第185回 ビジョン・ゼロ

2018/11/01

11月になりました。
毎年、11月第3週日曜日は、
イギリスから生まれた「世界道路交通被害者の日」。





交通事故の被害者を追悼し「故被害者を無くす」ことを誓いますが、       
日本は交通事故について「被害者を減らそう」という意識が強いのかもしれません。
この分野の先進国は被害者ゼロを目指しています。
その最たるものが「ビジョン・ゼロ」を追跡します。





いま、日本では1年間に何人ぐらいの方が、
交通事故で尊い命を失っているか? 

去年2017年は3,694人。
1948年に集計が始まってから過去最小の数字です。

これまでの記録は、まだ自動車が少なかった終戦から4年、
データ集計が始まって2年目の1949年(昭和24年)。

当時の全国の自動車保有台数は、およそ30万台。
現在の8,100台と比較すると、わずか0.4%でした。

「過去最小」ということは評価できるかもしれません。
ただ、年間に3,694人が、亡くなっているという事実を考えると
「過去最小だから良かった」ということにはなりません。

日本も交通事故に関する先進国を見習い
強く「ゼロ」にすることを目指していくべきです。

ビジョン・ゼロ運動が生まれたのはスウェーデン。
21年前の1997年に国の議会で決定されました。
国内の交通システムによって死亡する、
重傷事故に遇うことをゼロにする長期プロジェクトです。





プロジェクトの責任があるのは、さまざまな立場の人たち。
国会・地方議会・行政・警察・自動車メーカー・
輸送が必要な企業および輸送企業・道路関連団体と道路を使うすべての人。
国の政策として、全方位的に意識を高めようとしました。





このプロジェクトについては、日本の道路関係者が、
「私達は起こった事故を調査して次の道路建設に生かす手法を取っています。
しかし、ゼロビジョンはまったく違います。まず事故は起こるものと考え、
それが起こる背景を徹底的に分析し、起こらないよう初めから予防策を施すものです。
医療でいえば、治療よりまず予防という逆の発想です。』と説明しています。

<ビジョン・ゼロの具体的な施策>

■ 道路の真ん中に中央分離帯を設ける

■  衝突すると危険な場所には、ガードレールを設ける
 (始点と終点は衝突をやわらげる木製)

■ 住宅街の制限速度30km

■  電線は地中に埋め、電柱はなし
  電柱が地上にないことは、車の衝突を防ぐばかりでなく
  自転車や歩行者の視野を妨げないことにもつながっている

■ 自転車のヘルメットの着用義務

■ 冬はスタッドレスタイヤ装着義務

■  居眠り防止や減速をうながす路面突起

■ 広い歩道やサイクリング専用道路

■ ドライバーが認識しやすい場所・タイミングに設置されているロードサインなどの工夫
         
■ 昼間のヘッドライト点灯の義務

   
などです。





ビジョン・ゼロ運動を始めてスウェーデンの交通事故被害者は減少しました。
1990年代は交通事故死亡者は年間800〜900人だったのが
 

    2000年 591人 
        ↓
    2004年 480人 
       ↓
    2015年 259人 



まだ「ゼロ」を実現できてはいませんが、
こうした効果を受けて、ヨーロッパ各国で、
ビジョン・ゼロを取り入れるようになりました。

スウェーデンと日本の比較を見てみると、
2015年の人口10万人あたりの交通事故死者数は、
日本が3.8人であるのに対してスウェーデンは2.8人です。

今、アメリカ ニューヨーク市でも、
交通事故で亡くなる歩行者の数が減っています。

去年2017年は101人。
記録を取り始めた1910年以来、過去最小の数字でした。
これはデブラシオ市長が掲げた「ビジョン・ゼロ」の効果だとみられています。

就任した2013年の死亡者184人から4年で83人も減りました。
NY市は速度上限を時速25マイル(およそ40キロメートル)にするなど
歩行者を守るための交通システムの改善に着手しています。

日本もビジョン・ゼロを打ち出し、
その概念を共有したほうが交通事故撲滅に一歩でも近くはずです。