ON AIR REPORT オンエアレポート

「ハバネラ」特集!

18/05/21


今夜もお聴きいただきありがとうございます。突然ですが、5月20日は「キューバ独立記念日」でした。キューバといえば・・・
フロリダの南に位置するカリブ海最大の島で、葉巻やラム酒が世界的に有名です。首都はハバナ。音楽文化に目を向けると、キューバは地理的な影響もあり、ラテン音楽の中枢的な存在といえます。スペイン系とアフリカ系の音楽が融合したものをベースに、様々な要素が混じり合って独自の発展を遂げてきました。「ルンバ」「マンボ」「チャチャチャ」「ハバネラ」などもキューバ発祥です。


M1 ビゼー 歌劇《 カルメン》第一幕より<ハバネラ>/マリア・カラス(ソプラノ)、ジョルジュ・プレートル指揮、フランス国立放送管弦楽団
M2 イラディエル 《ラ・パロマ La Paloma》/トリオ・ロス・パンチョス
M3 ラヴェル 《スペイン狂詩曲》より第3曲<ハバネラ>/シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団
M4 サン=サーンス 《ハバネラ》op.83/イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)、ズービン・メータ指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック

M1は「ハバネラ」というタイトルの曲の中でも最も有名ですが、実は、ビゼーはハバネラのリズムをスペインの民族音楽と誤解して用いていましたこの「ターッタ・タッタ」という特徴あるリズムは最初、船乗りたちによってスペインに広がったと言われています。また、キューバを訪れていたスペイン人作曲家、セバスティアン・イラディエルがこのリズムを用いた作品を発表したことで、スペインおよび近隣諸国に広く知られるようになったと考えられています。。「ハバネラ」とは首都ハバナに語源があります。ビゼーが作曲に取りかかる以前の1860年代にすでにキューバからスペインにハバネラのリズム、それを用いた作品が広く知られていたんですね。

イラディエル(1809-1865)はキューバに長く滞在し、土着のハバネラをとても気に入り、ハバネラのリズムを使った歌を数多く作曲、彼のハバネラはスペイン国内のみならずアメリカ、メキシコでも大成功を収め、国際的にハバネラを知らしめる原点となりました。その中で1860年頃に作曲したM2「ラ・パロマ」がとりわけ有名になりました。

ビゼーの例からもわかる通り、実はキューバ発祥のリズムでありながら、スペイン人イラディエルの作品のおかげでスペインの民族音楽として誤解されたため、ハバネラは「スペインらしさ」を表現する手段として取り入れられてきました。ラヴェルも誤解して取り入れた一人かもしれません。ラヴェルの『スペイン狂詩曲』の「ハバネラ」(M3)は、M1ともM2ともちがう独特の世界観をもっています。

M4サン=サーンスの「ハバネラ」は、ヴァイオリニストのアルベルティーニと共に演奏旅行に出かけた際、着想。その際、アルベルティーニがキューバ出身だったことが発想の源となったと言われます。1887年に完成し、旅行の思い出としてアルベルティーニに献呈されています。

ハバネラは世界で最初に広まったラテン音楽ともいえます。後にフラメンコと融合し、アルゼンチンに上陸してタンゴとして発展を遂げていきます。「ラテン音楽」の世界もなかなか興味深いですね。また別の機会に改めて「ラテン音楽」とクラシック音楽の関係について取り上げてみたいと思います!