運転マナーには多少の地域性があるもの。
夏休みに慣れない土地でハンドルを握る時は気をつけましょう。
今週は悪しき運転マナーの地域性を紹介する「危ない!車のローカルルール」後編でした。

取り上げたのは「播磨道交法」。

播磨地方はかつて播磨国があった兵庫県南西部の一帯。
姫路市を中心にたつの市・相生市・赤穂市周辺のことです。

その播磨地方にまつわるのが「播磨道交法」。
でもこれ、実在する法律ではありません。
地元新聞社の神戸新聞のある連載から生まれたものです。

当時を知る淡路総局長 三好正文さんによると
13年前のこと、関西では「1 姫、2 和泉」と言われ、
兵庫県西部の姫路ナンバーが交通マナーが悪い車だとされることが多いため、
姫路地域の運転マナーは本当に悪いのか? どういうふうに悪いのか?
読者とともに考えてみようという連載を始めました。

その中で読者から「姫路ナンバーの運転は荒いか」意見を募集。
すると「荒っぽい」という意見、「そうでもない」という意見、
また「そういう運転には事情がある」という意見など多数が寄せられ、
専門家を交えて紙面上で考えていったそうです。

そして、テーブルに挙げられた地域の運転マナーの悪さを、
自戒の意味を込め、法律的な文章にして紙面に掲載しました。
それが「播磨道交法」です。

ともすれば読者からの反発や批判もあったかもしれない
「自戒」と「皮肉」と「ユーモア」を込めた「播磨道交法」の作成と掲載。
そこには「地域の交通事故を減らしたい」という思いと願いがあったからでしょう。
「播磨道交法」は3つの賞からなります。

第1章・交差点 

(1) 先に入った車が優先。右折時、対向車が直進してきても待つ必要なし。

(2) 右折時、対向車が左折なら、一緒に曲らなければならない。
   左折車を先に行かせていると、右折待ちの後続車からクラクションを鳴らされる。

(3) 自転車や歩行者は、車が通らなければ、赤信号は青とみなす。

(4) 右左折時、横断歩道を人が歩いていても、通れるスペースがあれば、すり抜けるべし。

(5) 右折は、右折信号が出てからが勝負。
   右折信号が消え、赤と続く数秒間に何台潜り込めるか。


第二章・歩道、車線変更 

(1) 信号のない横断歩道。
   歩行者は、車が途切れるまで待つべし。車は止まってはくれない。

(2) 車線変更。狭い間隔でも、スペースさえあれば割り込み可。

(3) 指示器は曲がると同時に出す。

 
第三章・附則 

(1) バスは、停留所から車線に戻るとき、辛抱強く待たなければいけない。

(2) 前に人がいれば、クラクションで道を空けさせる。



こうした悪しき運転マナーは、今回とりあげた、
伊予地方、名古屋、播磨地方に限ったことではありません。

長野県の松本周辺には「優先道路に出る際、一時停止をしない」などの
「松本走り」と言われるローカルルールがあります。
山梨県には「直進車の有無に関わらず、減速なしで右折する」などの
「山梨ルール」と言われるものもあります。
     
程度の差こそあれ、こうした運転はどこにもする人がいるもの。
今回とりあげたローカルルールは、有名なだけに気をつけやすく、
地域の住民が意識的な分、大きな改善の余地があるのかもしれません。

大多数が当たり前に危ないローカルルールで運転していて   
そのことを地域外の人たちはまだ知らない・・・それがいちばん怖いことかも。
知らない土地で運転する時には充分注意しましょう。


いよいよ夏休み!
旅行の予定を組んでいる方が多いことでしょう。
慣れない土地でクルマを運転することもあるかもしれません。
そんな時には充分に注意をしてください。

もしかすると皆さんが住んでいる地域とは
運転マナーがちょっと違ったりするかもしれないからです。
日本全国を見渡すといくつの地域で「ローカルルール」とされている
よろしくない運転マナーのあることが当該地域で指摘されています。
今週と来週はいくつかピックアップします。

前編の今日とりあげたのは・・・

「伊予の早曲がり」

「名古屋走り」

「伊予の早曲がり」は愛媛県庁 県民環境部 
防災局 消防防災安全課 山崎まこと さんに
「名古屋走り」は名古屋市にある教習所
庄内橋自動車学校 永原副校長に話を伺いました。

「伊予の早曲がり」とは言葉通り
一般の地域ではないタイミングで右折をしてくる行為です。

対向車線を直線している時にヒュッと対向車が目の前を横切って駐車場に入る。
交差点を直進しようとした時に前を走るクルマとの間隔がそれほどないにも関わらず
右折待ちをしていたクルマがサッと右に曲がるとか。

山崎さんの話では一説によるとこれは愛媛県民の
他人に対する優しさや思いやりからきているとのこと。

今のように道路状況が良くなかった時代、車道はたいてい一車線。
右折車が待てば待つほど、その後ろに渋滞ができます。
そこで、対向車が「どうぞ曲がって下さい」と先を促すことが多かったようです。
それが次第に譲られる側が譲ってもらうことが当たり前となり
悪い運転マナーになってしまったのかもしれないとか。
ちょっと残念な気がします。

でも「伊予の早曲がり」は愛媛県民が認識していること。
警察の取り締まり、県の呼びかけもあり、ずいぶん減ってきているようです。

そして「名古屋走り」。
名古屋市民の永原さんが感じている悪しき運転マナーの主なもの。
1つは行けるところまで右折車線を進みギリギリのところで直線車線に移る行為。
車線が多いのが名古屋の道路の特徴。4車線はふつうで多いところでは6車線。
そこを縦横無尽にスイスイと渡っていってしまうのです。

そこに加えてウィンカーで合図を出さないという傾向もあるとか。
出したとしても他のクルマに知らせるためではなく
法規上、出さなければいけないので「出せばいいんだろ」という感じで出す。
それではウィンカーを出す意味がありません。

さらに道路環境が良く、直線の道が長いため、できるだけ信号を青のまま走っていきたい。
その気持ちからスピードを出し過ぎになるという行為。

いずれもふつうに運転している人が巻き込まれたとすれば
とても危ない運転行為ということになります。

実は「名古屋走り」に含められる行為は多岐に渡ります。
「名古屋走り」という言われ方を見聞きすると
寂しい気持ちになってしまうという永原さんは
「言い訳かもしれませんが」ということで1つの持論を聞かせて下さいました。

名古屋は大都市。今はインターネット社会。
名古屋を訪れてハンドルを握った人たちが感じたことを
SNSなどで発信できるようになったことが影響しているのではないかということです。

確かに誰か1人の運転マナーの悪さが地域特性にとられてしまっては残念なことです。
ですからどこにいても共同社会のためにも運転マナーには気をつけたいものですし
今回の企画で取り上げるマナーはその地域だけにあるものではなく
どこにでもあるものということを認識してほしいと思います。


「交通事故に遭った時、視界がスローモーションに見えた」という言葉、
どこかで見聞きしたこと、ありますよね?
そのことが実験の結果、世界で初めて確認したという論文が発表されました。

論文を発表したのは、コメントで声が出ている、
千葉大学 文学部 認知心理学研究室 一川誠(いちかわ・まこと) 教授。
そして、卒業生の小林美沙さん。

小林さんの卒業論文に向けた研究に
担当教授の一川さんが協力するかたちで実験は行われました。
一川教授は心理学に基づき「知覚」や「認知」の特性を調べる専門家。
今回は特に時間的な「認知」の特性を調べたということになります。

この「事故の瞬間がスローモーション」を証明するための実験は、
過去にも行われことはあるそうです。
しかし、その“現象”を取り出すことは出来ていないのだそうです。

でも、一川教授はうまくやれば確認できるだろうと思っていました。
そこで、違う方法でトライしてみます。

実験の被験者16人。
安全な画像12枚 危険な画像12枚 計24枚を
1枚の写真を1秒間見せて、最後のごく短い時間、
数ミリ/secだけモノクロにして、
写真によってそのモノクロにする時間の長さを変えて見せます。

危険を感じるような写真や覚醒するような写真のほうが、
ふつうの状態よりモノクロになる時間が短くても変化に気づくことがわかりました。

ちょっとデフォルメした例として、
ふつうの心理状態では、色の変化は1秒ないと気づかないとします。
危険を感じる心理状態だと、色の変化は0.5秒で気づくとする。

この時、処理情報量は・・・
ふつうの心理状態の1秒=危険を感じる心理状態の0.5秒 

では、この2つの心理状態で、
1秒かけて同じ「動く光景」を見た時にどうなるか?

ふつうの心理状態は1秒なのでそのまま。
でも、危険を感じる心理状態は本来0.5秒で処理できる情報量を
2倍の時間をかけて見ているので、時間が引き伸ばされてゆっくり見えるのです。
30分番組が入ったVTRを60分で見るようなものと言えばわかりやすいしょうか。

この情報処理速度が速くなるような状態、
例えば音を聞かせたり、薬で人工的にそうした状態を作り出せば、
交通事故の回避につながるかもしれません。

ただ、そうしたモノに頼らなくても
交通上の危険が生じないことが理想です。


クルマの安全性に対する考え方の後編です。
先週、お伝えした安全装置をなるべく導入する上で推奨するアイテムを
もう少し詳しく説明すると

【自動ブレーキ機能】
「ミリ波レーダー」や「カメラ」や「赤外線」を使って、
障害物や人間を検知して衝突を回避してくれるもの。
これはここ数年でかなりポピュラーになり
わかりやすいという意味で導入を考える人が多いことでしょう。

【サイドエアバッグ】
運転席や助手席の両側に備え付けられ、乗る人を側面衝突から保護するもの。
       
カーテンエアバッグ 
自動車内部の両側面に備え付けられていて、衝突時には窓を覆うようにふくらみ、
乗る人の側面衝突、車外への飛び出し、ガラスの飛散によるケガを防ぎます。

交通事故による死亡者数の推移を見ると安全性に対する意識は確実に高まっています。
ただ、これは誰もがクルマの機能や性能に詳しいわけではない、
一般ドライバーだけの努力や意識改革だけでは実現できません。
行政の施策と自動車メーカーの取り組みも欠かせないのです。

モータージャーナリスト 岡崎五郎さんは、こう指摘します。
ぶつかった時の安全なボディとかぶつからないようにする為のハイテクが出てきて、
その結果として交通事故死亡者数が劇的に下がってきた。
それはドライバーの安全意識が高くなってきたことの一報で、
道路が良くなった、歩道と車道が分離された、シートベルトの装着率が高くなった、
飲酒運転に対する取り締まりが厳しくなったという、
国を上げて交通事故を減らすという取り組みがあったから。
つまり行政が牽引した力も見逃せないわけです。
それでも、まだ4千人が1年に亡くなっている。
これは由々しき問題でゼロを目指さないといけないのです。

さらに岡崎五郎さんは自動車メーカーに、
今以上に安全性の向上に貢献することを期待しています。

エアバックはぶつかるとドーンと風船が開いて、
体が守られるんだなというのがイメージしやすいもので早く普及した。
それに対して一般ドライバーの方が想像力を持ちにくいものはなかなか普及しない。
数万円のお金を払う事に二の足を踏むドライバーが多ければ、
付けなくても良いかとメーカーもとらえて、
元来は付いていたものをオプションに変えたり、
オプションですら用意しなかったりということもあるそうですが、これは間違い。

一般ユーザーのすべてが1つの装置が安全性を高めるのに
どれだけ有効なのかを判断するのは難しいわけで、車作りのプロたる自動車メーカーは、
これはこういう時に安全性を高めるというアピールをして普及に務める義務があるといいます。

そして、岡崎さんはマスメディアにも、
交通事故について、有意義な情報発信の必要性を、指摘します。

車の事故で亡くなる人の数は大災害に匹敵するレベル。
それにも関わらず事故の概要だけが報道されて、
なぜその事故が起こったのか、どうすれば避けられたのか、という情報に乏しい。
事故が起こると綿密な調査がされて安全性を高めてきた航空業界のように、
自動車に関しても情報を得た人が同じ間違いを繰り返さない内容を発信するべきだと。

メーカーがより安全な車を作る。
国がより安全な交通環境をつくる。
一般ドライバーが、より安全な車を選び、安全な運転をする。
三位一体の努力によって1つでも交通事故を減少させたいものです。