第236回 海外に見る交通事故対策

2019/10/04

日本では交通事故死亡者ゼロを目指してさまざまな対策や
交通安全のための施策があります。

結果として、その数は年を追うごとに減少。
去年2018年は前年から162人マイナスで
1948年の統計開始以降、最も少ない3,532人でした。

減っているのは喜ばしいことですが、
まだ3,500人を超える方が亡くなっているという現実があります。
また、交通事故全体の数も前年から4万件も減っていますが、
それでも43万345件も起こっているのです。
そこで、今週はもっと交通事故が減るように
諸外国での交通安全に対する取り組みを見てみました。
いずれも日本で少しずつ広がっていることです。


<トリックアートを使った横断歩道>

人間の目の錯覚を利用した絵や造形物「トリックアート」。
それを横断歩道や道路上のマークに取り入れたのです。
始まりはフィンランドだと言われています。
ドライバーからは横断歩道のラインなどが立体的に浮き上がって見える。
そうすると反射的に気をつけようとスピードを落とるというもの。
信号のない交差点の手前や車道の両側
中央線や歩道との境界線を超えないように
この方法がとられているところもあります。


<早めのヘッドライト点灯>

日暮れが早くなってきました。
ドライバーの皆さんは早めのヘッドライト点灯を実行していますか?
海外では日中でもヘッドライトの点灯を義務付けている国があります。
チェコ、ブルガリア、フィンランド、ハンガリー、ノルウエーなど。
「義務」ではなく「推奨」を入れればヨーロッパではさらに多数。
ヘッドライトはいつでも点けることが常識になってきています。

早め点灯のメリットは視界の確保はもちろん、
自分のクルマの存在を他のクルマや歩行者、
自転車を乗る人に気づいてもらえることです。
いずれ日本も日中でも義務化されるようになるかもしれません。


<ラウンドアバウト>

イギリスで生まれて世界に広まる現代版「ラウンドアバウト」。
日本でも2014年の道路交通法改正で「環状交差点」として法律的に法整備され
少しずつ全国に広がっています。

ラウンドアバウトは信号がなく、円を描いている交差点です。
日本では左側通行なので右回り。
一方通行で円を描くようにクルマが走り、             
環状内に入るクルマは交通の流れを見極めながら徐行でアプローチします。
環状内から出ていくときは左折をする感じで次の進路へと向かいます。

この交差点のメリットはスピードが出せないこと。
他のクルマと衝突しても大きな事故になる可能性は低いのです。
また、信号のための電力を必要としないため災害に強いという側面もあります。


<飲酒運転に対する処罰>

法律違反に対して厳格な処罰が待っている国もあります。
デンマークでは飲酒運転で検挙された場合、運転免許は取り上げ。
クルマは没収されてオークションで競売にかけられてしまうそうです。
売り上げは国のもの。

また、フィンランドではスピード違反に対する罰金の額が膨大。
収入や扶養家族の人数などによっても変わってきますが、
何百万円、何千万円も請求されることがあるといいます。

厳しすぎるという見方もあるかもしれないが、
悪質な交通違反には、そのくらいのペナルティがいいのかもしれません。


<ビジョン・ゼロ運動>

いま交通先進国では交通事故死者数をゼロにする
「ビジョン・ゼロ」という本気の取り組みが始まっています。
その先駆けがスウェーデンで1997年に道路交通安全法が成立しました。

これは長らく続いてきた、多くの国と地域では今でも続いている、
ドライバーの過失を無くすというアプローチから脱却しようというもの。
ドライバーなどの道路利用者が交通安全の責任を持つという考え方をやめて
交通システムを作る側が安全性に責任を持つという前提に立っています。


<厳しいスピード制限を設ける>

・正面衝突事故のリスクのある道路では70km/h以下
・側面衝突事故のリスクのある道路では50km/h以下
・歩行者・自転車と車が衝突する可能性のある道路では30km/h以下


<過失があっても事故が起きない、
 事故が起きても重傷や死亡に繋がらない交通システムを整備>

・自転車専用道路をつくる
・道路を作るときにスピードが出ないような仕組みにする


安全のためには、多少のmobiltyが失われてもやむ無しとするのです。
海外の学ぶべき交通安全アプローチは、
どんどん日本も導入を検討して、
1つでも交通事故の数が減らしたいものです。