小曽根真さんがクラシックでの即興演奏を語る(2021/03/06 放送)
今週は、ピアニストの小曽根真さんにリモートでお話を伺いました。
3月25日に60歳の誕生日を迎える小曽根さんは、3月3日にピアノソロ・アルバム『OZONE 60』(オゾネ・シックスティ)をリリース。長年に渡ってジャズシーンの最前線で活動する一方、近年はクラシックのオーケストラとも共演してきましたが、今回のアルバムもクラシックサイドとジャズサイドの2枚で構成されています。
「実は僕、元々はクラシック音楽って嫌いって言ってた人間なんですけど、ひょんなことで17、8年前にクラシックの世界に足を踏み入れて。で、弾いてみたらやっぱりクラシックの音楽も素晴らしい!という。もうホントに引きずり込まれた感じだったんですね。ただ、ジャズ屋にとってクラシックを弾くのは大変なので、いろいろ苦労もありつつ、少しずつ自分のテクニックを上げつつ、クラシックがだんだん弾けるようになってきた今…」
「60歳になるまでピアノを弾かせてもらえてた喜びっていうんですかね。まだミュージシャンとして存在できてるっていうのはホントに皆さんのおかげなので。このアルバムは、ソロピアノで裸一貫の小曽根真が皆さんのおかげでこんなピアニストになりました、ということを皆さんにお返しするつもりでやるには、やっぱりこの17年間やってきたクラシックも必要だろうっていうことで演奏させて頂きました」
1983年にアメリカのバークリー音楽大学 ジャズ作・編曲科を首席で卒業し、アメリカのCBSと日本人初のレコード専属契約を結んで世界デビュー、2003年にはグラミー賞にノミネートされた小曽根さん。日本人がジャズをやることについてこんなことをおっしゃっていました。
「おそらく環境じゃないかなと思うんですよね。日本では“門前の小僧(習わぬ経を読む)”なんていうのがあって。誰にも教わらないお経を聞いて覚えちゃったみたいなのが。それとおんなじで、音楽って僕は言語だと思ってるんで」
「僕が番組やってた時なんかに手紙を頂いて、うちの子にジャズとかクラシックを弾かせたいんだけど、どうすればいいですか?って」「まずお父さんお母さんが聞いてくださいって僕は言うんですよね。その環境にいないと…無理やり教わりに行っても、音楽って一つ間違うと拷問になるんで(笑)。やりたくないことを弾かなきゃいけないから」
「スポーツだと、体型とか身長とか、実際にフィジカルなリクワイアメント(必要条件)があるじゃないですか。だけど、音楽の場合は弾けさえすれば」「小さくても大きくてもピアノは弾けるし、あとはどれだけ弾いてるかで指の筋肉ですから、外国の方とのハンディキャップはそんなにはないですよね。歌はちょっとありますけど」
「そういうルートが今までなかっただけで、今けっこう海外で活躍してる日本人のミュージシャンっていっぱいいますよね。普通に。だから、教わりに行ったらもうダメですよ。もう終わっちゃうんです。自分から取りに行かないと」
昨年はコロナ禍の中、53日間に渡って自宅から生配信で音楽を届けてくれた小曽根さん。ニューアルバム『OZONE 60』のレコーディングは、昨年11月末から12月頭にかけて茨城県の水戸芸術館 コンサートホールATMで行われたそうです。
「今回はピアノ1本だけだったんで、響きがいいところで、そのまんま一番アコースティックな音を録音しようと思って。そしたら、一度コンサートをさせて頂いたことがあるんですけど、水戸芸術館っていうところの響きが物凄く素晴らしくて」
「それで、53日間家で弾き込んだピアノを、スタインウェイを運んで。で、もう1台、ヤマハさんから入れてもらって。ドイツ製のスタインウェイと日本製のヤマハのベストのインストゥルメントを2台並べて、好き放題。この曲はこっちで弾こう!みたいな。もうありえないぐらい贅沢なレコーディングをさせて頂きました(笑)」
そんな小曽根さんのニューアルバム『OZONE 60』。『CLASSICS + IMPROMPTU』(クラシックス+インプロンプトゥ)と名付けられたクラシックサイドでは、モーツァルトやラベルの楽曲が即興演奏(インプロンプトゥ)を交えつつ演奏されています。
「ジャズの場合はほとんど、テーマを、お題を頂いて即興で話を膨らますっていう、それが基本のやり方で、クラシックの場合は譜面通りにやるんですけど、昔のクラシックの音楽家、モーツァルトとかバッハっていうのは、みんな即興演奏を凄く楽しんでたんですよね」
「(クラシックの)楽譜を見ると、メロディーが1回あるとすればもう1回リピートして弾きなさいっていうサインがあるんですよ。ただ、昔はそれをおんなじことを絶対に弾かないっていうのがテーマだったんですよね。だから、2回目は違うメロディーで即興で弾く、っていうことをみんな楽しんでた時代があったんですよ」
「で、ベートーベン辺りから作曲家のいい意味でのエゴがいっぱい出てきて、即興させるもんか!というぐらい完璧な音楽を作り始めたから。そうすると、だんだんそこから作曲家と演奏家っていうふうに別れてきたんですよね」
「ですから、今回のクラシック側のアルバムにあえて『CLASSICS + IMPROMPTU』っていうのを入れたのは、クラシックも元々は即興をやってたっていうのがあったんです」
「モーツァルトなんかおそらく、可愛い娘がいたら、これはキミのイメージで弾いた!とか、たぶんチャラいことをやってたと思うんですよ。それぐらい楽しい音楽だった。酒場で彼は弾いてましたからね。だって、演奏って英語でいうとplayじゃないですか。で、playって直訳すると遊びですよね。で、演劇もそうですよね。playって言いますもんね」
「キチッと正しく間違えないで弾く、っていうふうにどうしてもフォーカスがいっちゃうんですけど…ま、間違えないほうがいいんですけど…それよりも楽しむっていうことがやっぱり大事なんじゃないかなと僕は勝手に思ってます。ホントはちゃんと弾けなきゃいけないんですよ、まずは。だから、弾けて当たり前っていうところから始まらなきゃいけないんですけど、演奏家は」
来週も引き続き、小曽根真さんをお迎えします。
3月25日に60歳の誕生日を迎える小曽根さんは、3月3日にピアノソロ・アルバム『OZONE 60』(オゾネ・シックスティ)をリリース。長年に渡ってジャズシーンの最前線で活動する一方、近年はクラシックのオーケストラとも共演してきましたが、今回のアルバムもクラシックサイドとジャズサイドの2枚で構成されています。
「実は僕、元々はクラシック音楽って嫌いって言ってた人間なんですけど、ひょんなことで17、8年前にクラシックの世界に足を踏み入れて。で、弾いてみたらやっぱりクラシックの音楽も素晴らしい!という。もうホントに引きずり込まれた感じだったんですね。ただ、ジャズ屋にとってクラシックを弾くのは大変なので、いろいろ苦労もありつつ、少しずつ自分のテクニックを上げつつ、クラシックがだんだん弾けるようになってきた今…」
「60歳になるまでピアノを弾かせてもらえてた喜びっていうんですかね。まだミュージシャンとして存在できてるっていうのはホントに皆さんのおかげなので。このアルバムは、ソロピアノで裸一貫の小曽根真が皆さんのおかげでこんなピアニストになりました、ということを皆さんにお返しするつもりでやるには、やっぱりこの17年間やってきたクラシックも必要だろうっていうことで演奏させて頂きました」
1983年にアメリカのバークリー音楽大学 ジャズ作・編曲科を首席で卒業し、アメリカのCBSと日本人初のレコード専属契約を結んで世界デビュー、2003年にはグラミー賞にノミネートされた小曽根さん。日本人がジャズをやることについてこんなことをおっしゃっていました。
「おそらく環境じゃないかなと思うんですよね。日本では“門前の小僧(習わぬ経を読む)”なんていうのがあって。誰にも教わらないお経を聞いて覚えちゃったみたいなのが。それとおんなじで、音楽って僕は言語だと思ってるんで」
「僕が番組やってた時なんかに手紙を頂いて、うちの子にジャズとかクラシックを弾かせたいんだけど、どうすればいいですか?って」「まずお父さんお母さんが聞いてくださいって僕は言うんですよね。その環境にいないと…無理やり教わりに行っても、音楽って一つ間違うと拷問になるんで(笑)。やりたくないことを弾かなきゃいけないから」
「スポーツだと、体型とか身長とか、実際にフィジカルなリクワイアメント(必要条件)があるじゃないですか。だけど、音楽の場合は弾けさえすれば」「小さくても大きくてもピアノは弾けるし、あとはどれだけ弾いてるかで指の筋肉ですから、外国の方とのハンディキャップはそんなにはないですよね。歌はちょっとありますけど」
「そういうルートが今までなかっただけで、今けっこう海外で活躍してる日本人のミュージシャンっていっぱいいますよね。普通に。だから、教わりに行ったらもうダメですよ。もう終わっちゃうんです。自分から取りに行かないと」
昨年はコロナ禍の中、53日間に渡って自宅から生配信で音楽を届けてくれた小曽根さん。ニューアルバム『OZONE 60』のレコーディングは、昨年11月末から12月頭にかけて茨城県の水戸芸術館 コンサートホールATMで行われたそうです。
「今回はピアノ1本だけだったんで、響きがいいところで、そのまんま一番アコースティックな音を録音しようと思って。そしたら、一度コンサートをさせて頂いたことがあるんですけど、水戸芸術館っていうところの響きが物凄く素晴らしくて」
「それで、53日間家で弾き込んだピアノを、スタインウェイを運んで。で、もう1台、ヤマハさんから入れてもらって。ドイツ製のスタインウェイと日本製のヤマハのベストのインストゥルメントを2台並べて、好き放題。この曲はこっちで弾こう!みたいな。もうありえないぐらい贅沢なレコーディングをさせて頂きました(笑)」
そんな小曽根さんのニューアルバム『OZONE 60』。『CLASSICS + IMPROMPTU』(クラシックス+インプロンプトゥ)と名付けられたクラシックサイドでは、モーツァルトやラベルの楽曲が即興演奏(インプロンプトゥ)を交えつつ演奏されています。
「ジャズの場合はほとんど、テーマを、お題を頂いて即興で話を膨らますっていう、それが基本のやり方で、クラシックの場合は譜面通りにやるんですけど、昔のクラシックの音楽家、モーツァルトとかバッハっていうのは、みんな即興演奏を凄く楽しんでたんですよね」
「(クラシックの)楽譜を見ると、メロディーが1回あるとすればもう1回リピートして弾きなさいっていうサインがあるんですよ。ただ、昔はそれをおんなじことを絶対に弾かないっていうのがテーマだったんですよね。だから、2回目は違うメロディーで即興で弾く、っていうことをみんな楽しんでた時代があったんですよ」
「で、ベートーベン辺りから作曲家のいい意味でのエゴがいっぱい出てきて、即興させるもんか!というぐらい完璧な音楽を作り始めたから。そうすると、だんだんそこから作曲家と演奏家っていうふうに別れてきたんですよね」
「ですから、今回のクラシック側のアルバムにあえて『CLASSICS + IMPROMPTU』っていうのを入れたのは、クラシックも元々は即興をやってたっていうのがあったんです」
「モーツァルトなんかおそらく、可愛い娘がいたら、これはキミのイメージで弾いた!とか、たぶんチャラいことをやってたと思うんですよ。それぐらい楽しい音楽だった。酒場で彼は弾いてましたからね。だって、演奏って英語でいうとplayじゃないですか。で、playって直訳すると遊びですよね。で、演劇もそうですよね。playって言いますもんね」
「キチッと正しく間違えないで弾く、っていうふうにどうしてもフォーカスがいっちゃうんですけど…ま、間違えないほうがいいんですけど…それよりも楽しむっていうことがやっぱり大事なんじゃないかなと僕は勝手に思ってます。ホントはちゃんと弾けなきゃいけないんですよ、まずは。だから、弾けて当たり前っていうところから始まらなきゃいけないんですけど、演奏家は」
来週も引き続き、小曽根真さんをお迎えします。