このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今日は、デジタル化でビジネスモデルの改革をはかる青山商事の取り組み、「デジタル・ラボ」についてご紹介しました。
紳士服業界は、労働人口の減少やビジネスウエアのカジュアル化の流れから市場の縮小が懸念されていました。
そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの広がりや外出機会の減少などからスーツ離れが加速、とても厳しい状況に置かれています。
そこで今回は、「洋服の青山」でお馴染み、青山商事株式会社の広報部 マネジャー、髙橋直哉さんにお話を伺いました。
まずは、デジタル・ラボとはどんなシステムなのか髙橋さんに伺いました。
「ネットと連携をしておりますので、豊富な在庫数とリアルな店舗の接客の両サービスを最大限に生かした当社独自のシステムとなっています。
大型の42インチの大型のサイネージやタブレット端末を複数設置していまして、お客様はこれらの端末を通じてECサイトに加え、全国の「洋服の青山」の在庫から、お好みの商品を選ぶことができる、そういったシステムになっています。
店舗在庫をゲージ見本として、試着や採寸が可能になっていますので、実際の商品の色柄や着心地などを確認した上で、販売員のリアルな接客を受けながら購入ができます。
ネットとリアルな店舗を結び付けたようなシステムなので、全国の店舗と連携しているので、1000万点以上の商品から選ぶことができますので、選びやすく、買いやすくなっています。
また、デジラボで税込4290円以上の買い物で送料が無料となりますので購入後は手ぶらで帰ることができますし、後日お店に商品を受け取りに行く手間も不要となっています」
デジタル・ラボの導入の経緯についても髙橋さんに伺いました。
「システム導入によってお店の在庫を削減できる、そこで余剰スペースを有効活用し、売り場の再構築っていうのが大きな目的となっています。
デジラボ導入店舗では、同じ色柄のスーツをサイズ別で保有する必要がなくなっていますので、限られたスペースで多くの種類を陳列できます。
開始当初は主に都市部、売上売り場面積100坪未満の狭小店舗を中心に投入していましたが、今ですとネット連携による豊富な品揃えと利便性の高さが、反響を呼んでおりまして、現在では全国の大型店ですとか、中型店でも導入を進めています」
髙橋さんのお話の中に、当初は都市部の狭小店舗を中心に展開されていたという話がありましたが、みなさんもご存知の通り、郊外で大きな売り場を設けて、本当にたくさんの品揃えの中から選べますよ!というのが、「洋服の青山」の醍醐味であり、特長でもありました。
そんな中、シェアをさらに拡大しようと首都圏に出店しようとなった際に、広い土地がない、あっても高いということで、それまでのビジネスモデルの転換をはからざるを得なくなり、このデジタル・ラボが生まれたんだそうです。
このデジタル・ラボ、髙橋さんによると、お客さん、企業、販売員、それぞれにメリットがあるそうです。
「メリットが三つありまして、まず一つ目はお客様のメリットとしてネットネット連携による豊富な在庫から好きな商品を選べます。
二つ目が企業のメリットとして、在庫が削減できますので、そういったあいたスペースに、需要や地域特性に合わせた売り場を再構築できます。
例えば、オーダーメイドや、ビジネスカジュアル、レディースなど様々なコーナーが作れます。東京の水道橋東口店では店舗を半分にしまして、その半分をシェアオフィスとして運営をしています。
三つ目が、販売付帯業務。販売員の方のメリットですね。販売付帯業務の大幅な削減ができますので、スタッフの負担が軽減されます。あいた時間とかで教育だったり、販売に集中できますので、結果お客様のサービス向上に繋がっています」
販売付帯業務とは、例えば、仕入れ業務(店出し業務)などがそうで、デジタル・ラボだと、サイネージで購入して在庫センターなどで梱包され、そこから郵送されます。
そのため、お店の在庫が減ることがありません。通常、お店で10着売れたら10着お店に入ってきますが、
それがないので、お客さんが見やすいように、サイズをつけたり、値段をつけたりする作業、お店に並べる作業がなくなるんです。そのことで、販売負担業務が大幅に軽減できるそうです。
また、商品を郵送することで、引き取り業務もなくなるとのことでした。お客さんが、お直しなど、出来上がった服をピックアップに来る時間は夕方会社帰りとかが多いそうなんですが、当然、買い物にきているお客さんもいて、レジ並びとか、そういったところも、引き取りがなくなることで解消できるというお話をされていました。
気になるデジタル・ラボの効果ですが、髙橋さんによると、実際に200〜300着くらいスーツなどを減らすことができるそうで、
デジタル・ラボなど使って購入することから、例えば売れ筋商品がなくなってしまうってことがないので、 販売機会ロスなどの効果も出ているそうです。
実際、店舗によっては120〜130%くらいの計画で推移しているところもあるそうです。
また、削減できたスペースで、新たなコーナーなどを作ることによって、新規のお客さんの来店促進にも繋がっているそうです。
最後に、アフターコロナ、これから先、実店舗の役割はどう変わっていくのか、髙橋さんに伺いました。
「役割っていうのが大きく変わることはないんですけども、やっぱり販売員がいるからこそ安心してお買い物ができたりはしますので。
ただ、今後店舗だけの利用ではなく、オンラインショップとの相互送客っていうのをしっかり強化していく。
デジラボの検索はオンラインと同じ一連の流れで動いていますので、お客様が購入して会計まで一通りの手順を販売員と一緒にやるような形になりますので、
お客様としては、仮想体験、ネットでの買い物仮想体験ができますので、例えば次は自分でオンラインで検索をしてみようとか、新作を見てみようとかそういう購買行動につなげていければなと思っています」
来月になると衣替えも控えています。スーツを新調してビシッと気持ちに新たに!なんていうのもアリですよね!
髙橋さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2021
09.06
デジタル化でビジネスモデルの改革をはかる青山商事