子どもたちは夏休みに入りました。
学校がある時とは生活が変わりって交通事故に遭遇する危険も増えます。
保護者のみなさんは子どもたちに注意を促し、
ドライバーのみなさんは安全運転の意識を高く持ちましょう
今週は1件の交通事故から生まれた
子どもの命を守る交通安全運動を紹介しました。
京都府警が全国に広める「ひまわりの絆プロジェクト」です。





平成23年、京都府内に住む、
東陽大(あずま・はると)くんという
4歳の男の子が、交通事故で亡くなりました。

お兄ちゃんのところへ行くと言って家を出た陽大くん。
お母さんは、前日に足を骨折して一緒に行くことができなかったため、
「端っこを歩きなさい」と声をかけました。

しかし、自宅から200mのところで、
言われたとおりに道路の右端を歩いていた陽大くんは、
背後からきた重さ2トンの大型SUVに命を奪われてしまったのです。

この交通事故を担当した警部補は、
霊安室で変わり果てた我が子と対面するご両親を目の当たりにしました。
横たわる男の子、泣き崩れるお母さん、気丈に妻を抱えるお父さん。
警部補の目からも止めどなく涙が溢れ出てきました。

お母さんは「私が一緒に付いて行っていたら」
「怪我をしていなければ」と精神的に大きなダメージを負いました。

警察署の被害者支援要員でもあった警部補は、
臨床心理士によるカウンセリングなど、
長期にわたり親身になって遺族支援を行います。





裁判が終わった夏。
警部補が遺族の自宅を訪れると、庭には大きなひまわりが咲いていました。

そのひまわりについて、お母さんは「陽大が事故に遭う前、
幼稚園で育てていた種を小さい手いっぱいに握りしめ
自宅に持ち帰ってきていたもので、来年は一緒に植えようねと話していたもの。
生きていた証の形見と思い庭に植えたものです」と語りました。

その後、警部補が人事異動の挨拶で遺族宅を訪問した時のこと。
ご両親から「陽大が生きていた証を残したい。
このひまわりがあちらこちらで咲け陽大もいろんな所へ行けると思う。
もう事故は嫌です」と種を託されます。





警部補は異動先になった警察署の転入者スピーチで、
陽大くんとひまわりのことを話しました。
すると「そのひまわりを育てて命の大切さや交通事故防止を発信しよう」
という声が、署員から上がります。

警察署前の花壇に陽大くんのひまわりの種が蒔かれました。
署員たちが世話をして高さ2メートルの大きなひまわりの花が咲きました。
5年前、平成26年の夏のことです。

その後、陽大くんのひまわりの種は、
この取り組みを大きく広げようという思いから、
京都府警本部の犯罪被害者支援室に引き継がれて
「ひまわりの絆プロジェクト」が発足。
     
府内の警察署・幼稚園・保育園・小中学校などに配られて花を咲かせ、
今では京都府という枠を超え、夏になると全国各地で、
交通安全の願いが込められたひまわりが咲いています。

京都府警のウェブサイトに
「ご遺族からのお手紙」が掲載されています。





どんな日も日本のどこかで
無謀な運転や思いやりのない運転、不注意が、
悲しい事故を起こしてしまう可能性があることを肝に命じて、
ドライバーの皆さんはハンドルを握って下さい。

そして、お父さん、お母さん、
夏休みの子供たちが外に出る時には注意を促して下さい。


先月、交通先進国と比べて、
日本はなぜ歩行者が被害者となる事故が多いのか?
理由についての考察をした回を放送しました。

それでは行者が被害に逢う事故を減らすにはどうすればよいのか?
今回はモビリティジャーナリスト 森口将之さんにお話をうかがい
交通先進国に学ぶ「対策編」をお送りしました。

少しおさらいしましょう。
最近のデータで交通事故死亡者に占める歩行者の割合が、
日本は7カ国中、ワースト2の37.3%でした。

四輪、二輪の運転者は、歩行者優先の意識を強く持たなければいけません。
同時に歩行者が事故に遭わない社会インフラも整える必要があります。

以前、意識についての注意点はお伝えしましたので、
今回はインフラ対策に焦点を当てます。
まず、森口さんが指摘する交通先進国に学ぶ歩行者事故の対策は、
国内にも設置が増えてきた「ハンプ」と「ライジングボラード」です。


【ハンプ】 横断歩道で舗装が盛り上がっている場所

→ 特に学校がある横断歩道に多く設置されている
→ 高さはスロープにはなっているが10cmくらい
→ 手前に標識があるので、通過する際はスピードを落とす
→ スピードを落とさずに時速40kmで通過すると車両にダメージを負う


【ライジングボラード】リモコンで伸び縮みするポール

→ 生活道路の入口に設置 
→ 生活する人や救急車など特別車両がリモコンを持ち
  ライジングボラードを下げて通行できる
→ 他の車別の道を利用してもらう。 


そして、海外では日本には数多くあるガードレールがあまりないとか。
むしろ多いのが横断歩道に立っているポール。
交差点での出会い頭での事故が一番多いため。
横断歩道にポールがあると事故で突っ込んできたクルマをポールが守ってくれます。


さらにそして、ヨーロッパでは、
クルマのスピードを制限する施策も進んでいます。
その代名詞がオーストリアのグラーツで始まった「ゾーン30」。
生活空間全体でクルマの速度を30kmに制限するのです。
これはすでにヨーロッパのほとんどの都市で普及。
中には20km制限のところもあるといいます。
日本にもゾーン30は完全に普及してほしいものです。

こうした歩行者の交通事故対策はどうすれば進むのか?
出口さんによると交通に明るい市長や担当者がいる地域と
いない地域では交通政策にかなりの差が生まれるといいます。

そして、市民の交通安全対する意識。
行政や警察に任せるのではなく自分たちで自身や家族を守るという気持ち。
ヨーロッパは日本よりも住民参加によって施策が決められることが多いそう。
そこに関わることによって全体的な意識が高まり危険の共有もできるのでしょう。

高齢者と子どもに多い歩行中の事故。
行政がきちんと取り組んでいるか目を光らせ、
任せっきりにせず、住民が積極的に関わる姿勢が、
地域の歩行者を守ることに繋がります。


うっかり気がつかない、認識違い、動作の間違い。
人間はミスをするもの。しない人はいません。

ただ、それがクルマの運転でのこととなると
些細なミスが大きな事故に繋がることもあります。
今週は『ヒューマンエラー』がテーマでした。


  


アメリカ運輸省が2015年に発表した全米で起きた交通事故の調査結果。
事故原因の94%がドライバーに起因するとしています。
他は自動車2%。環境2%。不明2%。

事故の要因は1つに限られないことも多いなどの観点から
この統計を疑問視する意見もありますが94%というのは多いです。

一方、日本の運輸省は「ヒューマンエラー事故防止のための
予防安全型技術導入ガイドライン」で交通事故に関わる
「ヒューマンエラー」の定義を


人と機械が協同して目的を達成するためのシステム
(ヒューマンマシンシステム)の中で、
人に期待されたパフォーマンスの水準を満たすことに失敗したため
システム全体がトラブルを起こしたり、
システムダウンになったものをいう



としています。
そして、このガイドラインでは・・・


状況を的確に把握する手がかりとなる情報が、
運転者の目の前にすべて提示されていても、
運転者は状況認識に失敗することがある



と、指摘します。
その上で・・・


運転は、認知→判断→操作の一連の繰り返し。
その過程で「認知」が不完全なら、
それに引き続く「判断」は正しくありようがなく、
「操作」も状況にそぐわない不適切なものになる可能性がある
その意味で「認知」は全ての基本であるということができる



と、しています。
運転に際しては、まず「認知」の部分で間違えない。
このことを心にとめておいてください。





去年、日本で死亡者が発生した交通事故は3,449件。
かなりの割合で車の運転者には法令違反が見られます。
その中には多くのヒューマンエラーのあることが想像されます。

どんな法令違反が多いのか? 
多い順に挙げると

【漫然運転】  →  ぼんやりとした状態で運転すること

【運転操作不適】→  ペダルの踏み間違い、ブレーキ操作の不適、
          ハンドル操作が適切でないなど運転上のミス
【脇見運転】 

【安全不確認】 → 必要な安全確認を怠った

【歩行者妨害など】

【最高速度違反】

【信号無視】



「ヒューマンエラー」は、いま様々な分野で考えられている課題。
その解決の研究もされています。
「ヒューマンエラー」の原因となるパターンから
クルマや二輪の運転に関わるものを拾うと・・・


「無知・経験不足」 →  交通ルールを十分に理解していますか?
             運転に不慣れなことを自覚していますか?

「慣れ」 →  運転に慣れた人にもヒューマンエラーはあります
        それは‘慣れ’によって間違いが引き起こされるからです

「不注意」 → クルマ、二輪の運転時には、運転に集中し
        周囲の状況に細心の注意を払いましょう

「機能低下・疲労」 → 体調の自己管理をしてコンディションを整えましょう



どんなドライバーも、いま挙げた原因には、
いくつか心当たりがあることでしょう。
そこから起こる「ミス」が重大な交通事故を起こしかねないことを認識しましょう。

ドライバーの皆さんは自身の性格、
「怒りっぽい」「すぐ気が散る」など
運転に影響がありそうな自分の性格をいちど省みて下さい。
また、運転の癖を見つめ直して見てください。

その上で、毎日の運転をする時には、
自分の運転技術を過大評価しない。
事故なんて起こすはずがないと過信しない。

同じ道を通っていても同じシチュエーションは2度とない。
いつも注意深さを忘れず、ハンドルを握ってください。
そして、疲れている時や気になることがある時は運転を控えましょう。






あさって7月7日は「七夕」。
いまごろは短冊をつけた笹が、
全国にたくさん飾られていることでしょう。

この時期は願い事を託す短冊に交通安全へ願いを書き、
事故を撲滅しようという催しが全国で開催されます。
今週は2つの例を紹介しました。





1つ目は女性部会員が中心となって、
管轄する警察署に、交通安全の七夕飾りを贈呈している
三重県 桑名市の桑名地区交通安全協会。

今週の月曜日に31回目の贈呈がありました。
女性部会長 水谷峰子さんにお話を聞きました。

七夕飾りの贈呈を始める前は、
現在に比べると多くの交通事故が発生していたそうです。

そんな中で6月〜7月は、
交通事故が増加傾向にあり子どもの犠牲者も多い。
悲しむ人がいなくなるよう、交通安全の意識づけができ
事故防止に繋がる一助になるのではないか?という思いから
七夕飾りの贈呈を始めたといいます。

短冊に書いているのは管内の小学校児童をはじめ、
警察官や企業団体に勤めている人や来署した人など。

今年もおよそ100葉が集まり、
七夕飾りは桑名警察署庁舎出入口の両脇に飾ってあります。
例えば、どんな交通安全祈願があるかというと

「みんなが交通事故に遇いませんように」

「交通事故や交通トラブルがなくなりますように」


安全で安心な交通社会の実現は、みんなの願いであり、勤め。

交通事故は減少傾向にありますが、記録の残っている昭和43年以降、
毎日、日本のどこかで交通死亡事故が発生し0になる日はありません。
みんなで交通事故が無い社会の実現に向けて
取り組んでいきましょうと話して下さいました。





そして、もう1つは広島県 北部 三次市の「交通安全七夕まつり」。
月曜日、39回目が開催されたこの催しについて
危機管理課 西本直樹さんに電話でお話を聞きました。
もともとこれは市内の幼稚園の1つが昭和56年に始めたイベント。

子どもたちはお母さん、お父さん、
まわりの大切な人たちのことを思って
毎年、一生懸命、短冊に交通安全の願いを書くそうです。

「道路に飛び出さない」
「シートベルトをしめよう」
「お酒を飲んだら運転しない」


最後は短冊をつけた風船50個を空に飛ばし、
その時の子どもたちには笑顔が溢れているそうです。
子どもたちの笑顔と交通安全が全国に広がればと話して下さいました。

交通安全の願い事を書く時、
誰もが大切な人のこと考えて、
事故に合わないよう、安全でいるよう祈るはず。
反対に自分も事故の悲劇を生まないようにと思うはず。

七夕には交通安全祈願の短冊をつけた笹の木が
全国にもっとたくさん増えるといいですね。