第33回 国と自動車メーカーによる交通安全対策 後編

2015/11/12

東京モーターショー 2015の一環で自動車安全シンポジウムが行われました。
テーマは『交通安全のための予防安全技術』。
今回は、先週の続き「国と自動車メーカーによる交通安全対策」の後編でした。

先週「国は3つの方策で交通安全対策を進めている」とお伝えしました。

1)製品の安全基準をつくる 
      
2)新しい安全技術を開発促進する
      
3)製品の安全性能を評価して消費者に知らせる 


後編は2つめ「新しい安全技術の開発促進」、まさに「予防安全技術」の部分。
これは「ASV(先進安全自動車)」技術とも呼ばれ、
実用化が始まったことで注目を浴び、各自動車メーカーもPRに力が入っています。

一般社団法人 日本自動車工業会
安全・環境技術委員会 安全部会 部会長 高橋 信彦さんによると
ここ1、2年で予防安全技術は急激に伸びいます。
去年のデータを見ると普及率は「自動ブレーキ」 41.1%、「はみ出し防止装置」 8.6%。
前年と比較すれば10%が40%になり、3%が8%を越えているのだそうです。

予防安全技術に取り組むべきだとの認識が広まったのは2006年、2007年ごろ。
交通事故統計を見ると、それまで精力的にやっていた
エアバッグや衝突安全対策による事故削減効果が鈍ってきたのです。
対策が行き届くと飽和状態になっていくもの。
何か次の施策をやらないと、これ以上、事故を減らすことはできないだろうと。
そこで予防安全技術への関心は高まってきたのです。

現在、その代表的なものは「衝突被害軽減ブレーキ」、 いわゆる「自動ブレーキ」と
「車線逸脱警報装置」、いわゆる「はみ出し防止装置」。

「ASV(先進安全自動車)」技術には、
人間の器官でいうところの情報をキャッチする「目」、
状況を認識してどんな行動をとるべきか判断する「頭」、
実際に行動する「足」となる機能が必要です。


「自動ブレーキ」は・・・

「足」は横滑り防止装置が少し前に法制化されて、全車搭載になりました。
車のブレーキをコントロールする能力を持ったというわけです。
電気信号でブレーキの掛け方をコントロールするので、
電気信号の効かせ方によってフルブレーキが出来るます。
つまり、自動でブレーキをかける事が出来る訳です。
これで、まず「足」を持ったと。

では「目」は何かというとレーダー、レーザーやカメラ。
カメラは距離を測る事が難しいのですが2つ使えば可能です。
するとコンピューターを使い「こういう形をしていれば人」とか、
「こういう形をしていれば車」というように認識することが出来ます。

そして、最後は「頭」。
「それが車である」という事をどうやって判断しているかというと、
簡単に言えば、コンピューターの中で、今、見ているものと車を比較する、
それを昔のパソコン、マイコンでやると膨大な長い時間がかかりました。
ところが、今のマイクロプロセッサーの処理能力の高さなら一瞬で可能。

以上のような条件が全部整ってきたので、
予防安全技術が普及出来るようになったのです。

そして、「車線逸脱警報装置」はカメラで白線の位置を認識。
その位置づけに異常を感じると警報が鳴ります。
そして、かつて自動車のパワーステアリングは油圧でしたが、今は電気信号。
はみ出しそうになるとステアリングでアシストする。
また「横滑り防止装置」によって4つのブレーキをコントロールできるようになったので
四輪を違うようにコントロールすれば向きを変えることもできます。
こうした機能の組み合わせて車線を越えてしまわないようにすることが可能なのです。

「ASV(先進安全自動車)」技術は、
他にも設定した一定速度で走り、前のクルマとの距離を一定に保つ
「ACC(Adaptive Cruise Control)」などが実用化されています。
        
ことところ予防安全技術が一般に浸透してきて
ドライバーの替わりに運転してくれるイメージを持つ人もいるかもしれません。
でも、それは大きな間違いです。

責任を持って運転するのはドライバー。
「もしも」の時に安全のための運転を支援してくれるかもしれないのが安全予防技術。
そのことを念頭におき、あくまで安全な運転を心がけて下さい。