第44回 ゾーン30

2016/01/28

「ゾーン30」という交通安全の施策を知っていますか。
警察庁が 平成23年、今から5年前に全国の警察に導入を通達しました。
ただ、残念ながら、まだ認知度はそれほどではありません。

「ゾーン30」は欧米で普及する交通事故対策を日本に導入したもの。
交通事故対策は道路(線)や交差点(点)にポイントを置いて、
問題解消を図るのが一般的ですが「ゾーン30」は区域でそれを目指します。

「ゾーン30」として整備される区域は
幹線道路や河川に囲まれた住宅街や商店街など。
歩行者の通行を最優先に考えるべき地域です。
生活道路における歩行者や自転車に乗る人の安全確保を目的として
車両の走行は最高時速30kmに制限されます。
また、速度オーバーや抜け道として通行することを抑制するため
他の施策と組み合わせることもあります。

生活道路とは幅5.5m未満の地域住民の日常生活に利用される道路。
なぜ「ゾーン30」の対象になるかというと
狭い道路は歩行者と自転車に乗る人が死傷する交通事故が増えるから。

警察庁のあるデータでは、
交通事故死傷者の構成率は幅5.5m以上道路だと・・・

自転車12.5% + 歩行者6.9% = 19.4%

ところが幅5.5m未満の道路だと・・・

自転車25.3% + 歩行者9.6% = 34.9%

15.5%増加します。

そして、なぜ車両は「時速30キロ制限」なのか?
それは歩行者と車両の交通事故では
車の時速が30キロを超えると致死率が上がるから。

これも警察庁のデータによると・・・

時速25キロ - 歩行者の致死率0.9%

それが・・・

時速35キロ - 2.7%
時速45キロ - 7.8%
時速55キロ - 17.4%


と上昇します。

「ゾーン30」の導入は交通量や交通事故の発生状況などをもとに主に警察主導で決まります。
警察で条件を満たす生活道路を選定して町会や自治会に打診して
了承を得て、整備を進めていくという流れ。
地域住民の要望が高い地域を優先的に整備するケースが多いそうです。

「ゾーン30」はドライバーに周知させる必要があるので
どんな表示、標識で、そのことをわかりやすく伝えるかが重要。
今回お話を伺った日本大学 理工学部 交通システム工学科 助教
稲垣具志さんによると、稲垣さんが「ゾーン30」導入に関わる
東京 世田谷区 二子玉川の例は住民からの発意で導入された珍しいケース。

例えば商店街の沿道に立つフラッグが地域の小学生が描いた「ゾーン30」の絵だったり、
地域のマスコットキャラクターが「ゾーン30」の標識の下に描かれていたり、
街の組織がそれらを決めて実現しているそう。

ただ「ゾーン30」を認識させる方法について
東京都内を管轄する警視庁の交通部 交通規制課 管理官
西村博之さんによると警視庁は違う立場をとっているようです。

場所によって異なるデザインが、あまり認知度が上がらない1つの要因。
警視庁で統一的な看板を設置することにしているとのこと。

東京だけではなく都道府県警察・住民・ドライバー・研究者、
全体の共通理解のため、今後のすり合わせが必要なのかもしれません。
もっと「ゾーン30」の告知活動も。

警察庁が目標としているのは平成28年度で全国3,000箇所に導入すること。
2014年3月時点で1,827です。

今日、番組を聴いた皆さんは、
交通安全のため「ゾーン30」を忘れないようにして下さい。