GIRLS LOCKSで紹介した作品をアップします!
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作品2 ロクデナシさん鹿児島県 18歳 男性の作品
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■ロクデナシさんのプロフィール
人生を変えられた本:『グミ・チョコレート・パイン』大槻ケンヂ著
『東京トンガリキッズ』中森明夫著
『アイデン&ティティ』みうらじゅん著(マンガですけど・・・)
作品の内容:
虹を追いかけて不思議な体験をする「俺」。
「俺」からその話を聞いた「彼女」は、人生とは何か、アイデンティティの大切さを語る。
※ BGMは、銀杏BOYZの「漂流教室」
作者からのメッセージ:
僕はフィクションを考えるのが好きです。音楽を聴いてから物語を作っちゃったりしています。頭の中では、映像になっちゃってるんで、僕の力では上手く文章にできていませんが・・・、よかったら感想を聞かせてください。
今回文章を書いてみて、書きながらいろいろと思うことがありました。頭の中にあるものを文字や言葉にするとき、いらないものを付け足してしまったり、必要なものを削ってしまったりする。そうすると出来上がるものは、頭の中にあったものとは違うものになってしまう・・・。
そんなことを次回作へぶつけようと思います。次回の主人公はラジオDJにしようかな・・・なんて。ロクデナシの次回作もお楽しみに!(笑)
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題名 『虹を追う』
【 一 】
カズキってのは、俺が小学4年の頃に転校してきた野郎だ。
そして俺たちはいつも一緒にバカっばっかりやって、中学に入ってからもよくつるんでいた。
俺たちはたくさん話した。そして俺たちは互いによく似ていることに気付いた。
好きなテレビ番組や音楽、本も、好きな映画も似ていた。考えることも似ていた。
中学生である俺たちの口から、ダイデンティティだの、予定調和を拒否だの、資本主義がどーだ、共産党主義がどーだ、そんな言葉が出てくるのを見て、大人たちは、何を知ったかぶりをしているんだ、と言わんばかりの視線を沿せた。
俺たちはそんな大人を嫌った。安定した暮らしで満足している大人を嫌った。
告別式には、たくさんの知っている顔が並んだ。中学の奴らはもちろん、よくライブに誘ってくれる先輩、そこでよく会う顔見知りの先輩もいた。今日はいつもの破れたシャツじゃなくて、ちゃんと制服を着ている。
教員も、保護者だと思われる大人もいる。あとはカズキの親戚の方たちだろう。ぼろぼろ涙を流している人。それを堪えている人。たくさんの人、たくさんの涙。
人間の価値は自分の葬式で流れる涙の数だって、誰かが言ってたっけ。
でも、俺は泣けなかった。 いや、泣かなかったのか?自分でもよく分からないよ。
そんな俺の代わりに泣いていたのだろうか、空ももう泣きやんでいた。
カズキとよく聴いていた歌を思い出した。
―−−告別式では泣かなかったんだ。外に出たらもう雨は上がってたんだ―−−
しかし、二ヵ月後の夜も、それからの夜も、カズキと一緒に歌を歌う夢を見ることはなかった。
【 二 】
あれから4年。カズキがいなくなって、俺はすっかり変わってしまった。
高校を受験し、市内の普通科高校へ進学。そして今、高校3年で大学受験を控えている。俺の人生は間違いなく、あの頃俺たちが忌み嫌っていた『安定』に向かって真っ直ぐに進んでいた。
今の俺を見たら、カズキはきっと幻滅するだろうな。「お前の人生はもう『安定』じゃねぇか。レールの上に乗っちまってるじゃねぇか。」ってさ。
俺はそんな自分が嫌いだ。高校なんか辞めてやりたいけどさ、もう最低のループにはまってしまったよ。
何もかも嫌な愚かな大人たちのせいにしている。俺たちが嫌がっていたのは大人じゃなくて、安定を手に入れ満足しているクソ野郎どものはずなのに。
大人がみんな愚かだって訳じゃないことなんて知っているのに。もうきっと生き恥じをさらしながら生きていくしかないんだ。
あの頃のことを思い出すと、今の自分が恥ずかしくて死にたくなるんだ。
【 三 】
ある夏の日だった。カズキの告別式の日と似たような、雨上がりの天気。この匂い、好きだな。今日は土曜日。時間はお昼過ぎ。俺は自転車で下校中だった。
虹を見た。大きな虹だ。見たこともないくらいの大きな虹だ。俺は自転車にはまたがったままその虹を見上げた。
「ちょっと行けばくぐれるんじゃねぇか?」
俺はそんな独り言をつぶやき、そして自転車のペダルを力いっぱい踏む。スピードがぐんぐん上がる。路地に入った。虹を確認する。相変わらず大きい虹だ。見たこともないくらいの大きな虹だ。俺は自転車にまたがったままその虹を見上げた。
「ちょっと行けばくぐれるんじゃねぇか?」
俺はそんな独り事をつぶやき、そして自転車のペダルを力いっぱい踏む。スピードがぐんぐん上がる。路地に入った。虹を確認する。相変わらず大きい虹だ。
どうして虹をくぐろうなんて思いたったのだろうか。俺自身も分からない。ただ身体が動くままにペダルを踏む。理由を知っているのは本能だけ。これがトランス状態ってやつか。
【 四 】
もうすぐだ。もうすぐでは虹をくぐることができる。この辺りか。そろそろくぐる頃だろう。
ふと上を見る。見失った。前を見ても、後ろを見ても、虹がない。あんなに大きかった虹が、消えた。俺は辺りを見回した。やっぱりない。少し遠く探した。すぐ見つけた。
なんだ、あるじゃねえか。少し遠いけど、構うもんか。次こそくぐってやる。俺は再びペダルに力を込める。俺は不思議と虹をくぐることに躍起になっていた。恐ろしいほどに執着していた。
虹は川を挟んだ向こう側にかかっている。行ける。堤防まで来た。あとはあっちの橋を渡れば虹はすぐそこだ。
自転車は川下の方へ走る。今日はついている。追い風。しかも堤防の上は風が強い。風邪が背中を押すのを感じる。周りの民家が後方に飛んで行く。もっとだ。もっと早く。虹に追い付くんだ。
虹を見た時から、俺の頭の中にはあの頃に聞いていた歌が流れていた。
―−−あいつは虹の始まりと終わりをきっと一人で探しに行ったのさ―−−
【 五 】
俺はきっと、カズキに会えると、そう信じて、微塵も疑わず、虹をくぐることを無意識のうちに決心したのだ。トランス状態。気持ちいいや。自転車のスピードと裏腹に、俺は静かに考えていた。またそんな自分を、なんて客観的な奴だろうと思う。これもまた自己分析じゃないか。笑ってしまうよ。カズキ。俺はあの頃の癖がまだ直ってないみたいだ。
あれ?
何かに引っ張られるような感覚。前屈みになりバランスを取る。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ虹を探す。よかった、見失わずに済んだ。自転車はさっきよりも速くなった。それに身体が軽い。乗っているという感覚がない。ペダルをこいでいる気がしない。まるで空中を滑走しているようだ。速い。こんな速さ初めてだ。風を切るってこういうことなんだろうか。気持ちいい。よし、このまま行く。行ける。
虹を確認する。ちゃんとまだあそこにある。よし、橋だ。渡れば虹はすぐそこ。横風が強い。負けるかよ。もうすぐ渡り終える。突風。一瞬息ができなくなる。そして橋を渡り終えた。
虹だ。追い付いた。やっと追い付いたぞ、カズキ。このスピードのまま虹をくぐろう。行け。行ける。カズキ、俺だ。
虹をくぐるとそこは眩しい世界だった。カズキがいた。むこうを向いている。夢のようだ。
「カズキ!!」
俺はカズキの方へ駆け寄った。カズキが振り向く。クシャッとなる笑顔はあの頃のままだった。
足場が消えた。
嘘だろ?落ちる?
「カズキ!!」
俺は叫んだ。でも声が出なかった。泣きながらカズキの名前を叫んだ。涙も声も出なかった。叫び続けた。俺は泣き叫んだ。
泣きたいのに、涙が出ない。叫びたいのに声が出ない。やっとここまで来たのに・・・。悔しくて、悔しくて、口の中に広がる鉄の味。それでも俺は出ない声を振り上げた。カズキに伝えたかった。俺はずっとお前に会いたかったんだ。
声が聞こえた。
「俺たちはいつでも会えるだろう。お前の声はいつでも聞こえてる。俺だって、ずっとお前に会いたかった。でもお前は今ここに来るべきじゃない。来ちゃいけない。また今度、来るべき時が来たら、その時はまたバカやろうぜ。」
カズキがそう言ったように聞こえた。救われた気がした。
【 六 】
気が付くとそこは見知らぬ天井。何だか慌ただしいな。
病室のベットの上、俺は目を覚ました。西の窓から差し込む夕日が眩しい。でも、気持ちいい。
俺は自転車に乗ったまま堤防で倒れていたらしい。丁度、何かに引っ張られたような気がしたところで。
俺はしばらく入院することになった。入院中、いろいろなことを考えた。なんで虹をくぐろうなんて思ったのだろうか。物理的に考えて虹に厚みなんて無いのだから、真下から見上げたらそりゃ何も見えないはずだ。
そうするとカズキを見たのは幻だったのか?俺はそれだけでは認めたくなかった。あれが夢幻だったなんて思わない。思いたくない。そして俺はある決心をした。
【 七 】
退院をしてから学校に復帰した初日、俺は放課後の空き教室でクラスの女子と二人。
「退院おめでとう。もう大丈夫なの?」
「うん、お陰様で。あのさ、君に聞いて欲しいことがあるんだ。」
俺は虹を追いかけたあの日のことと彼女に話すつもりだ。
彼女は別に恋人だとかそんなんじゃない。特に仲が良いという訳でもない。でも、彼女はなんか特別なんだ。他の女の子とはどこか違った感じがするんだ。普通の人なら嘘に決まってると言うような話でも彼女なら聞いてくれる。
それだけじゃなく、何かコメントをくれる。そんな予感がするんだ。とにかく俺は、あの日のことを誰かに伝えたく、何か意見が欲しかった。
カズキ、俺はあの頃のままだよ。何かも変わっちゃいない。何か思うことがあると誰かに話さずにいられない。あの頃はお前がいて、俺の話を聞いてくれていたけど、今はもういないんだよな。
俺の話を聞いた彼女の第一声はこうだった。
「私、カズキに感謝しなくちゃ。」
俺は予想外の彼女のコメントに驚き、笑いがこぼれた。
「カズキは、君がこの話を誰かにするのを望んでいたんじゃないかしら。虹の向こう側の存在を知って欲しかったんじゃないかしら。普通の人なら夢だったんだって思うようなことを、君なら、誰か信じてくれるような人に−−−−まぁそれが私だった訳だけどね、話してくれるんじゃないって思ったんだと、私は思うわ。きっとカズキはこのことを誰かに、一人だけよりも二人に、出来るだけたくさんの人に知って欲しかったのよ。私の想像なんだけどね。」
私は君からこの話を聞いて、いろいろ考えさせられて、とても素敵な気持ちになれたわ。だからカズキに感謝したい。
もちろん、君にもね。誰かが言ってた。人は言葉によって他人の経験を自分の経験に出来る唯一の存在だって。俺は彼女と虹の経験を共有できたことになるのだろう。俺も素敵な気持ちになれたような気がした。彼女は続ける。
「それと、良かったらでいいですけど、君とカズキ君が昔考えていたこととかはなしていたことを、もっと聞かせてくれないかしら?君たちに興味持っちゃった。」
彼女はそう、どこか照れ臭いに言った。俺は自分の思想、といってもカズキに影響されまくりだが、考えてること、頭の中で渦巻くことを誰かに伝えるのが好きなので、喜んで話始めた。
【 八 】
俺は俺、お前はお前、君は君だ。それはずっと変わらない。普通は、周りの環境や他人の人に影響を受けて、人格なんてものは次第に変わっていってしまう。それは仕方ないことだ。
だけど、だからこそ覚えていよう。忘れないでいよう。今俺たちがいること。その時思い出すと恥じだと感じるかもしれない。でも今、そう今なんだ。今、最高にロックンロールで、最高にパンクな俺やお前や君がいることを。
これがあの頃の俺たちが考えついた、俺たちのアイデンティティ。
あの頃の俺たちは、日本経済や世界情勢など難しい言葉を使ったりもして語っていたくせに、上手く物事を形容することができなかった。議論の果てにはロックだとかパンクだとか、そんな抽象的な形容詞にたどり着いてしまう。でも、高校で勉強しても、ロックとかパンクについて教員は教えてくれない。ロックだとかパンクだとかは、ロックだとかパンクでしか表現できないよ。
そんなことも彼女に話した。俺は上手く伝えられたのかな。なんせお前以外に考えていることを話したことなかったからさ。カズキ、これでいいよな?
彼女はうんうんと頷くと、こう続けた。
「君は、大人になったね。」
彼女は俺の考えもしない答えを持っている。
「君は、一つの人生を体験したのよ。」
「どういうこと?」
「私はね、人生は虹を追うことだと思うの。虹って追い付くと消えちゃうでしょ?
だから次の虹を探して、見つけて、追う。その繰り返し。虹はね、夢とか目標とかの象徴だと思うの。
大きな夢を抱いている人、つまり君が言う『子供』は、大きな虹を追いかける。大きな虹はめったなことがない限り近くにはいない。とても遠くにいかないかもしれない。
でも、虹に追い付くためならどんな犠牲も惜しまない。そんな風に考える。そういう考え方ができるのは、若いから。まだ知らないこと、つまり恐れだとかそういうものが少ないから。そういう考えが出来ることは、とても素敵なことだと、私は思うわ。
そして人はいつか妥協ということを覚える。君が言ってた『大人』はこれに当たると思うの。
妥協を覚えた人は近くにある小さい虹しか追わなくなる。より安全で、より確実で、よりたやすい。安定っていうものかしら。 『こんなもんでいっか。』って思うようになる。そんなことの繰り返しで、いろんな虹を追うことの繰り返しで、人は毎日を生きていると思うの。そうやって人生を送ると思うの。
例えば、大学に合格するっていう目標があるとするわね。大学に合格したらどうなると思う?
今度は生活するために住むところかバイトを探したりするわよね。つまり、新しい目標を立てる。そしてその時にはもう以前の目標は見失って、また立ててっていうことの繰り返し。目標は叶わないことも当然あるけどね。
そして、最期。次に目標を立てる必要が無くなるとき、それは人生の最期。それは虹をくぐれたとき。だって虹を見失わずに追い付いてくぐることが出来たなら、もう次の虹を探す必要はないでしょ?
生きるために虹を追い、虹を追うために生きる。君は人生の最期をリアルで体験していろいろ考えたでしょ?
それで君は成長したのよ。」
【 九 】
何と言っていいのか分からない。
とにかく、彼女はすごいと思った。どこにこんな引き出しがあるのか。何と形容すべきか分からない。ロックやパンクでも表現できない。すごい、という言葉しか見付からない。すごい彼女は続けた。
「君は今回、虹を追うっていう経験をして、間違いなく大人に近づいたわ。これは誇っていいことよ。今の世の中にいっぱいいる、成人という意味の大人じゃない、形容詞としての大人。
でも、それが、大人であるということが偉いんじゃないのよ。かと言って子供が偉い訳じゃない。誰が偉いとか、誰が正しいとか、誰を信じるかなんていうことは、私がそして君が決めることなの。
私は君が正しいと思う。それを聞いてバカにする人もたくさんいるかもしれない。
嘘に決まってる?最初から信じようとしないしない人もきっといるわ。それでも私は君が正しいと思う。君を信じるわ。」
俺は幸せ者だ。俺を信じてくれる人が、また一人増えたのだから。
「俺は、大きな虹を追いかけたい。」
「君がそう思うなら、そうするべきよ。でも忘れないで。大きな虹を追うことが全てじゃないってこと。時には妥協することも大切だっていうこと。君が決めるということが大切だっていうこと。アイデンティティを持ち続けなくちゃ、虹だけじゃなく自分まで見失ってしまうということ。それと、君は一人じゃないってこともね。」
そう言って彼女は微笑み、一緒に帰ろうと言ってくれた。
【 十 】
明日はカズキの墓参りにでも行こうか。カズキに感謝して、彼女に伝えたことを伝えよう。
俺は少しは大人になったのかな。これはいいことなのかな。
どっちでもいいことだ。俺は生きている。俺はまだまだ生きるよ。アイデンティティを持ち続けるよ。
お前に会えるのはいつになるか分からないけど、今度そっちに行った時時には、あの頃みたいに、アイデンティティをぶつけ合おう。
さぁ、帰ろうか。
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<桜田門からの注意!>
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