近年、問題になっている高齢ドライバーの交通事故。
中央大学 理工学部 名誉教授で都市環境学が専門の鹿島茂さんが、
3年前、あるアンケート調査の結果を発表しました。

「高齢運転者のヒヤリハット経験と交通事故の関係」。
誰もがいずれは高齢運転者になります。
注意喚起の意味を込めて、今週はお伝えしました。





鹿島教授が行なったアンケート調査の対象は、
35都道府県、65歳以上の男女、およそ1万1千人。
ヒヤリハットについては項目が4つありました。


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この中に「運転中、ボーッとすることがありますか」などの質問が16。
回答は「たまにある」「よくある」など、頻度を重視して選択肢を設けました。


◆_甬3年の交通事故経験の有無


 過去1年のヒヤリハット経験の有無


ぁ。海通椶旅猝椶YESだった人に対して「どんなケースだったのか?」

11項目を用意して、その頻度も聞きました。






アンケートから得られた客観的な結果。
「最近の運転で気になること」という項目については、
高齢化にともなう身体的衰えの問題が表れていました。

体をひねるのが苦手になる。
見たつもりだけど、そこまで角度が届いていない。
夜やトンネル、雨の時に見にくくなって危険に感じることが多い。

そして、判断力。
交差点では右から来る車、左から来る車、歩行者、自転車、
いろんなことに注意しなければならず、つい確認を忘れてしまうこともあり、
驚くことがあるというものでした。





次に「ヒヤリハットの項目」について。
バックで駐車しようとした時、他の車や障害物にぶつかりそうになった。
出会い頭にぶつかりそうになった。前の車に追突しそうになった。
車道から店舗や駐車場に入ろうとする時に縁石にぶつけた、
他の人や自転車にヒヤッとしたという回答がありました。





アンケートの結果を分析した鹿島先生は
興味深いというか少し怖い仮説を立てました。

高齢者の中でも年齢が上がると
ヒヤリハットの経験数が減っていました。
ヒヤリハットは、主観的な判断。
年齢を重ねるにつれて「ヒヤリハット」の状況を
認識しなくなるかもしれないと考えたのです。

さらに最近3年間の交通事故経験の有無で調査対象者を分けると、
事故経験をしてない人の方がヒヤリハットを経験が少ない。
こちらは、事故を起こしていない人の方が、
危険察知に疎いかもしれないという仮説が立ちます。

鹿島先生によると、警察はよく、
一番怖いのが歳をとるまで無事故だった人が起こす事故だと言うそうです。
大きな事故になってしまう可能性が高いという経験則からきた発言。
おそらく、それは自分の運転に過信に端を発しているのでしょう。





体力や視力、判断力は若い頃と比べたら落ちていくことを
きちんと認識しておくようにしましょう。
そして、もしヒヤリハットを体験したら、どうしてそのことが起こったのか?
きちんと理由を考えて、次からの運転に生かすこと。
自分自身の運転能力を客観的に見られるようにしたいものです。


新型コロナウィルスの感染が拡大して以降、
自転車の利用が増加しているそうです。
それにともなって自転車関連の事故も増えています。

今週は公益財団法人 交通事故総合分析センター
中西盟さんにお話を伺い「自転車事故に注意」をお伝えしました。







ある自転車販売大手は、
この夏の売上高が去年同月比で4割以上アップ。

一方で栃木県では8月の自転車事故件数が119件を記録。
月別に見ると過去5年間で最多でした。
地元新聞は「自転車利用が増え、事故も増えた可能性がある」と報じています。
そんなわけで自転車の事故には気をつけたいタイミング。







中西さんによると自転車事故で今も昔も最も多いのが「出会い頭事故」。
自転車は道路交通法上では「車両」です。

自転車関連事故を車輌 対 車輌を見ると令和元年は約7万5千件。
事故類型別では「出会い頭」が半数以上で4万件となっています。
続いて「左折時」が約1万1千件。「右折時」約1万件。

死亡事故でも「出会い頭事故」が最も多く、
次いで「自転車単独事故の路外逸脱」「追突」です。

「出会い頭事故」が起こる典型的な場所は信号が無い小さな交差点。
こうした交差点には木や建物などがあって交差する道路状況が見にくいもの。
一時停止の標識があることが多いですが、自転車が止まらずに交差点に侵入
車とぶつかるという事故が想像されます。

また、自転車の交通事故データで気になるのが「人 対 自転車」の事故。
自転車関連事故は10年前から半減しているのに
「人 対 自転車」の事故は2016年から増加しています。 







全国の警察が1年間に摘発した自転車の違反行為が、
去年初めて2万件を超えたことが9月に明らかになりました。
およそ2万3千件が摘発されています。


最多は「信号無視」で、ほぼ半数。
次に「遮断踏切立ち入り」で約6千件、「一時不停止」、
イヤホン使用や傘差しなどの「順守事項違反」と続きます。
違反行為は事故に繋がるのでやめましょう。

    





自転車に乗る人が事故に逢わない、起こさない、予防と対策。
まずは自転車も車両として交通ルールに則って安全に走行することが基本。
近年、自転車運転者への罰則が強化されたように、
歩行者の延長という考えは捨ててください。

自転車は車道の左端通行が原則で歩道は例外です。
歩道を通行する場合は自転車の通行が認められているか確認した上で
通行可の場合でも歩行者優先を忘れないようにしましょう。

自転車利用者全体に言えることですが、
ヘルメットの着用率は、まだまだ低いとのこと。
事故の際の被害軽減のためにも着用するよう心がけましょう。

万が一に備えて自転車保険にも加入するべきです。
加入を義務化している都道府県もあります。
自身がお住まいのところはどうか。
いま一度、確認してください。







そして、普及が広がる電動アシスト自転車の事故が増えています。
漕ぐ力をアシストしてくれるので速度を出しやすい。
ふつうの自転車に比べて重量がある。子どもや荷物を楽に積める。

そうしたメリットが故に衝突した時の力は大きく、
歩行者の命を脅かす事故になりかねません。
十分に注意して運転してください。

初めての電動アシスト自転車に乗る時には、安全な取り扱い、
特に漕ぎ出しの加速をきちんと習得してから走行するようにしましょう。



「多段階一時停止」あるいは「多段階停止」という言葉を聴いたことはありますか。
安全のために推奨されることが多い一方で危険を指摘する声もある
この「多段階一時停止」について、今回はお伝えしました。
コメントは、JAF東京支部 事業課 交通環境係  高木 孝さんでした。





多段階一時停止は一般に、見通しの悪い交差点などで一時停止の規制があって、
停止線で止まるだけではなく、2回3回にわたって止まる停止方法のことを言います。

まずは、停止線で止まる。次に、鼻先を少し出して止まる。
最後にドライバー自身が確認できるところで止まる。

ドライバー自らが見るためではなく
交差する道路を走行してくるかもしれない車・自転車や
歩いてくるかもしれない歩行者に対して
自らの存在を認識してもらい、出会い頭の事故を防止する目的があります。





JAFも長年、多段階一時停止を推奨しています。
ドライバーが自分で安全に責任を持つという考えから
停止線で止まり、自分で確認するという2段階のやり方だと
場合によっては他の車や自転車、歩行者からすると
「いきなり車が出てきた」と思われかねない道路環境があるのも事実。
その前に相手に見つけてもらうというコミュニケーションの発想で
事故リスクが軽減できるという考えからです。


ただ、意外とこの多段階一時停止は難しい点もあるとのこと。
車両感覚が身についていないと、
微妙に出ていなくて相手からは見えなかったり、あるいは出すぎてしまったり。

安全のお確認方法も、多くの人が停止線で止まり、
そのあと動きながらキョロキョロ見ながらゆっくり進むそうです。
動きながらだとしっかりと安全確認するのは難しいので
しっかりと止まった時に確認するという高木さんの指摘でした。





最近では配達中の多段階一時停止の実施を義務づけている運送会社もあります。
「多段階一時停止」を推奨している自動車教習所もあります。
一方で「多段階一時停止は後続車にとって危険では?」という声もあります。
これについて、高木さんに伺ってみました。

確かに運送会社のステッカーを見ると、
どんなところでも多段階停止するような印象があります。
見通しがいい、停止線で止まっても十分に安全確認ができる交差点で
多段階一時停止すると追突の危険性が出てくるかもしれません。
後続車はいちど止まって安全確認したのだから進むだろうと思うからとのこと。

見えにくい交差点では、多段階一時停止を取り入れる。
その上で後続車の立場にある時は、前の車が「多段階一時停止」を
するかもしれないと念頭に置いて運転することが必要でしょう。
ゆとりがないと前の車が再びブレーキを踏んだ時に追突しかねません。
注意して下さい。





福岡県の中央部、筑豊エリア、田川市の大浦小学校が先月、
福岡県「学童交通安全運動」の最優秀賞を受賞しました。
なんと41年連続の最優秀賞!
今週は、その活動についてお伝えしました。





大浦小学校には45年前の1975年「交通安全少年隊」が誕生しました。
当時のPTAが子供に交通事故から自分を守ることを身につけさせようと
結成に至ったといいます。

それ以来、全校生徒が「交通安全少年隊」のメンバー。
そして、6年生になると“指導班”となります。

石橋格校長先生によると、
近隣の学校には大浦小学校の交通安全少年隊のように
全校を挙げて交通安全に取り組んでいる学校はないそうです。

指導班の活動は毎月10日・20日・30日の朝7時45分から8時15分、
当番の6年生、4、5名ずつが学校正門前の押しボタン信号の所と
多くの子供が通る団地の横断歩道に横断旗とホイッスルを持って立ち
下級生が安全に渡れるように通しているとのこと。





大浦小学校の6年生は現在2クラス、33名。
今回は、その指導班のうち4人の生徒に話を聴きました。

東内優空さんは「41回連続最優秀賞を受賞したと聞いて
驚いたし嬉しかったです。去年の6年生が頑張っている姿を見て
すごいなと思っていましたが、この報告を聞いて改めて尊敬しますし
私たちも頑張らなくてはと感じました」と話してくれました。

「大浦小学校は6年生になると、
交通安全少年隊指導班の活動は当たり前だと思っています。
その伝統を次の6年生に引き継いでいかないいけないとと強く感じています。
このことがずっと続いてきた理由だと思っています」
と話してくれたは松本妃奈さん。





小田柊那さんは「私たちは交通安全少年隊の活動をとても誇りに思っています。
私は下級生への挨拶や止まってくれた車の運転手さんへの一礼を心がけています。
この活動が受け継いでいかれるよう頑張って指導していきたいと思っています」
と話してくれました。

将来は運転免許証をとって車の運転をしたいという山本正真さんには、
最近、よく報道される「あおり運転」や「ながら運転」について、
どう思っているのか? 聞いてみると
「自分はそういう人たちの考えていることがよく分かりません。
なぜ、そんな平気でそういうことをやるのか?
他の人の命を奪いたくないですし、
そういうことをしてしまうと家族にも影響していくので、
安全運転でいきたいですね」とキッパリ意見を述べてくれました。





小学校入学時から交通安全少年隊だったみなさんは
おそらく全国一般の小学生より、かなり意識が高いのだろうと思います。

大浦小学校生徒たちのこうした活動は地域の大人にも影響を与えています。
石橋校長によると、横断歩道に一緒に立って指導する方や、
下校時の見守り活動や防犯パトロールをしてくれる人もいるそうです。

「1番嬉しいのは校区の中で交通事故が起こっていないこと。
学校の登下校中に交通事故で大きな怪我をした事案もありません。
それは地域を挙げて交通安全に対する意識が高まっている現れではないかと
私は大変嬉しく思っています」と話して下さいました。

子どもたちの交通安全活動は、地域の大人の意識を高めます。
そして、彼らが大人になった時、安全運転の思いが培われていることでしょう。
さらに、その子どもたちへと、交通安全の大切さが伝えられるはずです。


8月に「高齢者に適した安全運転と円満な免許返納のために」という情報サイト
「高齢ドライバードットコム」がオープンしました。
今週は、このウェブサイトを紹介しました。





高齢ドライバードットコムを立ち上げたのは、
トヨタ自動車が母体となって創設された
一般財団法人トヨタ・モビリティ基金。

より良いモビリティ社会の実現や
モビリティ格差の解消に向けて活動する組織です。

今回は、そのプログラムマネージャー 
富井雄三さんにお話を聞きました。





年々、交通事故の発生件数は減っています。
東京都を例にとると2010年のおよそ5万5000件が、
2019年はおよそ3万件。

しかし、65歳以上の高齢運転者が「第一当事者」の
交通事故発生件数の減少は他の世代と比べて緩やか。

そのため、交通事故全体に占める割合は上昇しています。
2010年のおよそ13%が、2019年には18%。

そんな状況を踏まえ
高齢ドライバードットコムが発信している情報は大きく2つ

1つは高齢ドライバー本人向けの情報。
高齢ドライバーの免許更新制度、安全に車に乗り続けるための運転習慣、
車の安全装備とその購入助成制度、マイカー以外の移動の選択肢などが紹介されています。





例えば「高齢ドライバーの事故を知る」という項目に
死亡事故の「人的要因比較」があります。
        
75歳以上と75歳未満でかなり違うのが「操作不適」。
75歳未満だと「人的要因」全体の16%ですが、
75歳以上は30%とほぼ2倍です。

その内訳で多いのは「ハンドルの操作不適」17%。
「ブレーキとアクセルの踏み間違い」5.4%。
75歳未満の「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は1.1%。
75歳以上は、その5倍です。

また「自分の運転能力を調べる」という項目では、
交通安全関連のウェブサイトに掲載されている
チェックリストへのリンクが多数あります。

高齢者事故の実態を知り、自分の状態をチェックして、
あらためて安全運転に臨む、あるいは潮時だと感じたら、
免許返納を考えることができます。





そして、2つめは高齢者ドライバーの家族向け情報。
高齢ドライバーの車に同乗した際、運転能力を観察するチェックポイントや
免許返納までの検討の流れなどがアドバイスも交えて紹介されています。





目に留まるのが「免許返納に応じてもらえない!」
この悩みを抱えている方、多いかもしれません。
九州大学 大学院 教授で交通心理学協会 副会長
志堂寺和則さんのインタビューが掲載されていて参考になりそう。





高齢者の運転について、富井さんが特に伝えたいことは2つ。
1点目は安全に長く車に乗れるよう高齢ドライバー自身や家族との運転ルールを作ること。
「運転能力」「体調」「天気」「道路状況」を鑑みて危ないと判断した時には運転を避ける。

2点目は高齢ドライバーの交通安全の取り組みには
本人の努力と同じくらい周囲のサポートも重要だということ。

「加齢による運転能力低下は、誰しもが避けられない問題です。
今はまだ、自身やご家族の運転に心配がない人でも
ぜひ一度高齢ドライバードットコムのウェブサイトを見て、
10年先、20年先のご自身やご家族の移動のあり方について
考えるきっかけにしていただければと思います」。
富井さんは最後にそう話して下さいました。