みらい図鑑

VOL.242「伊那谷のアカマツで作る、経木」

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日本で古くから使われてきた包装材、「経木(きょうぎ)」。

森から伐採した木を、薄く削って乾燥させて作る伝統の技です。

現代のようにプラスチック製品がない時代、
木ならではの適度な湿度を保つ作用や、通気性・抗菌性を活かし、
食材や調理したものを包み、鮮度を保つのに重宝されていました。

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そんな経木を作っているのが、長野県伊那市にある会社、「やまとわ」。

地域の資源を守ろうと、伊那市の地域材である「アカマツ」の木を原料に、
素材から生産まで全て信州伊那谷産で、
「信州経木Shiki」というブランド展開をしています。

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抗菌や調湿作用の他にも、水分や油分を吸い取る力など、
経木に向いている「アカマツ」の特性を
最大限に活かして作られた「信州経木Shiki」。

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まな板代わりに、落し蓋に、食材の保存に、料理の包装材に、
さらには、飾りにも、、、その用途は多伎に渡ります。

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「やまとわ」、奥田悠史(おくだ・ゆうじ)さんのお話です。

「アカマツっていう木は、ぜんぜん価値がつかなくて、
スギやヒノキよりも値段がつかないんですが、
私たちが暮らす伊那谷の森は、30%近くがアカマツなんですね。
経木をたくさん使っていただくなかで、アカマツにも価値がつき、
森が豊かになる循環を作りたいなと思って取り組んでいます。」

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地域の木材に新たな価値をつけ、
暮らしの中で利用することは、
森の明るい未来へとつながる。

そんな思いで「やまとわ」は、商品開発に取り組んでいます。

「森の問題とかプラスチックの問題って、
普段生活している中では、気づかないというか、
自分ごとになりにくいと思うんですね。
経木は、日常の中で使うことができて、
それが森を豊かにすることを、是非、知っていただけたら嬉しいです。」

木のぬくもりを感じながら頂く料理は、きっと格別ですよ。

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VOL.241「丹波布」

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兵庫県丹波市青垣町(あおがきちょう)。

かつて、この町に暮らす農家たちが、
農閑期である冬の間の収入源として作り始めたのが、「丹波布(たんばぬの)」。

畑で栽培した綿から糸をつむぎ、
栗の皮や草木で染め、
絹を混ぜながら、
手織りで仕上げます。

全ての工程を一人の手でおこなう、この地域の伝統織物は、
国指定選択無形文化財に指定されています。

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200年の歴史を持つ「丹波布」、
工業化の波が押し寄せた明治時代に、一度、途絶えてしまいますが、
その後、昭和に入り、復活を果たしました。

そんな「丹波布」の文化を、後世に伝えていくための施設、「丹波布伝承館」。

糸つむぎ・染色・機織りなどの技術を伝承するほか、
機織りや草木染など、丹波布の全てが分かる展示コーナーや、
体験コーナーが設けられていて、糸つむぎ教室も開催しています。

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「丹波布伝承館」、指導員の廣内 良(ひろうち・りょう)さんに伺いました。

「ほぼ手作りで、身の回りにあるものを上手く利用して織る織物ですから、
生産量としては多くはありません。

そういった中で丹波布の伝承館では、機織り体験とか糸つむぎ体験とか、
綿と種を分離する“綿繰り”という作業を体験していただけます。

糸つむぎに関しては、綿が糸になることを不思議に思う方がたくさんいます。
それをちょっとでも自分で体験すると、
難しいな、すぐ切れるな、ということを実感しながらも、
自分も出来るようになりたいという方が、少しずつ増えている印象ですね。」

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地場の作物があってこその「丹波布」。
その使い心地は、こんなものでも体感できます。

現在、伝承館で販売されている「丹波布マスク」。
そのつけ心地は抜群だそうですよ。
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