みらい図鑑

Vol.61 「手まり」 香川県

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平安時代から伝わる子どもの玩具、“手まり”。
舞台は香川県です。

江戸時代、香川県が“ 讃岐”と呼ばれていた頃から、
土地の産物を使った手まりが盛んに作られていました。
しかし、戦後、その文化が途絶えかけてしまいます。

それから30年の歳月をかけて、讃岐に伝わる技法を体系づけることに成功。
讃岐のてまりは昭和52年に「讃岐かがり手まり」と名付けられ、
昭和58年には「讃岐かがり手まり保存会」が発足。
そして、昭和62年、香川県の伝統的工芸品として指定を受けました。



「讃岐かがり手まり保存会」の代表であり、伝統工芸士・荒木永子(あらき・えいこ)さんの
お話です。

「全国に手まりはたくさんあるんですけど、この讃岐かがり手まりというのは、
特徴が4つあります。芯材にもみ殻を使って、木綿糸を巻いた土台に草木染めの糸で
一個一個、丁寧に作られた温かみのある手まり、ということですね。」




昔も今も、使われる素材はすべて天然素材。
昔から伝わる“ある想い”も一緒に編み込むために、丁寧に手作りで仕上げていきます。

「おばあちゃんとかがお孫さんの健康を願って作ったり、お母さんが子どもの幸せを願ったり、
お正月やひな祭りに使われて来たんですね。
自分のため、というよりも誰かのために作り続けられてきたのが、
日本の手まりの文化だと思います。」



「機械が発達しても、手でないと作れないものが世の中にはある。」
と、荒木さんは言います。

誰かの想いがこもった“手まり”。
その美しい形と人を思いやる心は、時代が変わっても決して色褪せることはありません。

Vol.60 「雲州そろばん」 島根県

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今回のタカラモノは、「そろばん」。
玉が串ざしになっている計算器具ですね。
カチカチと玉をはじく音が懐かしく感じられる人もいるのではないでしょうか。

全国的に知られる「そろばん」の産地が島根県奥出雲町にあります。
ここで作られるものは「雲州そろばん」といって、国の伝統的工芸品に指定されています。



奥出雲町で、そろばん職人としては全国で初めて「現代の名工」となった、
内田文雄(うちだ・ふみお)さんのお話です。

「そろばん作りには187の工程があるんですね。
それを一貫して、1から187まで全て出来るのは、もう、私ひとりしかいません。
180の工程があるということは、300以上の道具が必要ですね。
それを全部、自分で作らなければならないんですね。」



「雲州そろばん」は、加工から最後の仕上げまで、機械をほとんど使わず手作業で作られるため、
最大の魅力はその質の良さにあるといいます。
早い指の動きにも玉が安定して、よく動く上にピッタリと止まる。
つまり、“計算ミスの少ないそろばん”というわけです。




そんな「雲州そろばん」、日本はもちろん、海外でも高い評価を受けています。

「東南アジアはもとより、アメリカ、イギリス、ヨーロッパでもそろばんは使われて
授業をしています。
やっぱり、もともとは日本から発信したようなものですから、
もういっぺん、日本でも復活したら嬉しいなと思っているわけですけどね。」

そろばんを作って55年。そろばん作りに関わる187の工程をすべて一人で担っている
内田さんは、現在70歳。
日本で唯一の技術を次の世代へ残そうと、工房には、その技術を学ぶ後継者も現れてきている
そうです。

雲州そろばんは、「使ってもらってナンボ」、と笑いながら語る内田さん。
世界中のいろんな場所から、玉をはじくキレの良い音が100年後にも聞こえますように。

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