SCHOOL OF LOCK! | ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016 LIVEレポーター募集!

8月13日(土) クリープハイプ
『太陽の下響く、危うい甘美ロック』

RN 篠崎未波 大阪府 18歳



序盤から圧倒的な盛り上がりを見せたGRASS STAGEに、二番手として登場したのはクリープハイプ。

「おはようございます、クリープハイプです。」と尾崎世界観(Vo.)の、やけにきっちりとした挨拶と共に"バブル、弾ける"の優しいギターの音色が広大なGRASS STAGEに響き渡る。

時間帯もちょうどお昼真っ只中ということで日差しが強かったのだが、そんなことも感じさせなくなるほど穏やかで気持ちの良い空間に変わっていく。
じっくり観客を惹き込んだところで、今度は一転して爽やかな瑞々しさに溢れる"イノチミジカシコイセヨオトメ"を演奏した。
ここで尾崎がアコースティックギターに持ち替え、長谷川カオナシ(Ba. / Cho.)とツインボーカルで艶のある一曲、"グレーマンのせいにする"。尾崎とカオナシが入れ替わり立ち替わり主旋律とコーラスを歌い上げる様子はさすがの一言であり、とても贅沢で濃密な時間だった。
幻想的な空気もそのままに、神秘的なアレンジのイントロから始まった"憂、燦々"では小泉拓(Dr.)とカオナシのしっかりとしたリズムワークに小川幸慈(Gt)の透き通るようなギターエッセンスが乗せられ、私たちをどこまでも連れていってくれるようなそんな気分にしてくれた。
曲が終わると、照れたような笑みを浮かべ尾崎は「またここに立てて嬉しいです。」と喜びの想いを伝えた。もちろん一番嬉しいのはアーティストで間違いないのだが、観客として、一ファンとしてはこのGRASS STAGEでクリープハイプが伸び伸びと気持ちの良い音を鳴らしている姿を目撃できることはとても幸せなことである。

「普段はなんかもうどうしようもなくて、夏らしい思い出なんかなんにもないんだけど…夏っぽい曲をいくつか歌います」と、尾崎。

今日メンバーの中で一番夏らしい短パンという服装をしたなんとも彼らしい一言を皮切りに、"オレンジ"、"エロ"、"ラブホテル"と流れる汗も吹き飛ばしてくれるような曲を色気たっぷりに歌い上げる。
時折、カオナシが手拍子を煽ってみたり、小川が笑顔でこちらを見渡すようにギターを奏でたりと観客とステージとの距離は一気に縮まっていく。

その熱も収まらないまま尾崎は8/10に発売された10枚目のシングル「鬼」について触れ、これがバンド初のドラマ主題歌にも選ばれていることを話すと客席からは大きな歓声が起きた。それを聞いた尾崎は少し照れ笑いを浮かべ、「こんなに人がいてくれて嬉しい、これからも近くにいて下さい。」と素直な愛を投げかけた。
こうして披露された"鬼"は、じわじわと体をくすぐるような横ノリのリズムに小泉とカオナシのコーラスワークが絶妙に絡み合い、より一層妖艶な雰囲気が増していく。以前よりもワンランク上を切り拓いた新しいバンドサウンドの形に観客は魅了されていた。

気持ち良い余韻に飲まれているのも束の間、舞台袖からキーボードが運ばれてくる。その前にそっと鎮座したのはカオナシだ。これから一体何が始まるのかと少しざわめき出した観客を前に、尾崎はギターを置き、マイクスタンドの前に立った。穏やかな顔でそっと歌い出したのは、9月発売のニューアルバムに収録されている新曲、"5%"。いつになく柔らかい声で言葉を紡ぐように歌う尾崎に楽器隊の深いグルーヴ感に包まれたメロディが重なって、うっとりと聞き惚れる観客。野外ならではの開放感にスローなこのナンバーがマッチしており、とても気持ち良かった。 だが、もちろん穏やかなままでは終わらせないのがクリープハイプ。先ほどとは打って変わって攻めのサウンドが体中に突き刺さる"社会の窓"。小川の挑発的なギターソロには思わず声を出して興奮してしまった。日頃の不満を爆発させるように手を上げて身を委ねている観客と、「余計なお世話だよバーカ」と毒づく尾崎が一体となって共鳴している。これほどまでに負のエネルギーを生きることに消費させてくれるバンドはきっと他にいない。

ラストは彼らの鉄板の武器、"HE IS MINE"。照明の演出も相まって、艶めいた四人の姿が改めて観客をハッとさせる。間奏では尾崎が不敵な笑みを浮かべながら「いけますか皆さん?」という恒例のやり取りがあり観客のボルテージは徐々に最高点へと向かっていく。限界に達したころで、ひたちなかの空に「セックスしよう」というほとんど叫び声に近い大合唱が大きく広がった。紛れもなく心も体も全員が一体になった瞬間だった。

この日、「砂ぼこりもみんなが起こしたと思ったら愛しい。いっぱい吸い込みたいです。」という尾崎の発言も飛び出すぐらいに、この時間のGRASS STAGEは密度の濃い愛に溢れていた。音を鳴らせる喜び、そしてそれに答えるように音を感じる喜び。
バンド対観客ではなく、バンド対1人1人との対話を慈しむようなクリープハイプの演奏は素晴らしい盛り上がりを見せ、どこまでも綺麗で壊れそうなほど繊細なアクトだった。

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