みらい図鑑

VOL.252「加賀獅子頭」

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石川県・加賀地方に伝わる伝統芸能。
町を上げて繰り広げる豪勢な獅子舞は、
「加賀獅子(かがじし)」、と呼ばれています。

獅子の頭、「獅子頭(ししがしら)」は、町の守り神。
金沢市では、現在も町ごとに獅子頭が大切にされていて、
その数は、優に200以上を超えます。

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獅子頭職人の知田善博(ちだ・よしひろ)さんは、獅子頭を作り続けて40年。

地元の霊峰・白山のふもとに育つ桐の原木から、
一刀一刀、心を込めて、手作りの新しい獅子頭を彫り上げるだけでなく、
過去に作られた獅子頭の修繕もおこなっています。

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知田さんにお話を伺いました。

「加賀獅子の場合は、隣の町に負けたくない、とか、
おらが町のお獅子がいちばん格好いい、って、みなさん思っているんですね。
それを作ってあげなきゃいけないんで、
一頭一頭、大きさも、色も形も、みんな違います。
それを直していくのも僕の仕事です。」

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古いものになると、400年ぐらい前のものもあるという獅子頭。

数ある中から見ていくと、作った職人さんやその職人さんの性格など、
いろんなことが分かるという知田さん。

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「本当に面白いなあと思っているんですが、
職人は僕しか残っていません。

うちには息子がいて、もうひとり若い弟子もいますが、
次の世代になんとか引き継いでいかなければいけないな、という想いですね。」

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災難をくいとめる守り神であり、
縁起物としても親しまれている「加賀獅子頭」。

大きな口を開けて、
困難な時代の厄災をパクパクと食べてもらいたいですね。


VOL.251「雄勝の硯」

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室町時代から600年以上続く、硯(すずり)の名産地、
宮城県石巻市雄勝町。

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東日本大震災による津波で被災した町で、
硯職人の遠藤弘行さんは、今日も、石を彫って硯を作っています。

「そうですね、仕事場も自宅も、何もかもなくなっちゃったんですけどね。
ノミ10本と原石さえあれば、どこでもできるんです。
だけど、いい石があっても、それを製品にする職人さんがいないとダメですよね。
作るしかないな、という想いで10年やっているんです。」

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津波に流された、遠藤さんの工房と自宅。
瓦礫の中をかき分け見に行くと、震災前のものが見つかり、
かき集めているうちに、「ああ、これは、このまま作り続けろということかな。」、
と、思ったと遠藤さんは言います。



もともと職人ではなく、採石場で石を採る仕事を3代に渡ってしていた遠藤家。

雄勝の山にはいろんな良い石がある。
ですが、こだわりの職人がいないと硯は作れません。

良い石を製品として残したい、という思いで、
採石業から職人になったのが遠藤さんの父親でした。



「うちの場合は手作りなので、石を見ながら作るんですね。
一個一個、形が違いますよね。
その石の形を生かしながら硯を作るんです。」

父親の思いを受け継ぎ、
“石の個性を見る硯づくり”を、遠藤さんは続けています。

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墨をすっているだけで、心が落ち着いてくる。
そんな硯を雄勝で作り続けたい、と語る遠藤さん。

「良い石と墨がマッチすると、気持ちが整うというんですかね。
それが一番良い硯だと思っています。

こういう、コロナの時代になって、うちのなかで時間を忘れるゆとりというかね。
ぜひ、石の硯でゆっくり墨をすって、
今の想いを書いてみてもらえたらな、と思っているんです。」
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