第13回 KM理論 前編 

2015/07/02
今週と来週は30年以上、交通事故防止の研究に取り組む
九州大学 松永 勝也 名誉教授が提唱しているKM理論について。

コメントは2012年に松永名誉教授と設立した「事故なき社会 株式会社」 
代表取締役、チーフコンサルタント 江上 喜朗 さん。
江上さんは福岡市 南福岡自動車学校の代表取締役であり
カメのコスチュームを来て学校をまわり、
交通安全を説く「かめライダー」としても活躍しています。

さて、KM理論という名称は「九州大学」「松永」のアルファベット頭文字から名づけられました。
交通事故の4割弱が追突事故、3割強が出会い頭の事故。

それぞれを1つの運転習慣、
具体的には4割弱の追突事故を防ぐ為に「車間時間を4秒取る」、
3割強の出合い頭の事故を防ぐために「交差点で一時停止を2回する」、
ドライバーがたった2つの運転習慣を身につけることで
4割+3割=7割の事故を無くしてしまおうという提唱です。


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前編は大きな2つの交通事故パターンのうち「追突事故」について。
追突・衝突は『車間距離』と『停止距離』の関係から起こります。


「車間距離」 ・・・ 車から障害物までの距離

「停止距離」 ・・・ 車が止まるまでの距離 

 車間距離 > 停止距離 = 追突しない

 車間距離 < 停止距離 = 追突する



 さらに停止距離は2つの“距離”の合算です → 停止距離 = 空走距離 + 制動距離

 「空走距離」 ・・・ 危険を察知してブレーキを踏むまでに車が進む距離
 
 「制動距離」 ・・・ ブレーキを踏んでから車が止まるまでの距離



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上のことを踏まえた上で・・・まずは「停止距離」。

このうちの「空走距離」は反応が早い人ほど安全と考えがち。
でも、それは間違い。反応速度がブレる人が事故を起こします。
反応が遅い、例えば2秒の人でも、それが一定で自分でそのことを把握していれば、
車間距離を取り、事故を起こしにくいもの。
一方、反応速度が早い、例えば0.2秒という人は、
自分は反応が早い思っていると狭い車間距離での運転となり、
偶然にでも反応時間が送れてしまえば追突事故に繋がります。

この反応がブレる要因は大きく3つあります。
1つが人間の集中力には限界があること。
その前に凄く集中するような事をやっていると、運転の集中力は落ちます。
2つめは心理的なこと。悩み事などにが気がいっていると反応速度は遅れます。
3つめは環境的なこと。霧や暗さや雨などに反応時間は影響されます。

また「停止距離」の要素のもう1つ「制動距離」も
雨や雪など、路面の状態で変わるものです。

次に・・・「停止距離」より長くあるべき「車間距離」は狭くなる傾向があります。
その要因の1つは時間的焦燥感、現実的に急いでいること。
要因のもう1つは人間の本能。
特に急いでいない時でもエスカレーターがあったら歩いて登ってしまう人はいるでしょう。
かつては狩猟をしていた人類。
競合よりも先に獲物と食べないと生死に関わります。
先に先にという衝動が残っているということです。
ビジネス上ではいいことですが、運転では危険に繋がります。

ただ、実は「事故なき社会 株式会社」が交通ルールに沿って行なっている実験では、
「先急ぎ運転は実りがない」という結論が出ています。
約12キロの区間、車でいうと30分ぐらいの距離を、
車間距離1.5秒ぐらいで黄色信号だったら進む先急ぎ運転と
車間距離を4秒取り、交差点の一時停止は2回、黄色だったら行かない安全運転、
10回ずつ走行して平均所要時間を比較すると、その違いはわずか1分30秒なのだそうです。

以上のことを踏まえた上で追突・衝突を起こさないためにはじき出された時間が「4秒」。
一般に「空走距離」の時にかかっている空走時間は1秒とされています。
しかし、前述したように何かの要因で変わるので、1秒余裕を見て2秒とします。
そして、ブレーキを踏んでからクルマが止まるまでの制動時間、
これは一般的に1.5秒をとれば安全だと言われているので2秒+1.5秒。
さらにバッファー0.5秒を加えて4秒をとれば、
反応が遅れたとしても、吸収できる時間だということです。

さて、次回は後編は大きな2つの交通事故パターンのうち
「出会い頭の事故」をなくす「交差点での一時停止2回」についてです。