2014年2月25日

2月25日 「外部被ばく」の今

福島の放射線被ばくの「現状」、今日は「外部被ばく」です。
お話は、東京大学医科学研究所の、坪倉正治先生。
坪倉先生は震災後、南相馬市立総合病院の非常勤内科医として勤務。ホールボディカウンターによる検査や、結果の説明などを通して、福島の被ばく医療に携わってきました。

◆長時間生活する場所の線量を下げる
身体の外にある放射性物質から出る放射線で被ばくしてしまうのを「外部被ばく」という。いま現在福島県内でふつうに人が居住している空間においては、体にガラスバッチという機械をつけて、どれくらい被ばくしているかを3か月くらい集計したりすると、いまの生活で年間の被ばく線量が5ミリシーベルトとか10ミリシーベルト増えるような人はほとんどいない。特に子供は、24時間のうち3分の1くらい学校で生活するし、3分の1くらいは家で生活することが多いわけなので、トータルの被ばく量はものすごく減っていて、プラス1ミリ被ばく量が増えるか増えないかという範囲の人がほとんど。少し放射線量が高い地域で、農業などを営んでいて、外で活動することが非常に長い方には、プラス2ミリ、プラス3ミリ、場合によっては5ミリぐらいの被ばくをする人がいるが、ごく一部だし、子供たちがそんな形で被ばくにさらされている状態では決してない。
一番大事なのは、長時間生活する場所の線量がどのくらいかということ。通学路のホットスポットの横を数秒通りぬけるのも気にはかかるが、それより、8時間寝る場所の線量が低いか、授業を受けている時間が長いわけだから、学校がちゃんと除染されているか、というのが一番大事。それは、ほとんどの場合建物の中だから、被ばく量がすごく低減されていて、いま現在子供が生活している場所で、被ばく量がプラス5ミリ、プラス10ミリになる場合はほとんどないといっていいと思う。いままでの科学の知見から、被ばく量によって子供が害悪を受けるようなレベルには到底到達していない。
ただ以前に比べて被ばく量が増えましたか?という質問に対しては、「やや増えた」というのが科学的には事実であって、それに対して嫌だなと思うのは確かだと思う。より減らしていくためには、長時間いる場所の線量を少しずつ下げていくのが一番いいし、定期的にチェックしながら様子を見ていくしかないよね、というお話をさせていただいている。


きのうは福島の内部被ばくについて、今日は外部被ばくの現状についてお送りしましたが、こうした放射能に関する正確な知識は、まだ十分に認識されていないと坪倉先生は話します。そこで近隣の中学校や高校を訪れて、放射能に関する授業も行っているそうです。
明日はそんな、放射能教育についてのお話です。

2014年2月24日

2月24日 「内部被ばく」の今

今日から3日間は、福島の 放射線被ばくに関するインタビューです。

お話は、以前にも一度ご出演いただいた、東京大学医科学研究所、坪倉正治先生。坪倉先生は、震災直後から福島に通い、南相馬市立総合病院の非常勤内科医として、地域の皆さんの被ばくと、向き合ってきました。坪倉先生が捕える、福島の放射線被ばくの「現状」とは。今日はまず、「内部被ばく」です。

◆放射性物質が溜まりにくい食材と溜まりやすい食材
まず被ばくには「内部被ばく」と「外部被ばく」がある。「内部被ばく」は体の内部に放射性物質を取り込んでしまって受ける被ばくで、主に汚染された食品から起こるわけだが、いま現在の福島県内において非常に低い、リスクはほぼ皆無に近いといってもいいくらいに抑えられていると言えると思う。
わかってきたことは、放射性物質が溜まりやすい食材と溜まりにくい食材にほぼ色分けされる。根菜類(大根やねぎなど)のように根の深いものは、放射性物質が土の表面にがちっとつくので、植物自体にほとんど吸収されない。だから、福島県内の非常に汚染の高いところで作ろうが、汚染の高いものにはならない。魚の汚染も似ていて、タコとかイカとかエビとかカニとかは、外側に放射性物質を排泄するスピードが非常に高くて、かなり汚染度が高い海域でも(放射性物質を)検出しない状態が2年以上続いている。相馬の漁業などでも全然出ていない。その代り、いくつかの放射性物質が溜まりやすいタイプの魚があって、底魚や沿岸漁業系の魚など回遊魚はもともとリスクが低い。「福島産」だからよくないとか、「福島産」以外だったらどうこうという話ではなく、どういう食べもの種類なら放射性物質が溜まりやすい、溜まりにくいというのが、きれいに色分けされている。もちろんインターネット上で厚生労働省のデータベースを見ると、どういうものに出荷制限がかかっているかという一覧がある。
ただ、繰り返しになるが、例えば「キノコに放射性物質がたまりやすい」という話をしたときに、普通にスーパーで売っているキノコにリスクがあるという話ではない。汚染度の高いところで露地ものを自分で採って、検査もせずに食べるという、いくつもの条件が重ならないと、汚染にはつながらない。だから一般の方がスーパーに行って考えるべきことは、(放射能の)汚染の話ではなく栄養のバランスのことだと思う。


「LOVE&HOPE」、明日は坪倉先生にきく、“外部被ばく”の現状です。
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パーソナリティ 鈴村健一

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