92歳の落語家 三遊亭金翁さんが登場
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- 2022/01/02
落語家の三遊亭金翁さんをお迎えして


金翁「なんかおめでたいって言われると、あまり利口じゃないみたいですね(笑)」

金翁「そうですね、他にはいませんね。私より年上は桂米丸さんという方がいて、あの方は大正か昭和のはじめの生まれなので、私より2つ3つ上です。あの人は私より先輩ですが、落語家になったのは私の方が古いんですよ。私は昭和16年に噺家になっていましたからね。大東亜戦争の始まった年です。古いねえ」

金翁「ありましたけど、我々小僧っ子には関係ないですよね。あの時代は『戦争をやっているのにこんなふしだらなことを』、『優雅なことを』なんて言う、うるさい人はいたんですよ。でもね、あんまりうるさいからね、じゃあ全部封印して埋めちゃおうじゃないか、なんてね。でも考えたらね、こんなに馬鹿な話はないんですよ。埋めちゃいました、って言ったってね、全部自分の頭の中に噺家は入っているんですから。いつでも喋れるわけです。兵隊さんの慰問なんかに行くと、大変喜ぶんですよね」
小山「やっぱりみなさん笑いを求めていたんですね」

小山「今、芸歴は何年目でいらっしゃるんですか?」
金翁「何年になるんですかね」
宇賀「おいくつの時に始められたんですか?」
金翁「12歳でしたかね」
小山「ということは、80年ですね!」
宇賀「きっかけは何だったんですか?」
金翁「みんなから『何で噺家になったんですか』って聞かれるんですけどね、好きだからなったんですよ。嫌いで噺家になろうなんて奴はひとりもいないですよ。みんな落語をやりたくてしょうがなくて落語家になるんですよね。柳家金語楼氏という私の大先輩ですけどね、この方は兵役に行っていらして、兵隊であったことを漫談風にまとめた『金語楼の兵隊さん』なんていうレコードがあったんですよね。これを聞いたら面白くて面白くてね。両面6分を聞いてゲラゲラ笑って、覚えちゃったんですよ。覚えたらね、人の前でやりたくてしょうがないでしょう。まずいことにうちの父親、母親は、下町で大衆食堂をやっていたんですよ。何でもありで、夜中の11時とか12時に来て酔っ払う大人に『おじさん、俺、落語知っているんだよ』『ふうん、そういう落語かやってみなよ』。そうしてやったら、『うまいうまい、坊やうまいなあ! 大きくなったら噺家になれ』ってみんな言うんですよ。子どもにそういうくだらないこと言うもんじゃないですよ。本人はなりたいな、と思ったんですよね」

金翁「結婚する前の女房からもらった手紙ですかね。これは今でも大事にとってあるけど、人様にお見せするものじゃないですね。好きとか嫌いとか、あの頃には実にくだらないことを書いているんですね。『今日はどこそこに行ってきました』とか、『あなたのことを思って書いています』とか、もう空々しいというかね(笑)。でも、それがどんなに嬉しいことか」
小山「ご結婚前というのは、だいたいいつ頃なんですか?」
金翁「女房と結婚したのは昭和29年ですから、昭和27、8年頃ですね。(手紙は)1週間に2回くらいきたり、私が1日に2通出したり」
小山「手紙が届くのが楽しみで仕方なかったんですね」

小山「遠距離恋愛だったんですね」
金翁「遠距離ですよ、新潟にはしょっちゅう行けるわけじゃないですからね。今みたいに新幹線に乗って2時間3時間って、そんな時代じゃないですもん。夜行列車で一晩かかるんです」
小山「でも列車に投函できたんですね」
金翁「そうなの、なくなっちゃったんですけどね。終列車の後ろに郵便車が付いていて、上野の郵便局に集まってきた手紙を積み込んで、列車の中で仕分けするんですよ」
小山「今、もう1回復活してもいいくらいですね」
宇賀「そして、金翁さんには『いま手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いていただきました」
金翁「私の先代さんに思いの丈を書いてみようと思って、書いてきました」

小山「落語家の引退の時、というのはあるんですか?」
金翁「別に決まっちゃいません。おそらく喋れなくなったり体が動かなくなったら、しょうがないでしょうね。やっぱり死ぬまでできるというのはこれなんですよね。体が動かなくても、口だけ達者ならね、商売になるんですからね。いいですよ、噺家になりなさい、あなたも」
小山・宇賀「(笑)」

宇賀「今年の目標とかはあるんですか?」

小山「でも楽しそうにお話をされていて……どうやったら楽しく生きることができるんですか?」
金翁「どうやったらって言われても、私は困っちゃうなあ。楽しく生きるには楽しく考えるよりしょうがないでしょうね。考え込んじゃって『俺はダメだ、俺はダメだ』と思えば全然ダメになっちゃうでしょうし。なにくそ、っていう元気があったり、俺も元気にならなくちゃな、というのが活きがいいんじゃないですか。みんなに甘えて動かなくなっちゃったら、やっぱり人間おしまいですよ」

三遊亭金翁さん、ありがとうございました!

「金翁ロードショー」
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