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「『混沌』というルール 2」
 
 イタリアを初めてドライブしたときの僕は、丁度、東京モンが関西人に混じってトランプの『大富豪』をやっているようなものだった。つまり、大まかなルールは知っているが、彼らのやり方を知らない。だから、間違えるたびに「せやから東京モンは、おもろないねん」とツッコまれてしまう。もちろん、イタリアでは関西弁のツッコミでなく抗議のクラクションが飛んでくることになる。 僕は、「譲り合い」が万国共通の交通精神だと思っていた。しかし、どうやらそれが間違っていたようだ。横断歩道で渡るタイミングを待っている歩行者に道を譲ろうとしたら、後続車から猛烈な勢いでクラクションを鳴らされた。ふと歩行者に目をやると、手で僕に「行け!」と合図している。
ワケがわからず「行け合図」をやり返す。クラクションの音どんどん増幅している。すると、歩行者は「やれやれ」といったジェスチャーをして礼も言わずに渡り出した。その時だ。あのタクシードライバーの運転を思い出したのは。 彼の地では歩行者もドライバーも、あのタクシー級の運転に慣れている。だから、両者に「譲り合い」の精神は希薄だ。しかし、周りを注意深く観察していると、彼らは頻繁にアイコンタクトをしているのに気付く。「お前は待て、オレが先に行く」と目で伝えている。目が合わないときは、クラクションを鳴らして相手の注意を引く。「郷に入ったら」で、僕も真似してアイコンタクト運転を試みたが、これがかなり機能するし結構楽しい。ちなみに、日本でも試してみたが「なにしとんねんボケッ!」と激しいツッコミが返ってきた。(続く)
イタリア:クルマを巡る“快楽”と“憂鬱”
文|中野剛