昨日、警察庁が2016年の交通事故死者数は、
67年ぶりに4千人を下回る見通しだと発表しました。
おととい12月27日までの死者数は昨年より285人(6.9%)少ない3,832人。
減少率・減少数が減ったのは喜ばしいことですが、
それでもまだ3,832人の命が失われているのは悲しいこと。
限りなくゼロに近い、交通社会をつくりたいものです。

さて、今週は『気をつけて! 実はそれって交通違反 エピソード3』。
東京 麹町「みらい総合法律事務所」吉田太郎 弁護士のコメントと監修で
このシリーズのとりあえずの最終話をお届けしました。

「危ない!」と危険を感じた状況で、
クラクションを鳴らして注意喚起することはあると思います。
一方で、他のクルマの運転に腹を立てて
ビービーと周囲が迷惑なほどクラクションを鳴らすクルマ、
時折、見かけますよね?


1)クラクションを無闇に鳴らす行為は交通違反です!

【吉田弁護士の解説】

クラクションは見通しのきかない交差点や山間部の道では
鳴らさなければいけないのですが、それ以外のところでは、
鳴らすことが原則的に禁止されています。

道路交通法上の54条の2号
「車両等の運転者は法令の規定により
警音器を鳴らさなければならない事とされている場合を除き鳴らしてはならない」
と定められています。

例外的に鳴らしても良い場合は危険を防止するためにやむを得ない時、
例えば、歩行者が自分の車の接近に気付かないで横断しようとする場合、
注意喚起のために鳴らすということは良いのですが、
それ以外にむやみやたらに鳴らす事は禁止されています。
前の車が進めるのに進まず、イライラして鳴らす事があるかもしれません。
しかし、それは2万円以下の罰金を取られる場合があります。



クラクションを頻繁に鳴らす、長々鳴らすといった運転の癖がある人は、
「自分は感情が激しやすい性格」だと認識するべきでしょう。
クルマのハンドルは常に冷静な気持ちで握るもの。
その性質は必ず交通事故を引き起こす原因となります。
クラクションの使い方が交通違反だと知ることはもちろんですが、
まずは滅多なことではクラクションを使わない運転を心がけて下さい。


次の「それって交通違反」、
これは・・・ 案外、知らない人も多いかもしれません。


2)ロックをしないで車を離れることは交通違反です!

【吉田弁護士の解説】

鍵をかけないで車を離れることは、少しぐらいなら良いだろうとか
近場のコンビニで飲み物を買ったりするぐらいだったらいいだろうと考えて、
鍵をかけないで車を離れる人がいるかもしれません。

ただ、これは道路交通法の71条5号の2で
自動車を離れる時は、その車両の装置に応じて、
他人に無断で運転される事が無いようにする必要があるとされているのです。
従って、鍵をかけなければ他人に無断で運転される恐れがあり、
道路交通法に違反する可能性が出てきます。

道路交通法の問題も勿論ありますが、
鍵をつけたままにして他の人が運転してしまうと非常に危険。
車を降りる時にはきちんと鍵をかけることを心がけてください。


3回にわたってお届けした『気をつけて! 実はそれって交通違反』
いかがだったでしょうか。
ふだんやってしまいがちな運転行為の中にも思わぬ交通違反があるもの。
今回のシリーズで知ったことを覚えておいてください。


今週は『気をつけて! 実はそれって交通違反』の2回目
監修とコメントは東京 麹町「みらい総合法律事務所」吉田太郎 弁護士でした。


1)ながら運転は交通違反 

【吉田弁護士の解説】

ながら運転というのは非常に大きな問題です。
道路交通法71条5号という法律には、自動車を運転する場合、
停止している時を除いて携帯電話やスマートフォンを通話の為に使用したり、
画面に表示された画像を注視してはいけませんという定めがあります。
これに違反すると5万円以下の罰金、
具体的に危険を及ぼした場合には3ヶ月以上の懲役が定められています。

最悪のケースで人を死なせてしまう場合には過失運転死傷に問われ、
禁固1年2か月の実刑に処されたという例もあります。
刑に服する、服さないなどに関わらず、刑罰が重い、軽いいう事に関わらず、
ながら運転で注意が散漫になる事は明らかですのでやめるようにして下さい。
自分は大丈夫という過信は禁物です。


ながら運転というと、今ならすぐ思いつくのがスマートフォンや携帯電話の使用。
これは反則点数 1、反則金は普通車で6千円。
また、運転中にカーナビ・カーテレビを見ると反則点数は0、反則金が普通車で6千円。
その他にも反則点数・反則金はともにないものの禁止されている運転行為があります

X 読書・雑誌を読む   
X たばこを吸う
X ご飯を食べる    
X お茶やジュースを飲む
X 化粧をする



2)サンダルやハイヒールを履いての運転は交通違反

【吉田弁護士の解説】

サンダルでの運転、ハイヒールの運転は、
道路交通法では直接やっていけないという定めはありません。
しかしながら71条の6号で各都道府県の公安員会が道路における危険を防止し、
交通の安全を図るために必要な事を規制して良いと定めています。

それに則り、各都道府県が危険な運転行為を規制する中で、
例えば、東京都では木製サンダルや下駄など、
運転操作に支障を及ぼす恐れのある履物を履いて、
車両などを運転しない事というふうに定めています。
大阪府でも下駄、または運転を誤る恐れのあるスリッパなどを履いて
車両を運転しない事と定めています。

ですので、サンダルでなければOKだとかスリッパでなければOKだとか、
そういう事ではなく、運転操作に支障を及ぼす恐れがあるかどうか、
運転を誤る恐れがあるかどうか、そういう観点から履物に気をつけてください。
これに違反した場合には5万円以下の罰金が定められています。



こうした「意外と知らない交通ルール」は、
万が一、見つかったら点数が引かれるから、反則金をとられるから、
気をつけようと思う人もいるかもしれませんが、それは間違い!

サンダルを履いて、ハイヒールを履いての運転で、
足元の操作に失敗して事故を起こさないために避けるべきです。


車の運転には多くの法律・法令に従う義務があります。
ルールを破れば罰則が待っているので、みなさん気をつけているでしょう。
でも、意外と知らない、落と穴のような交通ルールも多いもの。

今週からの3回にわたって
『気をつけて! 実はそれって交通違反』をお送りします。
監修とコメントは東京 麹町「みらい総合法律事務所」吉田太郎 弁護士です。

もうすぐ年末、道路が混雑する時期。
先を急ぎたくて、高速道路でも一般道でも追越車線を走り続ける車ありますよね。
でも、追越車線を走り続けることは交通違反。


1)追越車線を走り続けは交通違反 

【吉田弁護士の解説】

道路交通法20条で道路の左端から数えて1番左側の車線を走ることが規定されています。
3車線以上ある場合には1番右の車道以外の車道を通行することが規定されています。
ですから、追い越し車線をずっと走ることは違反するという事になってしまいます。
もちろん1番右側の追い越し車線を使ってはいけないということではありません。
追い越しする時、右折する時、緊急自動車に道を譲る時、必要な場合には使えます。
ただし、ずっと追い越し車線を走り続けるということは認められていません。
この規則の違反には5万円以下の罰金が定められています。



次の「それって交通違反」。
冬の行楽シーズン。
仲間と温泉やウィンタースポーツに車で出かける時、
欠かせないアイテムの1つが 音楽 かもしれません。
でも、あまりに大きな音量でかけてはいけません。


1)爆音カーオーディオは交通違反 

【吉田弁護士の解説】

道路交通法に直接の定めは無いのですが、道路交通法71条の6号には、
各都道府県の公安委員会が道路における危険を防止し、
交通の安全を図るために必要と認めたものについては、
規則で規制出来ることが定められています。

これに則り、例えば東京都なら東京都道路交通規則で、
高音でカーラジオなどを聴き、またはイヤフォンなどを使用して、
安全な運転に必要な交通に関する音、または声が聞こえないような状態で、
車両を運転してはいけないと定められています。
これはカーラジオという表現ですが、広くカーステレをを指すと解されて、
大阪府では「カーオーディオ、ヘッドフォンステレオなどを使用して」と定められていて、
カーオーディオという事が例示されています。

ここで重要なのは、マナー上の問題として周りの人に迷惑をかけないという事もあるのですが、
法律で特に注意を促しているのは、大音量を上げる事によって、
例えば、緊急自動車のサイレンであるとか、周りの音が聞こえない事によって、
安全な運転が出来なくなってしまうかもしれない、
そういう危険を防ぐために音量は適切な所まで下げましょうという定めになっているのです。
運転時に情報を得るのは視覚と聴覚。
その耳を閉ざしてはいけないと注意を促しているのです。


1)追越車線の走り続けはNG

2)爆音カーオーディオはNG

覚えておいてください。

事故が起こる数秒前のふだんの生活と
事故が起こった数秒後の現場のギャップが大きすぎて
とても受け入れることができなかったと語る風見しんごさん。

9年という年月は事故のことを思い出した瞬間に、
感情に流されないよう気持ちを抑える術や
生活していく心を身につけることを可能にしました。
でも、その長い歳月をもってしても、
事故の光景や悲しさを忘れることはありません。

そんなことがないように
小さな子供がいるお父さん、お母さんには、
通学路を一緒に歩いてみてほしいといいます。

何度か一緒に歩けば、危険なポイントがわかるもの。
それを子供に伝えれば、子供はできるだけ気をつけるのです。

ただ、最近の交通事故は、どんなに気をつけたとしても、
被害者が生まれてしまうといったタイプが多発。
いくら子供たちに歩道の内側をみんなで列になって歩くように注意しても
そこに車が突っ込んでくれば、子供の安全は一瞬にして吹き飛びます。
車のハンドルを握る大人が子供たちの安全を守るしかないのです。

今年の春、風見しんごさんは、
娘の「えみる」さんが亡くなってから1年後の
「えみるの赤いランドセル」に続く2冊目の本を出版しました。
タイトルは「さくらのとんねる 二十歳のえみる」。
なぜ、9年後というタイミングで、エッセイを綴ったのか。

前回の本は「えみる」さんが生きた証を残したいと執筆したもの。
今回は、前作からの時間をどんな気持ちで生きてきたか知りたいという依頼があり、
その後の人生を家族がいかに過ごしてきたか
「えみる」さんに手紙を書く気持ちで綴ったといいます。

今年、2016年は「えみる」さんが生きていれば二十歳、成人になっていた年。
このような悲劇を1つでも減らすことを社会全体が考えるべきです。
風見しんごさんの交通安全啓蒙活動は、その目的に大きく貢献しています。


         



少し過ぎてしまいました。
11月 第3日曜日は「世界道路交通犠牲者の日」。
今年は11月20日でした。

交通事故のニュースは音声で、文字で、映像で伝えられます。
でも、そこからは「悲惨さ」が抜け落ちています。
「交通事故」という言葉の裏に、どれだけの酷さ・悲しさ・辛さがあるのか。
誰もがわかっているようで、わかっていないのかもしれません。

今週と来週は9年前、交通事故で10歳の長女えみるさんを亡くした
俳優・タレントの風見しんごさんに体験談。
風見さんは事故以来、交通安全啓蒙活動も行っています。

その交通事故が起きたのは、いつもと変わらない平日の朝。
えみるさんはいつものように元気に「行ってきまーす!」と家を出ました。
自宅から100mほど進み、右に曲がって姿が見えなくなるのですが、
えみるさんは、その日もいつものように100m進んだところで振り返り、
家族に手を振って姿を消しました。
それが風見さんの家族が生きているえみるさんを見た最後になってしまったのです。

右折してから50mほどのところにある横断歩道を青信号で渡っている時、
えみるさんは右折してきたトラックに巻き込まれて命を落としました。

風見さんは自宅に駆け込んできた近所の人から事故を知らされます。
その人は何を聞いても「えみるちゃん、事故」と繰り返すだけだったといいます。
風見さんはどこか擦りむいて血を出しているか、
ひどければ骨折でもして泣いているかもしれないなと思ったといいます。

しかし、サンダルを引っ掛けて現場に行くと、
泣いているはずのえみるさんの姿はありません。
横断歩道に不自然に停められた1台のトラック。
何故、そうしようと思ったか分からないそうですが、
風見さんがトラックの下を覗き込もうとすると
近所の人に「見ないほうがいい!」と声を上げました。
それでも、風見さんがトラックの下を見ると、後輪の間にえみるさんはいました。

風見さんはトラックを持ち上げてえみるさんを助けようとしました。
でも、どんなに力を入れてもトラックはびくとも動きません。
その瞬間、風見さんは現実のあまりの酷さと自分の非力さに道路にへたりこんでしまいました。
そこから目に入ったのは、エンジンがかかったままのトラックの下から
えみるさんを救い出そうとしている奥さんの姿でした。

それまでの風見さんは、死亡交通事故のニュースにふれれば、
「悲惨だな」「辛いだろうな」と思っていました。
ただ、えみるさんの死まで、まさか自分や自分の家族の身に、
そんなことがふりかかるとは想像もしていなかったといいます。

交通事故は突然、起こる。
気を許せば誰かが加害者になり、誰かが被害者になる。
そのことを肝に命じて、毎日の生活を送らなければいけません。