編集長・木下真理子さんはそう話します。この「雪うさぎ」、福島市内のお年寄りなら、誰でも知っていて、実は全国各地、季節季節で、このような「米作りの目安」は存在するそうです。

自然と向き合うことで培われた、昔の人々の知恵。それを取材する中で、板木・編集長の木下さん自身にも、気づきがあったと言います。

◆見過ごしていた景色が変わる
暮らしが変わります。私自身の暮らしが変わって行っている気がしますね。別に田植えは意識しなければそのまますぎて行く季節なんですけど、田植えの背景を知るとやけに田植えの風景が神々しいんです。緑がキラキラして見えたり、他の地域に行っても田植えの状況が気になってしまうんです。こっちの方が早いんだとか。こっちは田植えが終わっているのねとか。今まで通り過ぎていた景色に目がいく感覚がありますね。例えば秋になったら「ああ稲穂が実っている」ということにやけに感激しちゃったり。それは私自身が感じるように誌面を見た人がそう思ってくれたらいいなと思いながら、誌面作りをしています。


明日も、『板木』編集長 木下真理子さんのインタビューをお届けします。

2014年10月6日

10月6日 福島の温故知新を伝える季刊紙『板木』1

今朝は、季節とともに繰り返す、人々の営みを伝える、小冊子をご紹介します。

福島市が発行する小冊子『板木(ばんぎ)』です。春・夏・秋・冬、年4回発行されるこの小冊子は、福島で、昔から伝わる季節の行事や、それにひもづく歴史・文化を伝えています。創刊は2013年・夏。9月に最新号として「6号」が出たばかりです。

「板木」を手がけるフリー編集者・木下真理子さんに伺いました。

◆昔の人々の伝達手段
版木は字の通り、板なんです。それをカンカンカンと打つんですが、家の玄関先に吊るしてあって、これをカンカンと鳴らすとお客さんが来た合図だったり、村に響くくらいの音がするので、田植えの季節のお昼の合図などだったそうです。伝える手段が版木。版木が福島の歴史や文化を伝えて行くもの・・・という意味を込めて名付けました。




板木は、叩く回数などで伝える内容を区別していたそうで、災害が起きた時のサイレンの役割もしていたと言います。だから集落の代表者のお家にあったとか。

福島市の文化施設内に移築された古民家には、板木の実物が現在も使える状態になっています。そして小冊子『板木』は、この文化施設の活動を元に、特集が組まれています。

◆福島の温故知新を伝える
震災がきっかけになって、蔵や昔の建物が壊れてしまった中で「福島で伝える温故知新」という副題をつけていて、昔ながらのものを伝えて未来を考えて行く・・・という冊子。福島市の山の麓に「民家園」という古民家を移築した村のような施設があり、そこでは毎月、年間行事が行われています。1月なら小正月、2月なら豆まき、3月なら桃の節句。毎月日本古来の行事があって施設のボランティアスタッフのおじいちゃんおばあちゃんが、来場者の方にその行事の体験を提供する。一緒に餅つきをしたりワラ細工をやったり。その背景にどういうことが隠されていて、ということをひもといて分かりやすく、30代〜40代の女性・お母さん世代に伝えて行けたらという構成を板木ではしています。1号は「お盆」というタイトル。いきなり難しかったんですけど、お盆っていいなというのを若い人たちにどうやったら思ってもらえるのか。自分たちがまず分からないのでおじいちゃん、おばあちゃんに聞くんですね。その中で自分たちがお盆を理解する。でも聞いてみると正解が無いんです。家々や地区でちょっとずつ違うので、あくまで板木で伝えられるのは一つの例としての地域としての特徴も加えつつ、自分のおばあちゃんに聞いてみるというのも面白いと思う。掘り下げて(おばあちゃんに聞くと)「分からない」という答えが返ってくる(笑)「そういうものだから」って。実はおじいちゃんおばあちゃんも、受け継いで当たり前にやっているものだから、そこは、ああそういうものなんだなと思いながら形にしています。多様性があるということからスタートしたような形ですね。


「板木」発行元である、福島市 教育委員会には、「震災で蔵を壊さないといけない。その前に中のものを見てほしい」という問い合わせがたくさん寄せられたという。季刊紙『板木』は、そうした蔵の中にあるような昔の道具、先人たちの知恵を季節ごとに伝えて行きたいという想いから生まれたということです。



明日も、編集長・木下真理子さんのインタビューをお届けします。

★『板木』購入方法について

★福島市 民家園
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パーソナリティ 鈴村健一

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