三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2025.10.14

あなたの睡眠の真実を

株式会社 株式会社S'UIMIN
取締役CSO会長
柳沢 正史
睡眠ソリューションを提供


ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います。

まずはプロフィールをご紹介します。柳沢 正史さんは、1960年、東京のご出身。これまでに血管の収縮に作用する「エンドセリン」や、睡眠と覚醒を制御する「オレキシン」を発見。睡眠学のトップ研究者として世界的に有名でノーベル賞も期待されています。以前、7時台のニュースコーナーで睡眠の話題の時にお世話になりました。また、2017年には、株式会社S'UIMIN(スイミン)を起業されています。
筑波大学で医学を勉強されていますが、医学部を目指したのはなぜなんでしょうか?

「医者になりたかったというわけではなくて、小さい頃から研究をやりたかったんです。 研究者になりたくて、どういう分野に進むか最後まで悩んでいたんですが、これからは生物学の時代だということで生物学を研究することに決めたんですが、生物学をやるなら頭の先から足の下まで学ぶ医学部がいいのかなと思い、医学部への進学を決めました。」

生物を研究するにあたって、医学での知識をつけようということだったんですね。
ご専門が「睡眠医科学」ということで、睡眠にフォーカスしようと思われたのはなぜだったんでしょうか?

実は狙って入ったんじゃなくて、実は偶然なんです。当時私は、19991年から 25年近くテキサスにダラスというところにずっといたんですけども、そこで「オレキシン」という新しい脳内物質を見つけることができたんです。しかし、最初そのオレキシンという脳内物質の機能がわからなかったんですね。その後、いろいろ調べていくと、オレキシンが欠乏したマウスが、1対1で話していてもいきなり寝こけてしまうような強い睡魔に襲われる病である「ナルコレプシー」と全く同じ症状になるということに気がついたんです。そこで、 オレキシンが実は睡眠を調節している物質であり、覚醒を保つのに必須であるということがわかったんです。」

その「オレキシン」についてもっと詳しく教えてください。

「アミノ酸が 30個ぐらい繋がってできた小さなたんぱく質でできた脳内物質なんですが、覚醒を正しく維持する、要は脳を起こす覚醒物質ですね。

起こす物質が必要ということは、眠るためには覚醒を収める物質もきっと必要ですよね?

「夜の間はオレキシンの働きが弱くなって、他の睡眠を促すような物質の分泌が増えてきて眠るとされているんですね。なので、オレキシンの働きを薬で弱めることによる、全く新しいタイプの不眠症治療薬、いわゆる眠り薬として実はもう既に実用化されています。」

オレキシンの作用を発見した時はどういう気持ちでしたか?

「25年以上前の話なんですが、当時まだ睡眠や覚醒を遺伝子レベルで語る、みたいなことはできない時代だったのでまだ未踏の地ということもあり、相当これは面白そうだと思いましたね。それ以来ずっと睡眠研究を行っています。」

学生時代から研究者を目指していたとおっしゃっていたので、いざ実際に研究者になって誰も開拓できなかったジャンルを見つけるというのは、やはり研究者冥利に尽きることなのかなと思ったのですがどうでしたか?

「まさにですね。すべての研究者の目標は「人の知らないことを知る」ことだと思うので、うれしかったですね。」

2017年に株式会社S'UIMINを起業されていますが、会社を作ろうと思われたのはどうしてだったんでしょうか?

「ダラスでの研究の後、2010年代に戻ってきたんですが、そこでまた別の睡眠のプロジェクトを始めました。内容としては、何千匹、もう今では何万匹のマウスの睡眠を正確に測るっていうことを始めたんです。睡眠って頭の表面に電極をつけて脳由来の微弱な電気(脳波)を測ることで非常に正確に測れるんですが、それをマウスにで何千匹分試して、いろいろ工夫しながら手軽に測れるようにしたんです。
そこから派生して、それを人間でも同じことができないかなという単純な発想で試してみたんですが、振り返ってみると、人間の脳波レベルで睡眠を測るというのは、昼夜睡眠ポリグラフという入院検査になっちゃうんですね。頭の先から足の先まで二十か所ぐらい、いろいろな電極やセンサーをつけた状態でその人の本来の普段の睡眠は測れないし、キャパシティ的にも全然数が足りない状況でした。
睡眠時無呼吸に対してこの検査が一番役に立つんですが、睡眠時無呼吸の潜在患者数って実は国内でもう二千万人以上いるのに、この検査は年間多く見積もっても十万件ぐらいしか行われていない。だからもっと手軽に。技師さんが30〜40分かけて一生懸命電極をつけてやるんじゃなくて、自分で簡単にできる睡眠脳波測定デバイスを作ろうと思い、会社を作ったということです。」

それはそういう機械ごと作ったってことですか?

「そうですね。機械自体とクラウド上の深層学習AIで自動的に脳波の波形から睡眠をきちんと測定していくシステムを自分たちで作り、それを実用化したという形です。」

ではサービス内容としては、まず睡眠検査というものを行うんですね。

「そうですね。デバイスは売っているわけではなくて、デバイスは宅急便で送られてきて自分で測るという形です。」

実際にその検査でわかることはどんなことなんですか?

「一晩の睡眠の質がものすごく高精細に高分解能で測れます。 もちろんApple WatchやFitbitなどのウェアラブルデバイスでも、睡眠はある程度測れるんですが、精度が個人差がすごく大きいんですよね。ばらついてしまって当たる人は当たる、当たらない人は全然当たらない。その辺の精度の保証がないんですね。 あと時間分解能っていうんですか、もう本当に三十秒ごとぐらいの、ものすごく細かくですね。それに対して、細かい時間の単位で計測できるので睡眠の安定度や質などが手に取るように見えるんですね。」

ではそういった結果を見て、「じゃあこの方はこうした方が睡眠もっとよく眠れるようになる」などのアドバイスもいただけるんですか?

「そういうことです。健康の三要素で食と運動と睡眠って言いますが、食と運動は起きてる間の話なので、正確に何食べたか自分で覚えていて、コントロールできるじゃないですか。それに対して、睡眠って意識がないじゃないですか。だから、自分の睡眠って実はわかってないんですね。研究としても、実は自分で自覚している睡眠の質とか睡眠の時間っていうのは全然実は当てにならないという旨の論文も出しました。」

確かに長く寝ればいいっていうわけでもないですしね。寝る時間と起きる時間はタイマーとかでコントロールできるけど、寝てしまった後の自分ってわからないですもんね。

「途中で起きちゃった、寝れないといういわゆる不眠の訴えがある方でも、睡眠を測ってみると、実は健やかに眠れている方もたくさんいて、自覚とそのデータとが合わないことがすごく多いんですね。」

睡眠改善のプログラムを提供されていることでこちらについてお聞きしたいです。

「事業としては、個々人の睡眠を測るという医療からヘルスケアの事業に加えて、伴走型のトレーナーさんがぴったりついて高精細の睡眠測定をもとに、睡眠をアドバイスするというようなプログラムもやっていますし、睡眠改善を中心とした健康経営支援もしています。健康経営って実は睡眠を改善するのが一番早道なんですよね。ほかには、現在いろいろな業界で、睡眠を改善するという製品を作ろうとしているメーカーさんたくさんあるんですが、具体的な睡眠に関する評価や、それのプロモーションのお手伝い。そういったことも睡眠の専門家としての立場からやっているというのが事業の内容になります。」

ちなみに柳沢さんご自身は睡眠で悩んだ経験とかってあったりするんですか?

「私自身は睡眠の悩みはあまりなくて、0時から7時を睡眠コアタイムとして睡眠以外のことはやらないと決めてすんなり眠れちゃいますね。」

やっぱり7時間くらいがベストですか?

「これは人によって違うんです。短い人もいれば、長めの人もいます。」

自分がどれぐらいがベストなのか測ってもらいたいですね。ちなみに既に利用されている方もいらっしゃると思うんですけど、どういった方が利用されてますか?

「老若男女ですね。さっき言ったように企業向けのサービスも色々あるので、費用は企業が払う形で無料で測れるということで測ったら実は睡眠時無呼吸だった、ほっとくとやばい病気が見つかったなどのケースがありましたね。」

企業が従業員の睡眠にまで関わってくれるってのは、日中の活動に効率アップにつながるので会社の経費としてそこに力入れてもありなんじゃないかなと思います。

「実は、従業員が健やかにちゃんと睡眠時間を確保して眠っている企業ほど利益率が高いっていうような厳然たるデータもあるんです。睡眠不足も実は立派な睡眠障害なんですけど、睡眠不足を含め、睡眠が悪いと即座に次の日からパフォーマンスやクリエイティビティが落ちてしまうし、長い間それが慢性的に続くと、あらゆるコモンな疾患、あらゆる頻度の高い疾患のリスクが上がってしまうということがわかっています。」

だんだん睡眠不足が怖くなってきましたね。
最後にこれまで乗り越えてきたハードルを教えて下さい。

「株式会社S'UIMINを起こすにあたって、技術的な側面は自分でカバーできたんですが、それ以外のビジネスの側面やお金の方、そういうのを正しくやっていただく人を集めるというのがすごく大変だったと思いますね。」

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