交通事故死者数の構成比率を見ると「歩行者」「四輪車」に続くのが「二輪車」。
この10年、毎年17%前後を占めています。
二輪車については、ヘルメットの着用が、ずいぶん徹底されました。
でも、それだけでは十分ではありません。
今回は、いま警察がライダーに強く使用を呼びかける「二輪車用プロテクター」を追跡しました。

コメントは警視庁から「プロテクター普及推進隊」を任じられている
オートバイ用品専門店 ナップス 世田谷店のプロテクター担当 高添晃一さん。

警視庁による平成22〜26年の統計では
交通事故で死亡した場合の主な損傷箇所は頭部が圧倒的に多く47.4%。
それに続くのが胸部28.4%。

胸部に関しては、追突事故を起こした場合、車のルーフや、建物り、ハンドル、
胸からぶつけて心臓、肺、場合によっては、腹部も強く打ってしまい、
内臓を損傷してしまって・・・という事もあります。
ちなみにこの腹部は主な死亡損傷箇所原因では7.1%です。

つまり、二輪車乗車中の死亡事故で「頭部」に次ぐ主な損傷箇所の2位と4位、
「胸部」と「腹部」を足すと35.5 %になります。ところが、去年の神奈川県の例ですが、
二輪車の交通事故で亡くなった62人のうちプロテクターをつけていたのはわずか3人。
警視庁の去年の調査でもプロテクターの着用は7.2%という結果。
「普及」には、とても遠い状況です。

いま増えているのが、若い時に二輪に乗っていた人が、
40代・50代になって再びオートバイライフを始める、いわゆる「リターンライダー」。
そのせいもあってか中高年の二輪車での事故が増えています。
四輪のドライバーは、事故の時、車体やエアバッグで守られるもの。
しかし、二輪のライダーは、身体が直接ダメージを受けてしまいます。
特に胸部プロテクターの着用を習慣づけて下さい。

高添晃一さんによると胸部のプロテクターは、まず自分自身に身に付けるタイプがあります。
ベストタイプのような形でライディングウェアの中に着るようなプロテクターです。
それは、いわゆるハードプロテクター。
服の上からでもつけているのがが分かってしまうのでスタイリッシュではないというなら、
もう1つのタイプ、ソフトプロテクターもあります。
これはジャケットに装着するもの。

そして、二輪車に乗っている時の死亡事故で
損傷した部位の3番目に多いのが頸部、首の部分。
その頸部も含め、全身を守ってくれるプロテクターがあります。
hit-airというブランドが出している二輪用の装着するエアバッグ。

これはいちばん上に装着するもの。
ベストタイプ、普通のジャケットタイプ、色々と種類があります。
エアーボンベがジャケットの中に装着されていて、
これはサイズによって中に入っているエアーの量も変わってくるのですが、
まず、オートバイにワイヤーを固定します。
そのワイヤーがジャケットの方の「キーボックス」、
エアーボンベが入っている装置に繋げます。
もしも、事故が起こった場合、バイクから投げ出された瞬間に、
キーボックスに付いている「キーボール」というのが、
ポンッと抜けて、その瞬間、コンマ2秒でエアーバッグが作動します。
ボンベは、ジャケットの中の毛質の中に送り込んで、
胸部、首回り、背中、脇腹、尾てい骨のあたりまで広がります。

ただ、二輪用エアバッグはバイクと身体が離れないと作動しません。
バイクと一緒に転倒したり、追突事故でハンドルに身体を強打したり、ということもあります。
「胸部プロテクターはつけたほうがいい」と高添さんはおっしゃっていました。

また、胸部プロテクター以外にも肘や肩、膝や脛、脊椎といった部分的なプロテクターもあります。
二輪に乗る方は、自分のバイクライフにあったプロテクターを探すようにしましょう。

スクーターやオートバイに乗っている方は、
これをきっかけにプロテクターについて、いちど真剣に考えてみて下さい。


今回は首都高の交通事故を減らすプロジェクト「東京スマートドライバー」を追跡。
コメントは事務局 林潤一郎さんでした。

「東京スマートドライバー」が 放送作家の小山薫堂さんを発起人に発足したのは2007年8月。
2006年当時、首都高では年間約1万2,000件の交通事故が発生していました。
道路面の事故対策はしていたものの、それまで以上の効果を生み出すにはどうするか?
そう考えた時に問題解決には物事の片側からだけ見ていると行き詰る。
つまり、道路の管理者だけが交通安全に一生懸命になっていてもダメで、
ドライバーの意識が変わらないと交通事故は減らないという考えがきっかけになりました。

そこから練られたプロジェクトが「東京スマートドライバー」。
世界一、難しい道だと言われる首都高で事故が増えていなのは、
ドライバーの運転にも交通事故が起きない秘密があるのではという仮説が立てられました。
クルマを運転する人が持つ、目に見えないコミュニケーショ力ではないだろうかと。

東京スマートドライバーは道路や車などのハード面からではなく、
人=ソフト面から交通事故を減らすため「交通安全」をブランド化して、
まずは、その意思をドライバーたちに表明してもらうことを目指しました。

さらに、交通安全を目指す時、ふつうは悪い運転を注意します。
これを逆転の発想で良い運転をしている人を誉め、
誉められれば、もっと良い運転をしたくなるという気持ちの連鎖で
ドライバー1人1人が運転に注意深くなる事を目指したのです。

具体的な活動としては交通安全のマインドをブランド化することからスタート。
デザイナーの水野学さんにシンボルを作ってもらい、
安全に走ることこそカッコイイと共感してくれる人は、
東京スマートドライバーのロゴマーク、ピンクチェッカーフラッグを車に貼って、
安全に走る事を宣言しようとドライバーの意識変革を提言しました。

首都高上には交通安全を想起させる大弾幕を掲げることにします。
それをスマートメッセージと名付けました。
言葉は「スピード落とせ」「カーブに気を付けろ」といった
よくある注意喚起ではなく「無事に辿りつく事がゴールです」というメッセージで
「この先には大事な人が待っているんだ」ということをドライバーに伝えました。
そして、発足から1〜2年で、相関関係は明確に証明できませんが、
首都高の事故は減っていったのです。

東京スマートドライバーは抽象的だけではなく、具体的なアプローチもしています。
わかりやすい英語で安全運転に洗練されたキャッチコピーをつくり5つのアクションを推奨。


「good Accele」 ー 時間帯や道路状況に合わせてスピードを変えて走る


「early brake」 ー カーブ手前でなるべく早めに減速してからカーブに進入する


「winker communication」 ー ウィンカーのタイミングや渋滞時のハザードなど
                   車を降りなくてもドライバーがコミュニケーションをとるようにする


「keep distance」 ー 前の車との距離は学校のプール1つ分を目安にとる


「use information」 ー 道路の状況は運転を始める前に、
               なるべく頭にルートや渋滞状況を入れておく


この東京スマートドライブが首都高だけではなく、
全国の交通事故を減らすきっかけになるかもしれません。
首都高に限らず、心の「スマートドライバー」を目指しましょう。


東京モーターショー 2015の一環で自動車安全シンポジウムが行われました。
テーマは『交通安全のための予防安全技術』。
今回は、先週の続き「国と自動車メーカーによる交通安全対策」の後編でした。

先週「国は3つの方策で交通安全対策を進めている」とお伝えしました。

1)製品の安全基準をつくる 
      
2)新しい安全技術を開発促進する
      
3)製品の安全性能を評価して消費者に知らせる 


後編は2つめ「新しい安全技術の開発促進」、まさに「予防安全技術」の部分。
これは「ASV(先進安全自動車)」技術とも呼ばれ、
実用化が始まったことで注目を浴び、各自動車メーカーもPRに力が入っています。

一般社団法人 日本自動車工業会
安全・環境技術委員会 安全部会 部会長 高橋 信彦さんによると
ここ1、2年で予防安全技術は急激に伸びいます。
去年のデータを見ると普及率は「自動ブレーキ」 41.1%、「はみ出し防止装置」 8.6%。
前年と比較すれば10%が40%になり、3%が8%を越えているのだそうです。

予防安全技術に取り組むべきだとの認識が広まったのは2006年、2007年ごろ。
交通事故統計を見ると、それまで精力的にやっていた
エアバッグや衝突安全対策による事故削減効果が鈍ってきたのです。
対策が行き届くと飽和状態になっていくもの。
何か次の施策をやらないと、これ以上、事故を減らすことはできないだろうと。
そこで予防安全技術への関心は高まってきたのです。

現在、その代表的なものは「衝突被害軽減ブレーキ」、 いわゆる「自動ブレーキ」と
「車線逸脱警報装置」、いわゆる「はみ出し防止装置」。

「ASV(先進安全自動車)」技術には、
人間の器官でいうところの情報をキャッチする「目」、
状況を認識してどんな行動をとるべきか判断する「頭」、
実際に行動する「足」となる機能が必要です。


「自動ブレーキ」は・・・

「足」は横滑り防止装置が少し前に法制化されて、全車搭載になりました。
車のブレーキをコントロールする能力を持ったというわけです。
電気信号でブレーキの掛け方をコントロールするので、
電気信号の効かせ方によってフルブレーキが出来るます。
つまり、自動でブレーキをかける事が出来る訳です。
これで、まず「足」を持ったと。

では「目」は何かというとレーダー、レーザーやカメラ。
カメラは距離を測る事が難しいのですが2つ使えば可能です。
するとコンピューターを使い「こういう形をしていれば人」とか、
「こういう形をしていれば車」というように認識することが出来ます。

そして、最後は「頭」。
「それが車である」という事をどうやって判断しているかというと、
簡単に言えば、コンピューターの中で、今、見ているものと車を比較する、
それを昔のパソコン、マイコンでやると膨大な長い時間がかかりました。
ところが、今のマイクロプロセッサーの処理能力の高さなら一瞬で可能。

以上のような条件が全部整ってきたので、
予防安全技術が普及出来るようになったのです。

そして、「車線逸脱警報装置」はカメラで白線の位置を認識。
その位置づけに異常を感じると警報が鳴ります。
そして、かつて自動車のパワーステアリングは油圧でしたが、今は電気信号。
はみ出しそうになるとステアリングでアシストする。
また「横滑り防止装置」によって4つのブレーキをコントロールできるようになったので
四輪を違うようにコントロールすれば向きを変えることもできます。
こうした機能の組み合わせて車線を越えてしまわないようにすることが可能なのです。

「ASV(先進安全自動車)」技術は、
他にも設定した一定速度で走り、前のクルマとの距離を一定に保つ
「ACC(Adaptive Cruise Control)」などが実用化されています。
        
ことところ予防安全技術が一般に浸透してきて
ドライバーの替わりに運転してくれるイメージを持つ人もいるかもしれません。
でも、それは大きな間違いです。

責任を持って運転するのはドライバー。
「もしも」の時に安全のための運転を支援してくれるかもしれないのが安全予防技術。
そのことを念頭におき、あくまで安全な運転を心がけて下さい。



11月8日 日曜日まで、東京ビッグサイトで、
東京モーターショー 2015が開催されています。
その一環として昨日、自動車安全シンポジウムが行われました。
テーマは『交通安全のための予防安全技術』。
今週と来週は「国と自動車メーカーによる交通安全対策」を追跡します。

今週のコメントは基調講演を行った1人、
国土交通省 自動車局 技術政策課長 久保田秀暢さんでした。

交通事故による死亡者が最も多かった昭和40年代、
その数は年間1万6千人にのぼりました。

そこから減少傾向になっているものの、
いまだ1年に交通事故で命を落とす人は4,000人以上。

政府は2020年(平成32年)までに死者数を2500人以下に減らす目標を掲げ
「人」「道」「クルマ」という観点から安全対策に取り組んでいます。
そのうちの「クルマ」に関しての方策は3つ。


1) 「安全基準」 ⇨ 製品の安全性能を確保する基準をつくる

2) 「ASV(先進安全自動車)」 ⇨ 新しい安全技術の開発を促進させる

3) 「アセスメント」 ⇨ 製品の安全性能を点数で評価して消費者に知らしめる


自動ブレーキに代表される2つめの「新しい安全技術の開発促進」は、次週、詳しくふれます。
今週は「安全基準」と「アセスメント」について。

まず「安全基準」は、すでにあるもの。
国が定めたこの基準に適合しないクルマは市場に出せません。
ライトはどれ位明るくないといけないのか、
ぶつかった時に中の人を保護する性能がどれ位無いといけないのか?
バックする時にライトがつくかなど100以上の項目があります。
さらに新しいの技術に対しては新しい基準として追加するようになっています。

「安全基準」に対して「アセスメント」は、
すでに売られている製品について安全性能を確認して採点し周知するもの。
これは、その車がどれくらい乗っている人を保護できるのか?
ぶつけてしまった人をどのくらい傷つけない性能を持っているか?など
事故を起こした際の安全性能の評価するものとして20年前にスタートしました。

それに加えて去年から事故予防のための安全性能評価がスタート。
今のところ対象にしているのは「自動ブレーキ」と
クルマが車線をはみ出した時に警報が鳴る「車線逸脱警報装置」の2つ。
基本的に市場で売れている上位10台ほどを評価対象としています。
ただ、メーカーから特定製品を評価する希望があれば、これも評価対象とします。

見せていただいた国土交通省と自動車事故対策機構で作っているパンフレットには、
全37車種の安全性能評価が掲載されていました。
「自動ブレーキ」と「車線逸脱警報装置」で合計40点満点。
満点を獲得していたのは4車種。
さらなる安全技術については段階的に導入していくということです。

事故時に乗車していた人の被害を軽減する技術はかなり進みました。
車にいる状態での死亡者は大幅に減っています。
ところが、歩行者や自転車に乗っていた人の被害はなかなか減りません。
車対人ではどうしても身体を守ることができないからです。

久保田さんの指摘では、これからは予防安全技術を使い、
事故が起きないという事を進めていかないと、
さらなる安全対策は難しいのではないかとのことでした。
その「予防安全技術の開発」については来週の後編でおとどけします。